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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
131/172

異世界にて10



「これは?」

「そなたが作り出した魔術具の対になる石だ。そなたが今、手に持っている魔術具はフィロス・スナイドレーのもの。彼以外には何の効果もない、ただの石。」


「そして、我の手にあるこれは。そなたのもの。」

魔術創成の神のルビーの瞳がやさしく、明るく、楽しそうに、光る。


「そなたが持っていた心配事は2つ。ひとつが、彼の命。それを守るために、そなたは、守りの魔術具を望み、叶えた。さて、もう一つが、死んだことがわからないかもしれない。という不安。…これは、この2つめの不安を取り除く。」

「え!?」

「フィロス・スナイドレーが死んだら、守りの魔術具は砕ける。砕けると同時に、我が手中にある、この対の魔術具も砕ける。フィロス・スナイドレーの死を知ることができる、魔道具だ。」


ついっと、フローラが横から二人の手の中のダイヤモンドを取り上げる。


「ピアスにしてあげるわ。わたくしから、子孫へのプレゼント。」


フローラが、私に2個のダイヤモンドを返してくれた時、ダイヤモンドは白金の金具が付いたピアスになっていた。

全く同じにしか見えない2つだけれど、どちらが守りの魔術具か触れれば、わかる。

「ありがとう、ございます…。」


2個のピアスをそっと、両手で包み込む。



「さて。生と死を隔てている、門まで、一緒に行こう。

…だが、ソフィア。

フローラが言ったとおり、門をくぐれば、元の世界に戻れるが、満身創痍で戻ることになる。先ほどの試練は、そなたの世界では治癒の余裕なく、即死していた。

この世界は、死が無い世界なので、治癒の魔術で何度も復活しているが、そなたの世界に行けば、その治癒は、無かったことになり、傷がぶり返す。

…かなりの確率で死ぬだろう。

同じ死ぬなら、そのような苦痛を2度と味わいたくない、のが人間だと、思う。しかし、それでも、万一の可能性にかけて、帰るかね?」

「はい。絶対に、死にません。」

「…そうだな。死なせてもらえないだろうな。」

「はい?」


ふふっと、魔術創成の神が笑いかけてくる。


「そなたが先ほど対峙した、フィロス・スナイドレーは偽物だ。」


頭をガン!と殴られた気が、した。


「偽物の両親を見破ったように、彼も偽物だ、と見破ると思ったのだがな。」


楽しげな、笑い声が響く。


「無理もない。テネブラエ、闇の魔術は、心を操る。…そなたの心の奥底に眠っていた、不安を引きずり出す攻撃なのだよ?先ほどの彼の言葉は、そなたの心の奥底にくすぶっていただろう、不安をそのまま、偽物が言っただけに、すぎない。」

「じゃ、本当の、フィロスは…。」


「あなたを愛しているに決まっているじゃないの。」

フローラ様が呆れたように、両手を腰に当てて言い放つ。

「向こうで、わたくしをののしりながら、魔術陣の解析に励んでいるわよ。なんとしても、あなたを取り返すために。」


「わたくしの、陰険な子孫を、よろしくね?」

フローラ様の笑顔が、はじける。

「はい!」


「では、行こうか。生と死の狭間から、元の世界に戻るために。」


歩いていけば、炎の円環が見えた。

魔術学院の門とそっくりだ。

真紅と青白の2双の龍が絡み合い、ゆっくり回っているように見える。


「ソフィア。いつか、こちらの世界に戻って、そなたと再会できる日を楽しみに待っている。その日まで、そなたに幸多からんことを。」

「ゆっくり、戻ってくるのよ?すぐ戻ってきちゃ、ダメよ?そして、戻ってきたらまたお話しましょうね。」


うなずいて、2人に深々とお辞儀をすると、覚悟を決めて門をくぐった。



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