異世界にて9
「そう…。」
フローラ様が、草原の一方向を、指さす。
「あちらにまっすぐに歩いていくと、炎の円環があるはずよ。その炎の円環をくぐりなさい。そうしたら、あなたが通ってきた魔術陣の中に出る。」
「フローラ様!」
ぱっと、顔を明るくする。
「ただし。」
フローラ様が腕組みをして、厳しい顔をする。
「魔術陣を出た瞬間、あなたは瀕死に陥る。いえ、死んでいるかも?…先ほどの戦いで受けた傷がぶり返すのよ。助かるかどうかは、わからない。」
「…。」
「ソフィア。わたくしと一緒に、行かない?」
「フローラ様?」
「さっきも言ったけれど、魔術具は確かにフィロス・スナイドレーに届けてあげる。でも、あなたはまたもや傷つくために、あの苦しさを、痛みを、感じるために、帰る必要はない。」
「…。」
「わたくしと一緒に行けば、あなたの本当のお父様とお母様が住んでいるところにも案内できるわ。」
「やっぱり、さっきのお父様とお母様は偽物。だったんですね?」
「ええ。」
フローラ様と一緒に行く、ということは、元の世界の言い方からすれば、死ぬ、ということ、なんだろう。
一緒に行かなくても、死ぬ可能性が高いみたいだけれど。
「わたくし。フィロスのいる世界に戻ります。戻ってもすぐに死んで、フローラ様にまた会うことになるかも、しれませんけれど。」
フローラ様の蒼い目が、私をじっと見つめる。
目をそらさずに、まっすぐ見返す。強い意思をこめて。
「…はあ。負けたわ。あなたには。…ソフィアは、合格。そうよね?」
フローラが後ろを振り返る。
いつから居たのだろう、そこには、コロシアムに居た魔術創成の神が立っていた。
「ああ。合格だ。」
「ソフィア・ダングレー。そなたは、我らの試練に打ち勝った。
我らの試練は、3つ。
ひとつは、魔力を適切に使いこなす能力があるかどうか。
ふたつめは、いかなる状況にあろうとも、惑わされない強い心をもっているかどうか。
みっつめは、自分のためでなく、自分以外の誰かのための想いであるかどうか。
すべての試練を、君は乗り越えた。完璧に。」
魔術創成の神が近づき、手を私にさしだす。
そこには、真紅のダイヤモンドが光っている。
私の手の中のダイヤモンドと、全く同じ?