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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
127/172

異世界にて6



「フィロス?」


なぜ、ここに?

思わず、近づこうとしたら、


「近寄るな!」


びくっと、思わず、立ちすくむ。

彼が顔を上げる。

その目には初めて会った時と同じ憎悪の炎が冷たく燃えていた。


「私のために、だと?」

「フィロス?」

「ふざけるな!お前の自己満足だろう?私を護るための魔術具だと?本心は自分の不安を解消するための、自分のため、ではないか!」


フィロスが指を私に突き付けてくる。


「もう、やめてもらおうか。私に恩着せがましく、あれこれ押し付けてくるのは。」

「何も、押し付けたつもりは…。」


「ふん。私の正直な気持ちを教えてやる。お前はリディアナの代用だ。」

ずきっと、心が痛む。

「私が愛しているのは今でも、リディアナ、ただ一人。リディアナを奪っていった、あの憎いアクシアスそっくりのお前を誰が愛するものか。」


心の底に押し込めていた、不安。

お母様の代わり。

それでもいいと、思っていたけれど。直接、言われると、堪える。


「なぜ、今、そんなことを…。」

「疲れたからだ。お前を愛しているように見せかけるのに。」

「!」

「一人ぼっちが辛かった。だれかに居てもらいたかった。そこに、お前がのこのこと現れた。だから、代用品でもいいと、思った。でも、しょせん、代用品は代用品。埋められなかったのだよ、この孤独を。お前では。」


声が、出ない。


「もう、疲れたんだ。婚約を解消しよう。もうほっておいてくれ。私を愛しているというのなら。」


フィロスが唇をきつく結んで睨む。


あなたのそばに、いたかった。

…でも、それが、あなたにとって辛いことだというのなら。


「…わかりました。フィロス。あなたの望み通りに。

でも、ひとつだけ。私が今、望んでいる、あなたを守るための魔術具は受け取って!

わたくしの自己満足かもしれない。

でも、あなたさえ、生きていてくれるなら、離れていても、わたくしは幸せ、だから…。」


 そう。

私はずっとフィロスに幸せになってほしかったから。

フィロスに笑っていてほしかったから。

生きていてほしかったから。

それだけが、私の、望みだったから。

だから、それが叶うなら、婚約解消だって、そばにいられなくなったって、構わない。




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