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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
125/172

異世界にて4



「素晴らしい魔力だね。そなたは。…さて、テラ。」


 赤銅色の鎧の騎士。自分の体より大きなハンマーを持っている。

それを、大地にドン!とたたきつけた瞬間、大地に全身をめりこませられた。


「うっ!」


 立てない。這いつくばった状態。重力が重い。


「ぐっ!」


上からハンマーが振り落とされる感触。

口から真っ赤な血が噴き出す。

…内臓、破裂?…肋骨も、折れた?

息ができない。…肺にささった?


「…終わりかな?」

低い声が、どこかで響く。


「終わりじゃない!」


あきらめない、絶対に。

ごふっと、血がまた噴き出す。それに構わず、かすれた声で唱える。

「|最高の、完全なる癒しを《ペルフェクティオ・サーナーティウス》!」

全身が真っ白の光に包まれる。


爆発せよ(エールプティス)!!」

膝をついたまま、レイピアに魔力を流し、炎のボールを赤銅色の騎士に向けて放つ。

大音響をあげて、騎士が爆発した。





「…なんとまあ。大地の怒り(テラ・イーラ)を食らった以上、死んだと思ったのだが。…治癒の最高魔術、ペルフェクティオ・サーナーティウスを使えるとはね。最近は、使えるほどの魔力持ちが減ったと聞いていたのだが。…気に入った。そなたの魔力を回復してやろう。」


 ふいに、私の身体に魔力が満ちる。

枯渇しかけたら、例の魔力回復のお菓子を食べなくてはと思っていたから、助かった。





「では、トニトリス。」


 オレンジ色の鎧の騎士だ。レイピアを正面に掲げ持っている。

無数の雷が私に向かって天上から降り注ぐ。


大地の柱(テラ・コルムネ)!」


 とっさに、私の身長より高い無数の土の柱をあたりに乱立させる。雷はそれらの柱に逸らされて落ちていく。でも、幾つかの雷撃は避けきれなかった。

唇から血が伝う。

それに構わず、


「わが剣よ、放出せよ!すべてを流し去る、大河の激流グランディス・フルーメン!!」


レイピアから騎士に向けて、一気に激流を放出し騎士を押し流す。

水が消えたとき、騎士の姿も無かった。

全身しびれが残っているし、火傷もあるけど、これくらいなら、問題ない。

口元の血を、ぐいっと手の甲で拭った。




「ふん。ルクス。」


 まばゆく輝く黄金の鎧の騎士。その手には、弓。

私を見ることも無く、天に向けて、騎士は矢を射る。

とたんに、何十本となく、天から金の矢が降り注ぎ、私の身体に何本も矢が貫通する。

耐え切れず、膝をつけば、その視界の外にまた騎士が弓を天に向けて矢を放つのが見えた。


「盾を、上に上げないと。」


だけど、その盾を持っている左腕にも矢が刺さっていて、すでに盾が消失している。

ドスッ!ドスッ!と、自分の身体に矢が食い込んでくるのを感じた。


「…痛いだろう?もう、抵抗はやめよう?死んだ方が楽だよ?」

耳元で、低く、ささやかれる。


声が、出ない。動けない。

私、死ぬのかな。

くやしい。もう少し、もう少し、だったのに。

ああ、でも、もう痛すぎる。もう、立ち上がれない。

意識が遠のいていく。


その時、私の頭の中に、フィロスの声が響き渡った。


「頼む。帰ってきてくれ、頼む…。」


その声は。

魂を引きちぎられそうな苦痛に満ちていて。

私の目から赤い涙がつーっと伝う。


「わた、くし、は、…かなら、ず、…帰るっ!」


消滅せよ(エヴァネスコ)、我が身に刺さりしすべての矢!!…そして、|最高の、完全なる癒しを《ペルフェクティオ・サーナーティウス》!」




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