4年生の冬休み
いつ、開戦するかわからないまま、冬休みに入った。
フィロスには「この冬休みは、ほとんど屋敷に戻れない、1人にしてすまない。」と謝られたけれど、しかたない。
隣国プケバロスとの国境付近には、我が国の軍隊の一部がすでに常駐している。
魔術師団はまだ動いていないけれど、いつでも動ける体制になっていると聞く。
連日、フローラ様の書斎にこもって、フローラ様のメモを解析していった。
もう少しで終わる。
そうそう、部屋の壁紙はすべて新しいものに変わっていて、グレイスも色のついたドレスを着ているので、室内が華やかだ。
冬休み、屋敷に戻ったら、グレイスのドレスが私の普段使いの居間に届けられていたため、自分でフローラ様の居室に運び込んだ。
「グレイス。」
「お呼びでございまするか。おや、箱がたくさん。」
「これら、全部、グレイスのドレスや、小物、なの。受け取っていただけるかしら?」
「こんなに、たくさん?」
「これでも少ないくらいよ?」
グレイスの顔がくしゃっと、ゆがむ。
「わたくしめに、そのような、お気遣いは…。」
「わたくしがこれからここで過ごすようになったら、グレイスのお世話になるのだもの。当然だと思うわ?」
「ありがとう、存じまする。」
ほわっと微笑んで、グレイスが箱をすべて自分の部屋に持っていき、それから、毎日、違う洋服を着てくれるようになった。
どれも思っていた以上に似合うので、そのうち、新しいドレスをまた作ろうと思っている。
建国祭の日も、フィロスは戻ってこなかったけれど、私宛にたくさんのプレゼントが届いた。ドレスとそれに合わせたアクセサリー、靴やバッグ。
フィロスがいなければ嬉しさは半減だけれど、戻ってきたら、着た姿を見てもらおう。
マーシアと一緒にクローゼットに仕舞いながら、そんなことを考えた。
フィデリウス、マーシアには、私から建国祭のプレゼントを用意した。
フィデリウスには、カフス。マーシアには、ブローチ。
私のお給料から出したので、それほど高価なものではないけれど、2人にはとてもお世話になっているので何かお礼がしたかった。
2人ともびっくりして、そして、喜んでくれた。
グレイスには、花束を。
部屋に縛られ自然に触れることができない彼女のために、両手で抱えきれないほどの花束を届けた。自分の部屋に飾ってほしい、と。
初めて見る花々を、彼女はとても美しい、と喜んでくれた。
そして、今年も、最後の日を迎える。
「さて…。フローラ様の魔術陣を使う準備ができたわ。」
きゅっと両手を握る。
その手の中には、半年かけてようやく私の魔力で飽和した10カラットの透明なダイヤモンドが、1つ。