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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
118/172

レシピを教えて



 1週間、様子を見に放課後、薬学教授室に通ったけれど、フィロスには全く副反応が起きなかった。


魔力だけを純粋に回復し副反応が起きない薬は魔術師たちが、当然、フィロスも長年、研究してきただけに、フィロスから、すごい勢いでレシピを教えてほしいと、ねだられる。


「教えてもいいんだけれど…。」

「なんだ?」

「公表、したくないの。」

「もちろん、公表はしない。特に今の時期は、な。」


それなら、と、レシピのメモを見せる。

読んでいたフィロスが額に手を当てて、大きなため息をつく。


「これは…。量産できぬな…。」

同感だ。

「ええ。材料費がとんでもなく高額だし、膨大な魔力が必要だから、作れる人は本当に少ない、と思うわ。」

「材料費はどうでもいいが、魔力がな。」


うっ。さすが、4大公爵。

全部買ったら、ウン百万ドールするだろう材料費をどうでもいいとは。

一瞬、意識を別のものにすりかえようとした私に、フィロスから衝撃発言が飛び出す。


「…時間短縮をかけて1時間、か。君の魔力は、たぶん、この国でも一二を争う量だろう。おそらく、私をも凌駕している。」

「えー、そんなことは?」

「ある。実際に、これを作れるとしたら、君以外、3人がいいところ、だろう。」

「3人?」

「私と、学院長。魔術庁長官。」

「うっ…。」

「とりあえず、このレシピは、封印だ。…が、改善の余地もありそうだ。…落ち着いたら、改善させてもらえるか?」

「改善、できるなら、ぜひ…。」


フィロスがうれしそうに笑う。そして、今は時間が無い、と残念そうだ。


「あの、フィロス?」

「このお菓子、」

そこで、ごくっと、唾を飲み込む。

「戦争が始まったら、持っていく?」

フィロスが、目を見開いて、一瞬、固まる。

「戦争に、私が行く、と?」

「リズに聞いたわ。開戦したら、出るみたい。って。」

「君の周りは、余計なやつが多すぎる。」

フィロスが舌打ちする。

「フィロス!」

「…わかった。心配しそうだから、黙って行くつもりだったが、やめだ。そう。開戦すれば、私も出る。軍人として、ではなく、攪乱のための、単独行動に移る。」


やっぱり。

胸がぎゅっとしめつけられるのを感じる。


「…大丈夫だ。君が待っているのだから、必ず、帰る。」

「約束してくれる?」

「ああ。誓おう。」


フィロスが、私の手を取り、キスする。


それでも。

その約束が、100%でないことを、私は、知っている。


それでも。

フィロスに余計な心配をかけないように。私は、笑顔を向ける。


「じゃ、このお菓子、今から作って、持っていけるように、準備しますね?」

「ありがとう。でも、君に負担がかからない程度で、頼む。」

「はい。」



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