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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
114/172

薬膳菓子のレシピ1



「ねえ、ソフィ。顔色が悪いわよ?」

教室でエリザベスに声をかけられた。

「あ、寝不足かしら?」


早朝から戦闘魔術の特訓を受けている私は、確かに睡眠時間が減っている。

深夜まで薬学魔術で必要な薬を作る傍ら、フローラ様の魔術陣解析もしているので睡眠時間が少なくなっている。


「最近、日曜日もわたくし達と街に出ていないでしょう?どうしたの?」

「ああ、ごめんなさい。ちょっと、いろいろ調べものをしていて。」

「調べもの?お手伝いできることなら、協力しますわよ。」

「ありがとう。でも、わたくし自身の問題だから。」

「そうですの?…でも、気分転換は必要ですわ?明日の日曜日は久しぶりに、ジェニも誘って街に行きません?ほら、そろそろ、アムールの日ですもの。今年はソフィもお菓子を作られるでしょう?」


 …すっかり、忘れていた。もう、アムールの日が近いんだ。


「忘れていたわ。誘ってくださって、ありがとう。リズ。ええ、行くわ。」

「良かった。」

エリザベスが微笑む。

「リズは今年、何を作るの?」

「どうしましょう。ライアムが最近は食事もゆっくり取れていないようなので、簡単につまめる栄養満点のお菓子にしたいのだけど。何かレシピ、ご存じない?」


昨年買った薬膳菓子のレシピ本を思い出す。


「あら、そんなレシピ本があるの?まだ書店で、売ってるかしら?」

「売っていなかったら、お貸しするわよ、リズ。」

「ありがとう、ソフィ。」


その夜、久しぶりに薬膳菓子のレシピ本を開き、今年は何を作ろうか、悩んでいた。


「外に出ていたら食事をとらなさそうだから、リズと同じ栄養満点のお菓子でもいいけれど…。」


 レシピ本の「栄養補完バー」と書いてあるページを見ながら、ううん。と唸る。

レシピ本は簡単に作れるものだと、完成したお菓子のイラストが描かれている。

「栄養補完バー」のイラストは見た目が可愛くない。真っ黒でごつごつした、長さ10センチくらいのバーだ。形を変えたとしても、真っ黒でごつごつなんて、かわいくない。プレゼントというよりも明らかに実用品だ。

これは、戦場に行かなければならなくなったら作って渡そうと、決める。

 ちなみに、昨年作った「心を穏やかにするお菓子」はイラストが無かった。作ってみてのお楽しみ、だ。


 レシピ本をばらばらとめくってみたけれど、なんとなく、今の私の気分に合うお菓子が無い。


「薬膳にこだわらなくても、良いかも。」


レシピ本をぱたんと閉じる。


今、フィロスに渡したいのは、私の想い。

大好きの気持ちと、必ず生きて帰ってきてほしい、私と一緒に生きていってほしい、そして、何より、幸せになってほしい、という気持ち。


「そんなの、全部、籠めたら、重いけど。」

ふっと、自嘲する。


フィロスと過ごした日々を思い出す。

私のために整えてくれた部屋や衣服、美味しい食事。綺麗なものをたくさん。

紡がれた言葉の端ににじむ、やさしさ。過保護なほどの心配。

フィロスには、両手からあふれるほどのたくさんの幸せをもらってばかりね…。


その時、頭の中に、何かがひらめいた。

とっさに、手元のメモに思いついたレシピを書いていく。


「大好きな人の幸せを祈るレシピ」

初めて、私が創造した魔術菓子。



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