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魔術師ソフィアの青春  作者: 華月 理風
魔術学院4年生
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戦闘魔術の自主練習4



 その日の授業で、私達は2つの武器を出すことができなかった。

魔力の流れを分けるのが、うまくいかないのだ。

魔力の流れは見えるのだが、どうにも、分かれてくれない。コツが、つかめない。


「ちくしょう。流れが、分かれてくれない。」

汗をぬぐいながら、リチャードがつぶやく。

「わたくしも。流れは見えるのに、どこから流れを分けるのかがわからないわ。」

それを聞いていたアンドリューが、不安そうに私達を見る。

「流れが、見える?」

「見えるぞ、はっきり、くっきり。な?ソフィア?」

「ええ、見えるわ。」

アンドリューの顔色が悪くなっていく。

「アンドリュー、お前だって見えるだろ?1年の時に、魔力の流れを見たから、剣を出せるようになったんだし?」

アンドリューが力なく首を振る。

「流れを感じることはできる。だけど、見えない。見えるなんて、聞いたことが無い。」

リチャードと私はお互いに顔を見合わせ、声が重なる。

「見えるわよね?」「見えるよな?」

「君たちが、おかしいんだ!」

アンドリューが私達に指を突きつけ、不機嫌そうに、ドスドスと足音も荒く去っていく。

「君たち、魔力が高すぎるんだよ。他の生徒と一緒にしたら他の生徒がかわいそうだ。」

グレー教授が苦笑いしている。

「グレー教授も、見えますよね?」

「ああ、見える。…だが、魔力が見えるのは相当、魔力が高くないと、見えないぞ。流れをなんとなく感知できる。というのが普通だ。」


だからこそ、武器を2つ出すのは保持ができるできない以前に、感知レベルでは難しいのだと。


「まあ、君たちは、くっきり流れが見えているようだから、2つに分ける訓練をすれば、すぐ2つの武器を持てるだろう。…私が見たところ、1週間くらいかな?」



 2つの武器を手にできたのはリチャードが早かった。グレー教授にやり方を教わってから、わずかに5日。


「1日中、魔力の流れを分けようとしていたからな!」

「それで、授業中も上の空、だったのね?」

「授業なんか、聞かなくてもわかっているから、いいんだよ!」


両手に長剣を握ったリチャードはおそろしく機嫌が良い。

普通の金属の剣で両刀使いの訓練を幼いころから積んできている彼には、魔術剣を2つ持たせたら、向かうところ、敵なし、だろう。


「おお、早いな、もうできたのか。」

「グレー教授。」


グレー教授が片手を上げて近づいてくる。

実は、私達が早朝に特訓をしていることを聞いて、自分も混ぜてほしいと言いだしたのだ。

学院にいると、魔術師団の訓練に毎日参加できないため、腕が鈍るのが怖いそうだ。

特に、いつ戦争が始まってもおかしくない、今は。

だからといって、一般の生徒が相手では訓練にならない。しかし、リチャードが相手ならなんとか互角に戦える。今のところ、勝率的にはグレー教授が6割程度か。

でも、両手に長剣を持ったリチャードが相手だとその勝率は逆転しそうだ。


私達はリチャード対グレー教授と私の2手に分かれて、模擬戦をすることにした。

当然、私の作ったぬいぐるみも一緒だ。

私は相変わらず、ぬいぐるみを守る。

グレー教授は攻撃に特化する。


両手に長剣を持ったリチャードは強かった。2人を相手にしているのに、全くのハンデを感じさせない。何度、ぬいぐるみの首を飛ばされただろう。


「モントレー、君はすごいな。」

息を切らして、グレー教授が感嘆の声を上げる。

「君が魔術師団に入ったら、副団長の地位は君のものだな。」

「さすがにそこまで、うぬぼれていませんよ。俺は。」

「だが、私より君の方が強くなる。今日は君に何度も負けた。」

「強さ、で言えば、卒業したときは、魔術師団でも最強をめざしますよ。でも、団長や副団長は強さだけじゃあ、務まらないでしょ?」

グレー教授が、ふっと笑う。

「やはり、君が私の上官か同等の地位に来るのは、早そうだ。」



 私もレイピアと盾の両方を持つことができたのは、リチャードに遅れること、3日。グレー教授が見立てた1週間程度、という予想通りだった。


盾を使えるようになってきたので、ぬいぐるみを傷つけられる回数が、ぐっと減っていく。

ただし、グレー教授とのフォーメーションができてきたから、というのが大きく、独りだったらまだまだダメだろう。

それでも、自分が確実に戦えるようになっていることを、実感する。

足手まといにだけは、絶対になっては、ならないのだ。



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