戦闘魔術の自主練習3
「2つ武器を出したい?…君たち、いきなり、難しいこと言い出したなあ。」
魔力の武器を2つ同時に使いたいと相談されたグレー教授が呆れたように、私達を見る。
「でも、教授。普通の兵士は盾と剣を2つ持ってるよな?俺ら魔術師もそれができたほうが、有利じゃねえ?」
「言葉が崩れてるぞ、モントレー。…まあ、作れるか作れないか、で言えば、作れる。」
「本当か!」
「作れるが、可能とは言ってないぞ?」
「?」
「まず、魔力が高いことが絶対条件だ。モントレーとダングレーはその点、合格、か?…だが、他の生徒は無理だろうな…。」
「俺らが可能なら、教えてくれ、じゃなかった、教えてください。教授。」
グレー教授は渋い顔をして顎を撫でていたが、
「500年平和だったけれど、最近、きな臭くなってきてるだろう?俺は卒業したら、魔術師団を希望しているんだ。いざってときに、備えたいんだ。」
と、モントレーがきっぱり言うと、
「そうか。同僚になってくれるのか。うーん。だったら、強い奴が来てくれる方が助かるな…。」
思案顔していたが、
「よし。教えてやる。ただし、条件が一つ。授業や試験では使うな。他の生徒が不利を被る。」
私達はうなずく。
「わかった。じゃ、こっちに来い。…どうせ、君たち2人は他の生徒と打ち合ったって、練習になりやしないんだから。」
闘技場の隅に移動しようとした私達を見て、アンドリュー・ドメスレーが不機嫌そうに、大きな声を張り上げる。
「グレー教授!その2人だけに、えこひいきされるのは納得できません!」
「ドメスレー?えこひいきをしているつもりはないが。」
「えこひいきだ!2人だけに特別に何か教えるんでしょう?」
「…教わりたかったら、ドメスレーも来れば良い。だけど、ドメスレーには教えても絶対に使えぬぞ?時間の無駄だと思ったから、誘わないだけだ。」
「くっ!使えないと見損なってもらっては困る!ダングレーに使えるなら、私にも使えるっ!!」
「どこから、その自信が出てくるのかね。ダングレーにも勝ったことが無いと思うが。…まあ、いい。他のみんなも教わりたい者がいるなら、来るといい。」
結局、2つの武器を出すための授業は、リチャード、アンドリュー、私、の3人だけが受けることになった。
他の生徒は、「魔力が高いことが絶対条件」と聞いていたので、早々に諦めたようだ。
「2つの武器の出し方だが、1つ武器を出したあとで、もう1つ武器を出せばよい。」
「は?」
グレー教授が、私達から少し離れる。
「グラディウス!」
長剣が右手に握られている。そこで、グレー教授は目をつぶり意識の集中に入る。が、あまり時間をおかず、かっと目を見開き、
「スクゥトゥム!」
その瞬間、左手に盾が出現した。
「魔力の流れを見る訓練を1年生の時にしたな?その魔力の流れを2つに分けるんだ。分ける場所は、身体の中央ならどこでもいい。右手に武器を出したら、その武器を保持する魔力の流れを残しつつ、左手に武器を出すための魔力の流れを作る。最初はそれをやると、左手に魔力の流れが行ってしまって、右手の武器が消えてしまう。それを、いかに消さずに魔力の流れを保持するか、だな、それが難しい。
両方で何度も武器を出していけば、魔力の流れも自然と2つに分かれて、一種、固定されるから楽になってくる。
あとは、当然、保持する魔力はけっこう大きいから、魔力が少ない奴は最初から不可能だ。…ドメスレー。君はおそらく、2つの武器を保持するだけの魔力は、無い。」
ドメスレーが、ぐっと詰まる。
「やってみなければ、わからないじゃないか!」
「もちろん、やってみたまえ。」