聖地に来たぜ!さあさあ、読めや読めやの市場調査!マーケティング部隊発進!
キタキタきたー!
齢、若干17年。とうとう聖地に降りたった!
『花蓮、夢美!歯を食いしばれよ!今日という日に感謝せよっ!いざゆかん!』
俺、鹿島秀仁は今猛烈に興奮している。
『ヒデー、ちょっと気合い入れすぎじゃない?』
『夢美!お前、ちょっと根性足りないんじゃないのかあっ!』
ビシッと人差し指を夢美の前に突き出す、
『ヒデ。恥ずかしいからやめて。』
『花蓮、お前はいつもそうやってクールぶりおって!ほらっ!お前の好きなアニメがあそこにもここにもっ!』
これでもかとはしゃぐ。
『まあ、でもさっ!中古の同人誌とかラノベとかさ、いっぱいシナリオの参考になりそーなの、掘り出せるといいなっ!』
ショートヘアをゆらし、夢美は
某アニメのフィギュアのポーズを取る。
それもそのはず、そのアニメのコスプレで夢美は
聖地、秋葉原に降りたったのだから。
人だかりができる。
『こ、これが人気レイヤーの気持ちでござるかあっ!』
即席撮影会になった。
『ヒデ、あれやめさせないと、大変。』
『ああ、花蓮は心配性だなっ!今だって。あれっ?』
『こらあっ、ここで撮影会をやるなあっ!』
夢美は近くの交番まで連れていかれることになった。
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『はい、すみませんでした。以後気をつけます。』
夢美はこってり絞られて、服を着替えさせられた。
ここで聖地巡礼を終わらせるわけにはいかなかったので、夢美は大人しくしていた。
『だから言ったじゃない。』
『わ、悪かったよ。』
実は夢美を焚きつけたのは俺だった。
なので、俺もこってり絞られ、実家にもその場に電話した。
うちの親にもこってり電話口で絞られた。
帰るのが怖い。
『とりあえずさっ!お店回ろうよっ!ラジオ会館でフィギュア買おうよー!!』
夢美ははしゃぐ。
『何言ってるの、市場調査でしょ?さあ、とりあえずラジオ会館は最終日。』
花蓮が夢美をずるずる引きずっていく。
まあ、いろんな同人誌、ラノベに触れて何が売れてるかは知る必要があるな。
その為に来たのだ。
♦︎
お昼になった。
『いっぱい買ったねー。』
夢美はコーラをチューっと飲む。
『これを消化するだけでも明日1日で足りるかしら。』
当初、ラノベと同人誌を明日1日で消化する予定だった。
『たぶん難しいというか、東京だぜっ!ちょっと観光もしたい。』
『でも・・・。』
『まあ、今から帰って夕飯までに消化しようよっ!余るだろうから、午前中はこもってさ、午後は外出ようよ!私も観光もしたい。けど、シナリオもしっかり読みたい。』
『そうね。じゃあメリハリを効かせるということで。』
かくして、この後は近くの喫茶店でガッツリ活動にいそしむことになった。
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『ふうー、疲れたあ。』
『ああかなり読んだな。』
花蓮は同人誌を30冊近く消化している。
夢美はラノベを5冊。
『いやあ、読むだけでも疲れるんだなあ。』
ファミレスでなく、喫茶店にしたのは集中する為だ。それも静かなところを選んだ。
『まあ、なんとなく市場は読めたなっ!さてさて、夕飯、夕飯♪』
俺はスマホアプリで名物を調べる。
『浅草が近いみたいね。もんじゃとかどうかしら?』
『もんじゃいいねえ。そうしよっ!』
満場一致である。
ところでもんじゃ焼きってなんなんだろう?
3人ともよくわからないまま、もんじゃ焼き屋に入る。
『いらっしゃい!』
『あわわわ!』
夢美が奇声をあげる。
『さ、そ、3人ですっ!』
俺も緊張してる。
席に促された。
『これ、どれがいいのかしら。』
花蓮は冷静だ。
夢美と俺はすっかり未知のもんじゃ焼き屋の空気にやられている。
『何になさいますか?』
店員が話しかけてくる。
『すみません、私達もんじゃはじめてで・・・。』
『そしたらこれがおすすめだねえ。焼き方は教えたげるよ。』
優しいご婦人で良かった。
東京はもっとこう、荒んだ街だと思ってたぜ。
もんじゃ焼きが運ばれてくる。
ご婦人が焼いてくれる。
『さあ、そろそろだよ。ヘラで食べたい分取って食べんのよ。』
なんだこの見たことのない形状はっ!
しかしながら夢美と花蓮はすでに一口目だとっ!
『『美味しいー!』』
2人は声を揃える。
俺も恐る恐る食す。
『う、美味い!』
3人であっという間に平らげた。
『ぷはー食ったなあ!』
時間は20時。良い時間だ。
『さて、そろそろ宿に戻るかねえ。』
『そうだね。ラノベ読みたいし。』
宿は上野に取った。東京の電車はわかりづらい。
なんとか調べて、銀座線という地下鉄が1番だと判明した。
それぞれ部屋に入る。
買った、ラノベを並べる。
『異世界、悪役令嬢、あやかし。あとはVRもの。この辺は売れてるか。キャラメイクが大事そうだなと。』
適当に一冊取る。
寝る間も惜しむ。あんな悔しい思いはもうできないから。
俺はとにかく読み続けた。
『借りを必ず返すぜっ!』
夜はふけていった。