4話:オークと実力
俺がギルドに戻ると、そのままD級依頼であるオークの討伐を受けることになった。
俺たちはG級だが、アレンたちはC級であるし、弱すぎる討伐依頼を受けると実力や連携が見れないという意見からだ。
狩場に向かう道中アレンが俺に声をかけてきた。
「なぁ、ネオってさ、冒険者になる前は何してたんだ?」
「そうだぞ、自称凄腕の槍使いさんよ」
アレンとボブは俺のことが気になるようだ。冒険者になる前は奴隷で色々あったし、その後もティリスのところで訓練をしていたのが本当だが、それは俺の話であってネオの話ではない、そしてネオの前歴は考えてある。
「俺はさ、アルゲール伯爵家で槍の教官をしてたんだよ」
「嘘はつくなよ」
「そうだよ」
「嘘は犯罪の始まり」
みんなが疑いの目で見てくる。だがこれはティリスが考えた前歴で、アルゲール伯爵家の当主であるエリザベスにも協力をしてもらっているため、もしアルゲール伯爵家に聞かれても大丈夫だ。
「ほんとだよ、もし気になるなら伯爵家に聞いてみろよ」
「じゃあ凄腕なのも本当なのかもな……じゃあなんで伯爵家を追放されて、今は冒険者をしてるんだ?」
アレンが俺に聞いてくる。それも考えてある……だが言いたくない……
「どうしたんだよ? もしかして言いたくないのか?」
ボブも気になるようだ、この設定は言いたくないが言うしかない
「実はアルゲール伯爵家の現当主のエリザベスに手を出そうとして追い出されたんだよ」
俺が言うと周りはゴミを見る目で見てきた。
「予想以上の変態だな」「最悪です」「さいてー」「私はこんなやつに狙われてるの?」
「まあまあ、みんな落ち着いてくれ。だが、ここではそんなことはやらないでくれよ」
みんなは俺を責めてくるが、アレンだけは何故か優しかった。
「もちろんだ、俺は反省しているよ」
「ところで、アルゲール伯爵家にいたなら聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「あ、そういえば」「確かに気になるよね」
アレンが俺に聞きたいことがあるそうだ、他のみんなも気になるらしい。何のことだろうか、
まあ、エリザベスと話す機会もたくさんあったため、ある程度ならば答えられるだろう。
「俺の答えられる範囲なら大丈夫だよ」
「じゃあ、エリザベス伯爵にお兄ちゃんとかはいた?」
うーん、ベスは確かにお兄ちゃんがいたと言っていた気がする。でもあまりいい思い出ではなさそうに言っていた。
「確か『私より優秀な兄がいた』とか言ってた気がするぞ、でも何故か伯爵家ではいなかったことにされてるらしいな」
俺が質問に答えると、アレンたちは顔を見合わせて頷いた。
「ありがとう、少しだけ疑問が解けたよ」
「ならいいけど、なんかあったのか?」
「いや何もないよ」
アレンはそう言って惚けた。
(怪しい、ベスに兄がいるか聞くのもそうだが、俺だけ経歴を聞かれて、なぜかアンリの話は聞いてない、まるで元から知っているようだ。ギルドの時もそうだったがこいつらには何かあるな……もしもの場合は……)
俺は少しだけ警戒を高めた。
――――
そのまま俺たちはお互いに自己紹介や世間話をしているとオークの生息地の森の前に着いた。
「とりあえず、まずは俺たちの戦いを見ていてくれ」
アレンがそう言った。
(ちょうどいいな、こいつの実力を見るチャンスだ)
「わかったわ」
「おっけー」
俺とアンリが返事を返した
「じゃあ、キャロ、オークを何体か連れてきてくれるか?」
「了解」
キャロはそのまま森の中に入っていった。
10分ほどでキャロは戻ってきて、オークを3体ほど連れてきた。オークとは豚を擬人化させたような見た目をしていて、身長は2mほどのD級モンスターだ。その肉は豚肉に味が似ており、持ち帰れば売ることができる。
「俺たちはオークの相手をするが、ネオはアンリのことを守っていてくれ」
「おっけ」
アレンたち四人はそう言ってオークに向かい出す。前衛にはアレンとボブが出て、後ろからメリッサとキャロが魔法で支援する陣形だ。
(お手並み拝見だな……)
俺は戦闘を観察することにした。
戦闘が始まると終始アレンたちのペースであった。いやむしろ勝負にすらなっていないだろう。
オークたちの攻撃はアレンとボブに簡単にいなされて、その隙に魔法をキャロとメリッサが使うと言った単純な作業だったが、そこには確かな連携があった。
しかも、みな無詠唱で魔法を使っていて、魔力浸透も出来ているため、かなりの魔力操作の練度だろう。魔力操作を軽視する古典的な魔法師タイプではなく、冒険者タイプと言ったところだ。
(それにしても、おかしい、15歳でここまでの魔力操作と戦闘力を手に出来るものか? まるで小さい時から誰かに教えられて訓練をしているようだ……しかも、どこか余裕がある、だいぶ戦闘慣れしてるな……やはり何かあるな)
俺は少し違和感を覚えた。明らかに15歳にしては強すぎる、C級と言っていたがこれならB級でもおかしくないほどだ、何より戦闘に慣れすぎている。まるでゲームで敵を倒すかのような作業感があったのだ。
俺がアレン達の戦闘を観察して考えていると、アレンたちはあっさりオークを倒したようだった。
「お疲れ様、凄かったよ! C級には見えないレベルだな」
「ありがとう、次はネオの実力を見せてくれ」
「了解、だけどアンリちゃんはいいのか?」
「アンリはまだ戦闘が出来ないから、今日は見学しておいてくれ」
アレンはアンリが戦闘が出来ないと決めつけるように言った。とりあえず、俺は実力を少し見せることにした。
「じゃあキャロ、また頼むな」
「ん」
アレンが頼み、キャロがオークを一体連れてきた。
「よし、じゃあ俺の実力を見せてあげるか」
俺はオークと対峙する。
オークが殴りかかってきた、それを俺は避けて、槍で身体を突く。しかしまだ全然オークは倒れなかったので、オークは反撃してくる。それを避けて攻撃する。その戦いを続けていく。
「凄い」
「おお、言うだけあるな」
ネオの戦いを見て、アンリは、魔法を使わないのにモンスターと戦える強さを褒め、アレンは少し、ネオのことを認めたようだ。
「でも、なんか結構時間かかってないか?」
「攻撃力がないよう見えますね」
しかし、まだ戦闘が終わらないネオの戦いを見て、ボブとメリッサが気づいた。
「確かに、でも言われてみれば、槍の技術はなかなかだけど、そこまで強いわけでもないな、なんていうか……
アレンは確かにと頷いた。
「「「微妙だな(ですね)」」」
アレンたちがネオの戦いを批評しているとオークはようやく倒れた。
「おい、見てたか俺の華麗な槍捌きを」
アレンたちの批評が聴き聞こえていたが、それに気づかないふりをして、槍の腕前を自慢する。
「うん、確かに悪くはない、むしろ上手いんだろうけど」
「やっぱ、モンスター相手だと攻撃力が足りない感じだな……」
俺が自信満々に言うと、アレンとボブが微妙だという。
(うん、作戦通りだ……だから、悲しくなんてないからな)
微妙だと言われて、少しだけ傷ついた。
アレン
魔力量:C +
身体能力:D +
魔力操作:B
精神力:E +
魔法:火の普通級魔法
剣術:D
ボブ
魔力量:C
身体能力:C -
魔力操作:C +
精神力:E
魔法:雷の普通級魔法
斧術:D
メリッサ
魔力量:C
身体能力:E
魔力操作:B
精神力:E
魔法:水の普通級魔法
短剣術:E
キャロ
魔力量:C
身体能力:D
魔力操作:C +
精神力:E
魔法:風の普通級魔法
細剣術:D




