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偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~  作者: オク炭治郎
第0章:ゲームストーリー開始前
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2話:蒼との出会い

 

 王城に来て一か月が経った。


 ここでの生活はそこまで悪くなかった。むしろ奴隷になっていること以外、地球での生活に比べレベルが高いだろう。

 仕事は地球での知識を話すだけ、食事は美味しいし自由時間もある。


 ちなみに地球の知識についてのことだが、こちらの人間が一番食いついてきたのは食文化についてだろう。こちらの食文化はそれほど進んではいないらしく、様々な料理のレシピ、醬油や味噌などといった調味料にとても興味を示していて、世界は変わろうとも食欲は変わらないんだな、とも思った。


 他には銃のことや医療のことも話したが、どうやらこちらには興味がないらしい。

 何故ならこの世界の上位の実力者にもなると、銃のようなものは効かないし、世界のトップレベルの魔法師にもなると、核爆弾規模の魔法を扱う魔法師も存在するらしい。医療においても、光の上位魔法を使えば大体の病気は治せるらしい。さらに驚いたことに手足も再生することが可能らしく、現代医療の知識にも興味がないらしい。



 そして、この王城に来て分かったこともたくさんある。まず俺がなんとなくで扱っていた、魔力を身体の中で動かすこと、魔力によって身体能力を上げる技術は、それぞれ魔力操作、身体強化といい、魔力を使う技術であり魔法ではなく魔術というらしい。


 ちなみに魔法というのは、ダンジョンという場所で神からの試練をクリアすると、神の加護を受けることができ、それによりようやく使えるようになる。さらに魔法というのは加護の強さによって5段階に強さが分けれているらしく、下から【普通級(ノーマル)】【希少級(レア)】【特別級(スペシャル)】【伝説級(レジェンダリー)】【神話級(ミシカル)】とランク付けされている。


 人間の使える魔法は、火、水、地、風、雷、光の6属性であり、それ以外が属性なしである無である。俺が加護の適性なしと言われていたのは、この無だったということらしい。


 人間の持つ属性をどうやって判別するかというと、髪の毛の色らしい。火なら赤、水なら青といったように分けられている。ちなみに、俺の髪のような白髪や黒髪といった髪の色は、無とされている。

 そのため、俺は魔法を使うことは出来ない。俺はそれを聞いて落胆した。でも魔術は扱うことが出来るため、毎日暇な時間を見つける度に魔術の練習をした。


 そのような感じで、昼はメイドや執事に地球の知識を教え、それ以外の時は本を借り、この世界の知識を学んだり、魔術の練習をしたりというような生活している。


 わりとこの生活は楽だし、このまま一生この生活でもいいな……と考えていると、俺に貸し与えられてる部屋がノックされた。


 俺は思考を一時中断し、部屋のドアを開ける。


 そこには赤髪で筋肉質の大男がいた。


「こんにちは、クオン」


 この人はバン・シュナイダー侯爵、王国でもトップクラスの魔法師だ。

 この王城の貴族や王族は、俺のことを無視するし、メイドや執事に至っても、仕事で話すとき以外は俺に近寄ってこない。しかし、この人はいろいろとお節介を焼いてくれるいい人だ。少し暑苦しいが


「こんにちは、何か俺に用がありましたか?」

「ああ、ちょっといいか? 暇だったら少し付き合ってくれ」


 なにか用事があるのだろう。今はちょうど自由時間であり、暇である。そして、この人にはとても良くしてもらっているため、俺は快く頷いた。


「はい! 大丈夫ですよ」

「よし、じゃあ連れていきたい場所があるから着いてこい!」

「わかりました」


 そう言われて侯爵に着いていき、王城の中を進んでいくと侯爵はとある一室の前で止まった。明らかに俺の部屋よりもでかそうだ。

 その部屋のドアを侯爵はノックする。


「ティリス様! 入ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」


 侯爵に連れられて部屋に入る。


 そこにいたのは人魚だった。比喩ではない。リアルに人魚だった。上半身は人間の姿をしているが、下半身にはヒレがついていた。どうやら普通に立つことは出来ないらしい、車椅子に乗っている。


 俺は少し見惚れてしまった。サファイアのように澄んだ青髪に瞳、前の世界でも見たことのないほどの絶世の美貌、日に当たったことがないかのように白く幻想的な肌。恐らく10代前半くらいだろう。まだ幼さを残しつつも、とても可愛らしい。


 俺がそんなことを考えていると侯爵が話を始めた。


「ティリス様。こちらがクオンです。現在王城で異国の文化を教えているものです」

「バン様。わざわざありがとうございます」


 侯爵がこんなに丁寧なので相当偉い人なのだろう。失礼がないようにしよう。そう思い、俺は自己紹介をすることにした。


「俺はクオンです。奴隷ですがこの城に住まわせてもらっています。お目にかかれて光栄です。よろしくお願い致します」

「私はティリス・セイドリーテです。第三王女ですが、王位継承権はないのでそんなに畏まらなくても大丈夫ですよ」


 そう言ってティリスは微笑む。凄く可愛い。ああ、これは完全に一目惚れだろう。


「はい、わかりました!ティリス様とお呼び致しますね」

「では私もクオン様とお呼び致します」


 俺たちがお互いに自己紹介をして、微笑みあっていると侯爵が嬉しそうな表情を見せた。 


「仲良くなれたようで良かったです。では私はこれで失礼致しますね」


 そう言って侯爵は部屋から出て行こうとする。俺はどうすればよいのだろう?


「侯爵! 俺はどうすればよいのでしょうか?」

「これから暇なのでしょう? お互い王城で気軽に話せる人がいないのですから、私からのお節介ですよ」

 

 そう言って侯爵は出て行ってしまった。俺は困惑しながらティリスを見ると微笑まれてしまった。

 このような状況で何も話さないのもなんだろう、俺から話しかけた。


「侯爵行ってしまいましたね、どうしましょう?」

「そうですね、では話でもしましょうか」

「はい! 是非しましょう」


 俺はティリスにそう言われたので、嬉しそうにそう返した。


「じゃあ……そういえば、クオン様は異国の方なのですか?」

「はい、そうですよ! 俺は異国というより異世界から来たんです」

「そうなのですか! ぜひ話を聞きたいです」


 そう言って、ティリスは目を輝かせた。未知の世界に興味があるようだ。


「よろこんで」


 俺はそれから、ティリスといろいろ話をした。地球のことも俺自身のことも、いろいろ話していくうちに分かったこともたくさんあった。


 どうやらティリスは生まれつき人魚だったようだ。

 この国では人魚は亜人と区分され、差別の対象になっているらしく、たとえ王女であろうとも、周りからは人間じゃないと蔑まれて生きてきたらしく、ちゃんと人間として接してくれるのはバン侯爵くらいらしい。


 そんなこんなでいろいろ話をしていると、あっという間に日が落ちてしまった。流石にそろそろ帰るとしよう。


「では今日は遅いので、俺はこれで失礼します」

「楽しかったです。話を聞かせてください」

「俺の方こそ楽しかったです。また来ますね」


 そう言い残し、ティリスの部屋を出て自分の部屋に戻った。



 どうやら俺はティリスのことを好きになってしまったようだ。


 我ながらちょろいと感じるが、仕方ないだろう。あんなに親密に女子と話すのは久々だし、この世界に来てからというもの、俺と親しく話してくれる人がおらずに寂しかった。なによりあれだけの美少女だ。たとえ俺でなかったとしても、少しの間で好きになってしまうだろう。


 そんなことを考えながら、俺とティリスの初めての一日目は終わった。

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