表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/62

0話:原初の魂源

――この世界には魔法がある。そして、それ以外にも生まれながらにして特別な力を持つ者たちがいる。古代人たちは、その者たちを『魂源』を持つ者、オリジンと呼んだ。


 ローブからは白髪が覗き、顔は仮面を被っているため見えない、

 そんな一人の男が、森林にひっそりと建てられている、とある孤児院を見ていた。


「ようやく見つけたな……始めるとするか


――魔の魂源(こんげん)を司る大罪により


――聖の魔力よ反転せよ


――(おご)


――我は堕落(だらく)の天使なり


――傲慢不羈スペルビア・ルキフェル


 その瞬間、黒い魔力が男を包む。


 そして、黒い魔力が収まると、そこには3対6羽の白い天使のような羽が背中から生えている男が居た。


「準備は終わった……さぁ、計画を進めようか」


 その天使の男は、目の前の孤児院に向かって飛んでいった。



――――



 私は産まれてすぐに、黒髪だからという理由で親に捨てられた。


 気付いたときには、孤児院に預けられていた。


 私は何故か生まれつき、人の強い感情が読める。

 だから、私は知っていた。

 街に行ったら人から、侮蔑の感情でみんなから見られることを。

 黒髪だからと、(わら)われることも。


 だが、私の預けられた孤児院には、人間だけではなく、亜人の捨て子もいた。

 亜人は普通は差別の対象にされて、迫害を受けている。

 でも私はそれを見て驚いた。なぜなら、そこでは人間や亜人、髪の色など関係なくみんなが仲良くしていたんだ。

 だから、私は黒髪だけど、そこでは差別はされなかった。


 孤児院以外の人たちは、みんな私を差別した。 

 直接的に言ってくる人もいたが、中には表面上だけは優しく接してくれる人もいた。でも、そういう人も心の中では侮蔑の感情を持っているんだ……


 だけど、孤児院のみんなは表面上だけではなく、心の底から私を普通の人間として見てくれたんだ。


 だから、私の居場所は孤児院だけだった。

 孤児院だけが私の幸せな環境だった。

 差別もなく、みんな楽しく過ごしていた……あの時までは、


 私の幸せな日常が終わったのは、6年前だ。


 6年前のある日、私は当時9歳だった。

 その日も、私はみんなと一緒に遊んでいた。

 いつも通りの平和な日常だった。

 だが、急にそいつは現れた。


「アンリちゃん! 一緒に遊ぼうよ!」


 目の前のエルフの子が私を遊びに誘う。

 いつも通りの平和な日常だ。


「うん、いいよ!」


 私はエルフの子の手を取った。その時、その子後ろに男が現れた。


 その男は黒いローブを着ていて、顔の詳細はわからなかったが、特徴的なところがいくつかあった。まずは、背中から天使のような羽が生えていること。次に、街の住人が私を見る時のような、人を見下すような目をしていた。

 その男はこの世の全てを見下すような目が私を見ていた。


「ここにいたのか……『原初の魂源』、ようやく見つけた」


 男が喋ると、それに反応したエルフの子が後ろを振り向いた。次の瞬間、エルフの子の首を男が切り飛ばした。


 首が宙を舞い、地面に落ちる。


 地面に落ちたその顔を見ると、さっきまで楽しく話していたはずの子が、虚ろな目をしている。


 少しの間、何が起こったかわからず、私は呆然としていたが、

 虚ろな目と目が合った瞬間、全てを理解して、私の感情は爆発した。


 そして、意識が闇に呑まれた。


『ああ、いい絶望だ。やはり、傲慢(ルシファー)はいい仕事をするな』



――――



 私が目を覚ますと、そこには壊れた孤児院があった。

 私が目を覚ますまでに何が起きたのだろう。そこは血で濡れて、血まみれになっていた。


 しかし、そこにはみんなの死体は無かった。ただあるのは、何故ここにいるのかわからない、魔物(モンスター)の死体だけだった。

 みんなが死んではいないかも知れないという想いから、少し安堵をする。


 そして、何故、天使のような男はいないのだろう? みんなはどこに行ったのだろう? と、色々疑問に思うことはあるが、とりあえず、周りを見渡して状況を把握することにした。


 アンリは周りを見渡す。

 すると、地面に一枚の紙が落ちていた。

 私はそこまで歩き、紙を拾い上げた。


 そこにはこう書かれていた。


――

 この紙を読んでいるということは、君はまだ君だということだろう。

 もし、行く当てがないのなら、世間で純白の魔女と呼ばれている女のところに行きなさい。きっと面倒を見てくれるだろう。

 そして、知っておいて欲しいことがある。世の中には、自分のもう一つの意思を制御しきれない人もいるということを。

 君もあの子もそうなのだから。もう一つの意思は自分自身ではないと言う事を、どうか忘れないでくれ。

 それと最後に頼みがある、もし純白の魔女に会ったら、君の計画は上手くいっている、と伝えてくれ

――  


 紙に書いている後ろ半分の意味は、ほとんど理解できなかった。

 しかし、前半に書いている通り、私は行く当てもないので、純白の魔女のところに行くことにした。


 そして、私は誓った。


――私の|居場所を壊して、友達を殺して、みんなをどこかにやった、天使の男に絶対に復讐してやると



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ