0話:原初の魂源
――この世界には魔法がある。そして、それ以外にも生まれながらにして特別な力を持つ者たちがいる。古代人たちは、その者たちを『魂源』を持つ者、オリジンと呼んだ。
ローブからは白髪が覗き、顔は仮面を被っているため見えない、
そんな一人の男が、森林にひっそりと建てられている、とある孤児院を見ていた。
「ようやく見つけたな……始めるとするか
――魔の魂源を司る大罪により
――聖の魔力よ反転せよ
――驕れ
――我は堕落の天使なり
――傲慢不羈」
その瞬間、黒い魔力が男を包む。
そして、黒い魔力が収まると、そこには3対6羽の白い天使のような羽が背中から生えている男が居た。
「準備は終わった……さぁ、計画を進めようか」
その天使の男は、目の前の孤児院に向かって飛んでいった。
――――
私は産まれてすぐに、黒髪だからという理由で親に捨てられた。
気付いたときには、孤児院に預けられていた。
私は何故か生まれつき、人の強い感情が読める。
だから、私は知っていた。
街に行ったら人から、侮蔑の感情でみんなから見られることを。
黒髪だからと、嗤われることも。
だが、私の預けられた孤児院には、人間だけではなく、亜人の捨て子もいた。
亜人は普通は差別の対象にされて、迫害を受けている。
でも私はそれを見て驚いた。なぜなら、そこでは人間や亜人、髪の色など関係なくみんなが仲良くしていたんだ。
だから、私は黒髪だけど、そこでは差別はされなかった。
孤児院以外の人たちは、みんな私を差別した。
直接的に言ってくる人もいたが、中には表面上だけは優しく接してくれる人もいた。でも、そういう人も心の中では侮蔑の感情を持っているんだ……
だけど、孤児院のみんなは表面上だけではなく、心の底から私を普通の人間として見てくれたんだ。
だから、私の居場所は孤児院だけだった。
孤児院だけが私の幸せな環境だった。
差別もなく、みんな楽しく過ごしていた……あの時までは、
私の幸せな日常が終わったのは、6年前だ。
6年前のある日、私は当時9歳だった。
その日も、私はみんなと一緒に遊んでいた。
いつも通りの平和な日常だった。
だが、急にそいつは現れた。
「アンリちゃん! 一緒に遊ぼうよ!」
目の前のエルフの子が私を遊びに誘う。
いつも通りの平和な日常だ。
「うん、いいよ!」
私はエルフの子の手を取った。その時、その子後ろに男が現れた。
その男は黒いローブを着ていて、顔の詳細はわからなかったが、特徴的なところがいくつかあった。まずは、背中から天使のような羽が生えていること。次に、街の住人が私を見る時のような、人を見下すような目をしていた。
その男はこの世の全てを見下すような目が私を見ていた。
「ここにいたのか……『原初の魂源』、ようやく見つけた」
男が喋ると、それに反応したエルフの子が後ろを振り向いた。次の瞬間、エルフの子の首を男が切り飛ばした。
首が宙を舞い、地面に落ちる。
地面に落ちたその顔を見ると、さっきまで楽しく話していたはずの子が、虚ろな目をしている。
少しの間、何が起こったかわからず、私は呆然としていたが、
虚ろな目と目が合った瞬間、全てを理解して、私の感情は爆発した。
そして、意識が闇に呑まれた。
『ああ、いい絶望だ。やはり、傲慢はいい仕事をするな』
――――
私が目を覚ますと、そこには壊れた孤児院があった。
私が目を覚ますまでに何が起きたのだろう。そこは血で濡れて、血まみれになっていた。
しかし、そこにはみんなの死体は無かった。ただあるのは、何故ここにいるのかわからない、魔物の死体だけだった。
みんなが死んではいないかも知れないという想いから、少し安堵をする。
そして、何故、天使のような男はいないのだろう? みんなはどこに行ったのだろう? と、色々疑問に思うことはあるが、とりあえず、周りを見渡して状況を把握することにした。
アンリは周りを見渡す。
すると、地面に一枚の紙が落ちていた。
私はそこまで歩き、紙を拾い上げた。
そこにはこう書かれていた。
――
この紙を読んでいるということは、君はまだ君だということだろう。
もし、行く当てがないのなら、世間で純白の魔女と呼ばれている女のところに行きなさい。きっと面倒を見てくれるだろう。
そして、知っておいて欲しいことがある。世の中には、自分のもう一つの意思を制御しきれない人もいるということを。
君もあの子もそうなのだから。もう一つの意思は自分自身ではないと言う事を、どうか忘れないでくれ。
それと最後に頼みがある、もし純白の魔女に会ったら、君の計画は上手くいっている、と伝えてくれ
――
紙に書いている後ろ半分の意味は、ほとんど理解できなかった。
しかし、前半に書いている通り、私は行く当てもないので、純白の魔女のところに行くことにした。
そして、私は誓った。
――私の|居場所を壊して、友達を殺して、みんなをどこかにやった、天使の男に絶対に復讐してやると




