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偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~  作者: オク炭治郎
第0章:ゲームストーリー開始前
32/62

29話:世界の真実

 ティリスとルーイはお互いに言い争っていたが、お互い冷静になったのか言い合いを止めた。


「ところで、クオンは今の自分の力に満足している?」


 ティリスが聞いてくる。


「当たり前でしょう! クオンはもう充分に強いんです! だって特別級魔法師も倒したんですよ」


 俺が答える前に、ルーイが口を挟む。


「あなたは黙ってて! 私はクオンに聞いてるの。それに特別級魔法師が何よ、上には上がいるわ」


 ティリスの言葉は、まさしくその通りだろう。上には上がいる。それはさっきも実感をした。特別級魔法師のセトは確かに強かったが、その上の伝説級魔法師の魔法はそれの何倍も凄かった。ティリス(神話級魔法師)の魔法はその何十倍も凄かった。今の俺の実力ではそれらには対応が出来ないだろう。


「いや、俺は今の力に満足していない。もっと強くなる必要がある」


 ティリスの目を見つめて、俺は力強く宣言した。すると、ティリスは何故か、目を逸らして顔を赤らめた。


「そうよね、じゃあ私のところに来ない?」


 ティリスの言葉にまたルーイが反応した。


「この雌ブタは何を言っているんですか!? クオンは私の方がいいと言ったんですよ」

「そういうことじゃないわ、私のところにきて、強くならない? ということよ」

「どうせクオンと一緒に居たいからそう言っているだけです!」

「それも少しはあるけど、違うわ!」

「ほら、少しはあるんじゃないですか」


 ルーイとティリスはヒートアップしていく。このままではまたさっきのように言い争いになるだろう。俺はティリスの話を聞かなくては行かない。


「ルーイ、少しだけティリスと話をさせてくれ」

「ごめんなさい、ちょっと熱くなってしまいまいました」


 俺の言葉にルーイはしゅんとする。


「いいんだ、俺のことでそんなに熱くなってくれるなんて嬉しいよ」


 そう言うと、ルーイは元気を出した。それよりも本題に入らなければ


「それで、強くなれるとはどういうことだ?」


 俺の疑問にティリスは答えた。


「クオンは、セトとの戦いで加速(クイック)を使ったでしょ? 私のところに来れば、その(魔法)をもっと強化出来るわ」


 どういうことだろうか? 俺は疑問に思ったが、今以上に強くなれるならと頷いた。


「それで強くなれるなら、俺はティリスに着いていこう」


 俺の言葉にティリスは喜び、ルーイは悲しむ。だが、条件はまだある。


「ただ、ルーイも一緒でもいいか?」


 今度は俺の言葉で、チッ、とティリスが舌打ちをして、ルーイは喜んだ。そして、ティリスは少し考えると頷いた。


「いいわ、でもクオンに着いてくることは不可能よ、ルーイは別のところで訓練をしてもらうけど大丈夫?」


 俺はルーイに確認を取ると、「私は大丈夫です」とルーイは言った。なら俺の意思は決まった。


「それでも大丈夫だ、これからはよろしくな」

「うん、あなたを最強にしてみせるから任せて頂戴」


 俺とティリスは握手をした。


「ところで、これからどうするんだ?」

「戦争の功労者は、王城で貴族の位を与えられるわ。あなたなら多分、貴族になれるくらいの戦績を上げたわ。でも王城には行かないほうがいい」


 何故、貴族になれるのに王城に行かないほうがいいのだろう、と俺は疑問に思った。


「なんでだ?」

「それは、あなたのことを王城の人たちは覚えているかもしれないからよ」


 俺はさらに疑問に思う。


「どうして?」

「あなたは覚えていないけど、私は王城に居た時のクオンを知っている」


 その言葉に俺の頭は混乱する。そこまで理解力がないはずではないが、全くティリスの言っている意味が分からない。


「俺が王城にいたのか?」

「そう……そして、あなたは王城から追放されたの、記憶を消されてね」

「記憶を消される?」


 ティリスは話しにくそうにした。どうやらここでは言いにくい内容なのだろう。


「……ベス、ここでの話を聞かせないように周りの者たちを遠ざけて」

「了解だよ」


 いつの間にかそこにいたエリザベスは、周りの王国軍たちを遠ざけた。そして、周りにいるのは俺とルーイとティリスだけになった。


「クオン、あなたにはこの世界の真実を話すことにするわ。私の言葉を信じるか信じないかはあなたに任せるわ」


 それから、ティリスはこの世界の真実を話し始めた。俺の記憶を消した存在。何故、白髪や黒髪が魔法を使えないとされているのか。何故亜人は差別されているのか。そして、それらの裏には全て教会が絡んでいることを。


 ティリスの話を聞いて、俺の異世界での方針は決まった。


――俺は強くなって、糞みたいなこの世界を変えてやる


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