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偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~  作者: オク炭治郎
第0章:ゲームストーリー開始前
31/62

28話:ティリスとルーイ

 フェールが目の前にいる。


 いつ来たのだ? 全然気づかなかった。


「ひさしぶ……いや、クオン少佐。怪我は無いでしょうか?」


 フェールが言葉をかけてくる。


 何故俺だけに声をかけるのだろうか……


「はい、大丈夫です」

「ならよかった。少し待っていてください全て終わらせます」


 フェールが俺を見て、微笑みかけた。

 何故か懐かしい感じがした。


 フェールの身体からさっき以上に魔力が立ち昇る。

 

 世界が軋む、青い激流のような魔力だ


「世界を司る命の水よ


 我が魔力により起き上がれ。


 そして大海の如き水魔の力にて、


 水の恐れを知らぬものを沈めろ


 水の加護よ我に力を


――海神激動(メイルシュトローム)


 

 周りの川や沼、地面から水が溢れ出てくる。


 そして、メラレーンの(へそ)を目指して津波のように大量の水が押し寄せる。


 下にいる帝国兵たちは水に押し流され、その勢いのままメラレーンの(へそ)の側面に大量の水の一緒に打ち付けられていく。


 さらに大量の水がメラレーンの臍を囲むように旋回し流動し始める。


 まるでここを中心とした大渦のようだった。


 メラレーンの(へそ)は高さは100m、周囲が1キロ以上あるだろう。その周りを囲み流動する水流の大きさは数キロにも及び、地球の大津波なんて目じゃ無いまさしく神話の災害だろう。一度巻き込まれたら抜け出すことは不能だと思うほどだ。


――これが神話級魔法か


 伝説級魔法も凄まじいエネルギーだったが、まさしくこれは桁が違う。


――だけど、この魔法、いやフェールの魔力はどこか寂しそうな感じがした。


 魔法の効果が終わり、水の流れが落ち着くと、辺り一面には湖が出来ていた。


 メラレーンの(へそ)を中心として半径数キロにも及ぶほどの大きさだ。


 王国軍たちは皆呆然としている。


 理解が追いついていないようだ。


「私たちの勝利です」


 フェールの言葉に王国軍は歓声を上げる。


「「「「「王国万歳!! フェール大将万歳!!」」」」」」


 「私だけでは帝国兵をこんなにも纏めて屠ることはできませんでした。全てはみなさんのおかげです。あとはこの作戦に初めに気づいたクオン少佐のおかげです」


 え、俺がこの作戦に気づいた? いつ気づいたんだよ、今、知ったわ、こんなことになるなんて、びっくりしてるしな……


 俺が何か盛大な勘違いをされていると、王国兵たちは今度は俺のコールをし始めた。



「「「「「純白の英雄、万歳!!」」」」」


 大歓声の中、ずっと居るのか分からないほど空気になっていたクリスが話しかけてくる。


「まさか、ここまで読んでいたとはね……君の叡智に驚かされたよ」


 俺の叡智なんてないに決まっているだろう! 

 何故、勘違いされているんだ? 何も勘違いされることは言ってないだろう


 俺が混乱をしているとクリスが続けて謝った。


「俺は今、この作戦に気づいた……無能な俺を許してくれ、前の作戦会議の時に君に暴言を言ってしまった」

「いえ、大丈夫です。俺は何も考えてないし、何もしていませんから」


 それに俺もこの作戦に気づいたのは今だから、クリスと同じだろう。


「謙虚だな、いや俺を傷つけないように気を遣ってくれたのか……優しいのだな」

「いえ、作戦を考えたのはセレス少将なので俺の功績ではないんです」


 クリスがベタ褒めしてくるため俺は言い訳する


「クオン少佐の言葉で私はフェール大将の意図に気付いたのです。これはあなたの功績でしょう」


 セレスも俺を褒めてくる……どうしてこうなったのだろうか? いつ何があったんだ?


「クオン少佐、少しいいでしょうか」


 俺たちが話していると、フェールが話しかけてきた。何か用があるのだろうか


「はい、大丈夫です」

「では、着いて来てください」



――――



 サファイヤのような澄んだ青髪と瞳、肌は陶磁器ように真っ白、凄まじい美貌と妖しい雰囲気だ。だがどこか儚い雰囲気も感じる。遠くから見れば見る印象とはだいぶ変わっていた。


「クオン少佐、いやクオンって呼んでもいいですか」

「はい、構いません」

「ありがとうございます……」


 何故だろうこんなやりとりをするのが初めてではない気がする。だがフェールとは初めて話す筈だ。


「私のことはティリスと呼んでください」

「……ティリスですか?」


 フェールの偽名だろうか? だが何故だろう、どこかで聞いた名前だ。


「はい。私の本当の名前です……やはり覚えてませんか?」


 覚えてない? 俺は異世界に来てから直ぐに鉱山奴隷になったはずだ……いや、でもどうやって鉱山に連れて行かれたんだっけ?


 何故か頭が痛い。


(確か俺はティリスとの約束を守れなかったんだ……)


 俺は何か思い出しそうになると急に思考が出来なくなった。


(あれ? ティリスって誰だ? それになんだっけ?)


「……なんの話ですか? お名前はティリス大将とお呼びした方がいいですか?」


 ティリスの頬から涙が溢れた。

 あれだけ凄い魔法を使っていたのに、今はまるで儚い少女のように見える。

 胸が締め付けられる。


「すみません、何か気に障りましたか?」


 何か気に触れることがあったのだろうか……


「いえ、なんでもないです。ただティリスと呼び捨てで大丈夫です」

「でも、公爵家当主の方を呼び捨てにするのは……」

「ベスはいいのにですか?」


 ティリスは頬を膨らませて、俺に言った。


 そういえばエリザベス中将のことは2人きりの時はベスと呼ぶと言ったな……


「では2人きりの時はティリスとお呼びいたします」

「敬語も無しです」


 何故、こんなにもぐいぐい来るのだろうか……ベスもそうだったけど、まさかこの国の女性の貴族はみんなこんな感じなのだろうか……いやでもセレス少将はそんな感じじゃないしな


「わかったよティリス」

「はい、クオン」


 ティリスは頬を赤らめて近づいてくる。


「今から、私がすることは気にしないでください」


 ティリスは俺に抱きついてきた。

 いい香りが鼻腔をくすぐる。

 力強く抱きしめられるとティリスが話を始めた。


「……久しぶりクオン……会いたかったよ、あの時は君の方が年上に見えたのに今は私の方が年上に見えるね……君と別れてから、ずっと君だけのために私は頑張ったんだよ……きっと私を思い出させてあげるから、もう少し待ってね」


 何の話だろうか……


 俺が混乱していると誰かが声をかけてきた。


「……お姉様、私から愛する人(クオン)まで奪おうとするのですか?」


 ルーイだ。だがいつもは見せない怒気を纏っている。

 しかも、ルーイの昔の話に出てきた義姉というのはティリスの事だったのか……


「別に私は奪う気はないわよ……ただクオンは元から私の大事な人なの、きっと全てを思い出したら私を選んでくれる」

「クオンは私と愛し合ったんです……余計なことはしないでください」


 ティリスは凄まじい殺気をルーイに向けた。だがルーイは一歩も引かずに目を合わせて睨み合う。


「まあ、何があったかわからないけど落ち着いてくれ」


 俺がそう言うと、2人は殺気を収めた。


「クオンはどっちがいいの?」


 そんなこと言われてもティリスとは今あったばかりだし、流石にルーイだ。


「ティリスとは今あったばっかりだし、ルーイの方が大事かな」


 俺の言葉を聞いて、ルーイが勝ち誇った顔をして、ティリスは落ち込んだ顔をした。


「絶対に私のものにしてみせる」

「絶対に取られません」


 (何があったか分からないけど、女って怖いな)


 俺は2人の言い争う姿を見ながら思った。

この話はルーイ視点だと、だいぶ違った話に見えてきます。是非ルーイ視点の短編も見てみてください。https://ncode.syosetu.com/n2047hb/

※なおまだここまでの話は投稿してない模様。

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