3.悲鳴が上がった
「まずは、此度の夜会へ参加してくれた皆に礼を言いたい。他国から友好の為にお越し下さった皆様には、特に篤くお礼申上げる」
国王がゆっくりと感謝の言葉を述べると、会場の人々が軽く膝と腰を折り、その言葉に応える。
「今夜の夜会は、わが国と友好国アドニア皇国とユードニア連合国との良縁を寿ぐ為に開催した」
その言葉で、何故かアーノルドとアルマが互いに見つめあい微笑む。
その姿に、アーノルドに注目していた貴族たちが首をかしげた。
「わが国の・・・」
「第一王子であり、王太子である、このアーノルドと!アドニア皇国の貴族の血を引くアルマ・ジニエ男爵令嬢との婚約が整った!」
アーノルドはアルマ嬢と手を取り合い、これ以上はない、といった笑顔で、まさかの国王の言葉をぶった切って宣言。
そして、下級貴族のエリアでは、悲鳴が上がった。
「ぐっぐふぅっごほっ」
「きゃぁあ!!あ、あなたぁぁぁぁ!?」
「ジ、ジニエ男爵っ!ジニエ男爵がっ!」
阿鼻叫喚 と言った所だろうか…。
王の目から光が消え、王妃の持つ扇がギシリ、と音を立て…ヒビが入った。
もはや、婚約破棄が云々といった問題ではなくなってきつつある。
エルーナローズは、斜め後ろに立つ青年と目を合わせため息をつくのだった。