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ざまぁ・追放 いざ書く側に回ると立ちはだかる常識の壁

作者: 射手川

小説家ってすごい。

 初めまして、射手川と申します。

 ずっと読み専だった私が最近になって小説を投稿し、その際に思ったこと、ぶち当たった壁について語りたいと思います。


 まず、いきなりなのですが私はいわゆる「ざまぁ」や「追放(もう遅い)」系の話が大好きです。

 これをはっきり口にすると人としてどうなのかとか思わなくもないのですが、正直なところ私は人としてどうなのってタイプの人間なので置いておくことにします。(開き直り)


 特に好むのは短編形式で、一万文字前後の物語を空き時間にさらっと読める物、ジャンルとしてはハイファンタジー・異世界恋愛の物を検索機能を駆使して発掘しておりました。悪役令嬢とか大好物なわけです。

 しかしながらやはり短編は読み漁り消費していくのが早く、主だったものを読破してしまうのにそう時間はかかりませんでした。


 もっと読みたい。こういうのがあればいいのに。

 そう思った私はついに執筆という手段で自給自足の道に乗り出そうとした次第でございます。



 まず私は、「とりあえずテンプレ的なやつがいいな」と場当たり的に考えてユーザーページの新規小説作成ボタンをクリックしました。

 国の名前、キャラの名前はネットのありがたい生成系サイト様が作ってくれ、さらにはありがたいことに小説家になろうにはいくつか書き方指南のエッセイなどが投稿されておりますので、まずは「悪役令嬢・婚約破棄」でテンプレをなぞるように書き始めようとしたのです。


「なんたらかんたら公爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」


 真っ白な小説作成ページに、定番のこのセリフを書き込んだ瞬間、思いました。



 こんなバカ現実にいるか?



 ええ、わかりますとも。おまえそういうのが好きなんだろうが、と。お思いになられたことでしょう。あるいはフィクションに何を言ってるんだ、かもしれません。

 私自身困惑しました。今まで何も考えずに楽しく読んでいたものと同じ始まりなのに、どうしてと。


 ですが、初めて執った筆、ということもありまして、初心者ながら面白いものが作りたいというある種の傲慢な考えをしていた私は思ったわけです。物語には舞台があり、舞台には人が生きており、そのひとりひとりに思想・思考があり動いている。それを切り取ってひとつのストーリーができあがるのだ、と。


 で、あるならば。


 こんなバカ現実にいるか???


 王族だぞ。貴族だぞ。陰謀渦巻く貴族社会で、存在理由がよくわからないけど学校みたいなところで何年か暮らしている子女たちだぞ?

 そうしてたった一文で私の執筆の手が止まりました。

 いやいやこれはおかしい、と私は自身の目的のために必死にキーボードを叩き続けます。


 じゃあ追放系ならどうだろう。

 主人公の能力で成り立っている冒険者パーティ。無能なリーダーが愚かにも自分の力と過信して言い放ちます。「おまえをこのパーティから追放する!」



 こんなバカフィクションにも存在するか?????



 命がけの稼業でこれまで死線をくぐり共に戦った仲間、たとえ荷物持ちだとしてもその能力を一切評価せずに切り捨てるか?


 思い描くキャラクター像に「そんなはずがない」と思いながら、止まる執筆の手を「そんなはずがない」と動かします。

 悪役令嬢が、無能と蔑まれた者が、華麗に立ち回り馬鹿どもをバッサバッサと切り捨て幸せになる物語。

 そういうのが読みたいんだ。そういうのを書きたいんだ。

 しかし結果として積みあがったのは千文字に満たない書きかけの駄文。それが執筆中小説の欄に並ぶ様。私の努力は悪あがきにしかなりませんでした。



 その中で思い知ったのが「バカを書くのは難しい」ということ。

 読んでいる時には「こんなバカおらんやろ(笑)」で済んでいたものが、書く側に回ると「こいつはどうしてこんなバカになったんだ(戦慄)」に変わりました。


 前述したように物語には舞台があり、舞台には人が生きており、そのひとりひとりに思想・思考があり動いている、と私は考えています。

 なので、バカがバカに至るにあたり、原因・理由・経緯が必要になります。けれどもどんなに頭を捻っても、こんなバカが生まれるはずがないという結論、ある種の固定観念に囚われてしまったのです。


 悪役令嬢もので言えば王子やその取巻き、追放もので言えばパーティや組織のリーダー。

 どんなに根が傲慢でいけ好かない人格をしていたとしても、あまりに主人公格の――よくない言い方ですが――利便性が強すぎます。とてもではないですがそれを「忘れていた」「気付かなかった」と手放す流れにするには強すぎるんです。


 主人公を描くにしても同様の葛藤がありました。

 その状況になる前にどうにかできたよね? と。


 婚約破棄されてバッドエンドの流れを変えたいなら事前に解消できるのでは? いくら王命とはいえ(大抵高位)貴族の進言を王は無視できないはずです。王子がバカならそれを理由に、そうでなくとも宮内には派閥があるはずなので主人公との婚約を無くしたい一派もいるはずで、彼らとの利害は一致しますよね。

 主人公の親が野心家? じゃあ王子の教育にもっと力入れろ。娘に任せて放置するはずがない。

 国王が王子の後ろ盾を欲して? じゃあ(略)。無理にあてがっても求心力失うじゃん。


 追放系であれば、もっと話し合えよと。自分はこうこうこういう役割を持っていて、こういう能力があるんだよ、と。ただでさえ、付き合いが長いはずなのに追放されるから話が成り立っている、のだから、仲間に対して理解を得られないのが理解できない。むしろそれをしても要らないと言われたのならそれは円満解決、単なる脱退です。ヨカッタネ。

 というかまずリーダーがバカであったとして、主人公が「なぜそのパーティないし組織に属しているのか」を考えると、たとえ能力を隠しあるいは理解されずに所属していたとしても、まず「なんで自分から抜けようと思わなかったのか」の理由が私には捻り出せませんでした。



 主人公は〝魅力的〟でなければならない。

 優秀さでも狡猾さでも運の良さでも後付けに付与された能力でも、持ちうるそれらを効果的に使う、立ちまわる必要がある。

 じゃあそもそもそんな状況にならないじゃん!(原点回帰)

 そんな常識の壁が、私の前に立ちはだかるのです。

 ※誤解なきよう念のために記しておきますが、「テンプレ系小説」の作者様に対して常識がないとか言っているわけではありませんよ!

 筆を執り、一つの物語を作り上げた何千何万の作者様方に心からの敬意を表します。



 頭をからっぽにして〝小説を読もう!〟を楽しんでいた私は知りました。

 頭をからっぽにして読めるような物でも、執筆にあたり凄まじい労力が支払われているのだと。

 たとえ「頭をからっぽにしないと読めない」と揶揄されるような小説でさえも、頭がからっぽでは到底書ききれないのであると。


 そんな私が頭を捻って捻ってようやく捻り出したたった一つの拙作は、恵まれたことに高評価や嬉しい感想を頂くことができました。

 そうなると途端に鼻が伸びるのが初心者あるあるだとは思うのですが、例に漏れず今もなお苦しみつつどうにか頭の中の妄想をひり出そうと躍起になっております。


 ただ、どうしても「バカ」が書けそうにありません。魅力ある悪役の作成は難しいものだと思っていましたが、魅力も見どころもないバカの作成でさえこれほどまで困難だとは思ってもいませんでした。

 「ざまぁ」「追放」を好んで書き始めた私ですが、大好きなそれらを形にするにはまだまだ実力が伴っていないようです。


 この先いつになるかはわかりませんが、もし私の書いた文を目にした際はぜひ、感想でもアドバイスでも書き込んでいってくださいませ。


 もしも私がざまぁ系を書いていて、登場人物に「こんなバカおらんやろ(笑)」と思ってくださったなら、ひとつの成長として笑ってくださると幸いです。

「こんなん俺でも書けるやろ!」→「こ、こんなはずでは……」をリアルに辿ったざまぁ系ストーリー。

思ったことを乱雑に綴ったので文章おかしいかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいるときと実際に書いてみたときのギャップは本当に驚くものがありますよね。 面白いものを書くには一旦常識を捨てる必要がありますが、常識がないと共感が得られないので冷静な思考は必要という高…
[一言] えーと婚約破棄や追放を死刑に変換すると歴史上に結構ありますよ 例えばイギリスのヘンリー8世当時宗教上の理由で離婚が出来なかったので当時の妻との結婚そのものを無効にしようとしてローマ法王に断ら…
[良い点] 面白かったですw [一言] 私も同じようなことを考えたことがありまして、バカがバカに至る理由を真面目に書いたことがあるのですが、失敗に終わりました。 何故ならば、その理由が納得できればでき…
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