対人戦~霞~
名前だけですが、章を付けてみました。
それはそれとして、どうぞ
霞は理科を好んでいる。正確には、理科で行う実験を好んでいる。
理科とは───科学とは魔法のようだ。魔力・MP、なんでもいいが、ある1つ、もしくは2つ以上の物から、新しいなにかを創り出す。科学も同じ事だ。ある1つ、もしくは2つ以上の物から、新しいなにかを創り出す。
霞はその魔法のような科学に惹かれた。
そして現在。実際に魔法を使え、しかも前には殺しさえしなければOKだと許可を取ってある人族の兵士。
霞は城で新しい魔法を試す時、龍地を実験台にしていた。なまじ能力が強化されているだけに、実験にちょうど良かったのだ。しかし、体が丈夫なせいで、どこまでやれば気絶するのか、どれだけやれば戦闘不能になるのかよく分からなかった。
そんな中現れた人間。こんなの実験しない訳にはいかないじゃないか。
憐れな兵士達は、自ら霞へと向かってくる。実験台が、自分から来てくれるのだ。こんなに楽なことは無い。霞は笑みを深めた。
一方人族側は混乱していた。元々結界の破壊による混乱を狙った為迎撃に出てくる魔族は少ないと思っていた。しかし、これは予想外だった。まさか1人だとは思わなかったのだ。それも、1人でも人族からすれば脅威となるオーガやワーウルフではなく、背の高さ的にも今前に居るのはウィッチ。いくら強力な魔法を使えるとはいえ、1人で兵士達を相手取ると言うのだろうか。出来たとして足止め、時間稼ぎぐらいだろう。魔族達は時間稼ぎをしなければならない程慌てているのだろうか。疑問はあるが、それでもこちらにとっては好都合だ。これならば、簡単に突破できる。そう考え、速度を上げる。時間稼ぎを狙っているのなら、それが出来ないほど早く突破すればいいのだ。
兵士達は、だんだん大きくなる人影を前に、指揮を高めて行った。
さて、前方から凄い数の人間が来ていますが。
ぶっちゃけ、勝つだけなら簡単だ。突っ込んで、剣振り回してたら勝てる。だって、なんでも切れるし。試し斬りで色々切ってみたけど、空間断裂が発動してれば、対象が紙(金属製)だろうが岩(城にも使われている)だろうが豆腐みたいに斬れる。抵抗というものが全く無い。危うくその下の机やら床やらを斬りそうになった。いや嘘、ちょっと斬った。うん。いや、悪気は無かったんだよ?まさか、あそこまで簡単に斬れるとは思わないじゃん。シリスさんに「この城にも使われています」って言われてちょっと気合い入れたのに、あっさり刃が通っちゃって。そうそうそう、その時のシリスさんの顔が──···
閑話休題
ただ、それだと皆死んでしまう。それはいけない。なるべく殺すなと言われてるし。何より私がそんなことしたくない。調子に乗って空間断裂なんて物騒な物作っちゃたけど、人殺しなんてしたくない。かと言って、戦わずに済むかと言われれば、否と言わざるを得ない。あっちはこっちに攻撃されたと思ってるからねー。しかも殺す気で。まぁそんな訳で、戦闘が免れない事が分かっていたため、その為の魔法は創っておいた。今回1人で来たのは、その魔法の威力偵察の為。1人なら色んなことに対処しやすい。というか、私の魔法だと、味方の魔法まで消しかねないから、1人のがいい。
と、暇つぶしはこんなもんでいいかな。いやーなかなか近づいて来ないからつい考え事しちゃうよね。ま、そろそろ準備しますかね。
私は腰の鞘から愛剣を抜く。そして、ちょっと細工というか、なんというか、まあそんな感じのことをする。
「〔武装変化 弓〕」
レイピアが淡く光る。見た目変化は無いが、既に刃に斬れ味が無くなっている。空間断裂も発動しない。斬れなくなった刃の部分を左手で掴み、レイピアの真ん中の辺り、丁度矢を番える辺りを右手で掴む。すると、ぼんやりと発光する矢のようなものが、光が寄り集まるようにして現れる。
そのまま後ろに引っ張り、十分張ったと思ったタイミングで手を離す。
前方へと飛んで行った矢は、そのまま兵士の方へと向かう。
兵士達の先頭にいた、恐らく隊長であろう男は、それに気付いて叩き落とそうとしたのだろうか、本物の矢とは比べられない程遅い為、出来ると考えたのだろう。
男が剣を構え、矢へと叩きつけた。そしてすり抜けた。
男が目を見開く。霞は馬鹿だと思った。どう見ても実体がねぇだろう。何故叩き折れると思った。仮にも兵士なんだからそんぐらい分かれよ。心の中で罵倒してる間にも矢は進み、当たり前のように男をその纏っている鎧ごと貫通する。というか通過する。男の周りにいた兵士も目を見開く。男はもっと目を見開く。少し面白かった。そして霞は暫く笑いを堪えなければならなくなった。逆に兵士達は大慌てだ。なんせ、霞の放った矢。それの直線上、最初の男の後ろにいた兵士。その全てが、男を含めて全員倒れたからだ。矢が最後尾まで貫通し、空気に溶けるように消えたと同時に、である。兵士達は大騒ぎ。実験が成功した霞は大喜び。という訳だ。
結局、それなりの規模だった人族の軍隊は、霞の矢の乱打に耐えきれず、半分程度が倒れた辺りで引き返して行った。
追い返すのが目的だったので、予定通りなのだが、霞はもっと撃ちたかったようで、少しムスッとしながら、報告の為に城へ引き返したのだった。
私如きに戦闘描写なんて荷が重いです。
なので先送りにします。
ホントにすみません。
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