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第32曲

「どうぞおかけくださいませ」


そう、ここまで案内してくれたエルフの女性が声をかけてきた。


案内されたのは個室。壁は相も変わらず石造りではあるが、置かれている調度品は豪奢な感じではなく品のある、それでいて素朴な感じのものが多い。


ホテルのソファはお貴族様が使っていそうな真っ赤な革張りのものであったが、こちらは何も染色していないのか、冒険者組合にふさわしいような本来の革の姿でソファを形どっていた。粗野な印象を与えつつ、なぜか高級感も同時に醸し出していて何の革製なのか気になるところだ。


「そちらはディランティランの皮を鞣して作ったソファでございます。お気に召しませんでしたか?」


あれ、そんなに気になる目してたのか?


まるで心を読んだかのような一言。一瞬ドキッとさせられてしまった。


「ディランティランですか……。なるほどなるほど」


ディランティランは『ニュージェネ』にもいたモンスターだ。狼腫の中の一種類であり、初心者のレベリングなどでよく使われる。群れで行動しており、一撃一撃の攻撃力は低くそれでいて体力が少ないため、レベリング用モンスターとまで言われていた雑魚敵だ。


しかし見かけによらないというかなんというか…。よく使われるのとは逆の意味でなのだが、“虚仮脅し”という言葉がぴったりの見た目で、体長は約4メートルほどあり常に口から涎を垂らしている。さらに目は充血していて口から除く牙の鋭さは現実にいたらすくみ上ってしまうだろうほど凶悪だ。


一言で言ってしまえば薬物常習者のような見た目をしている。常にハイになっているかのような見た目なのだ。


「出現情報を聞いた時は生きた心地がしませんでした…。なにせその時はメタリック――あぁ、最上級の冒険者たちが出払っていたものですから。この街にいる冒険者たちだけでは心もとなく、危険と判断したため私も参戦し、二刻半にも及ぶ激闘の末ようやく討伐することに成功したのです」


―――何を言っているのだろう。


俺の聞き間違いだろうか。生きた心地がしない?見た目は確かに凶悪ではあるが、戦闘に二刻半?確かケルートにさりげなく聞いたところによると一刻が一時間だったはずなので二時間半も戦っていたことになる。


あんな能無し狼に二時間半だと…。いや、恐らくだ。恐らく数が万単位だったに違いない。万単位でも二時間半もかかるかと言ったら、初心者でない限りありえないのだが、先ほど言っていた、最上級の冒険者たちがいなかったとのことなので多分成り立ての若造しかいなかったのだろう。


第一、この人はエルフだ。ヒトとは生きている時間が違う。下手したら俺由もレベルがあるかもしれないんだ。そう考えれば足手まといを守りながら戦っていたのだと推察できなくもない。


「それは…大変そうですね。やはり下を導く者というのは気苦労も多いのでしょうね」


「そうですね…。率先して戦わなければ士気が低下してしまいますし、お恥ずかしい話ではありますがその時の最大戦力が私のほか二名ほどしかおりませんでしたので、出張らなければ恐らく全滅していたでしょう」


やっぱりな。そうだと思ったんだ。万単位のディランティラン相手に三人でほかの者たちを守りながら戦うというのはさすがにきついだろう。


「そうですか…。やはり万単位のディランティランはさすがにきついですよね。しかも何かを守りながらの防衛線というのはやはりきついものです」


苦笑しながらそう伝えた。しかし、反応がないため相手の顔をうかがってみると、何言ってんだこいつみたいな顔をしていた。


え、何でそんな顔されなきゃいけないの?


「いえ…私たちが戦ったのは”一体”のディランティランですが…」

















「―――ぇ?」



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