第27曲
すみません、パソコンの扱いになれていなくてですね…。
テンポよく話を進めようと思って説明もほどほどにして物語を書いていたのですが、一度話がすべて消えてしまって書き直しているうちにこんな感じになってしまいました。
次こそはテンポよく……。
薄いカーテンの隙間から陽光が差し込む。
昇ったばかりの陽の光は力強くオレンジ色に輝いて見え、一日の始まりを香りとともに告げてくる。
夜のどこか張り詰めた冷たい雰囲気を浄化するかの如く、我が物顔で昇ってくる劫火の塊は始まりを告げるには少しふさわしくないのかもしれない。
あの座談会とは名ばかりの情報収集から一夜明け、俺は朝早くから外出の準備をしていた。
今は床にしゃがみ込みブーツのひもを結んでいる。
今までは半自動でやってくれていた装備も、設定画面を開けないので手でやるしかない。
昨日は混乱によって眠れそうになかったのでいろいろ実験していた。
まぁもともと眠る必要はないんだけど。
俺は亜人種というカテゴリーのため睡眠は普通必要になるのだが、【睡眠不要】という魔法が付与されている魔法具を装備しているため必要なくなっている。
魔法具とは文字の通り、魔法が付与されている道具のことだ。
このように生活便利用品もあれば、〈戦士〉などの魔力量が元から低い職業が使う戦闘用の魔法具まで色々ある。
使用するために使用者の魔力を糧にするようなものもあれば、俺が身に着けている【睡眠不要】の魔法具のように一度の付与で永久に効果を発する魔法具も存在する。
ちなみに原理までは知らない。
ゲームに原理を追い求める科学者基質の人間はまずあまりいないだろう。
まぁ魔法具の説明はこのくらいにするとして、実験によって色々なことがわかってきた。
まず先ほども言った通り設定画面が開けない。
そのためステータスの確認もできず、装備の変更も手作業になってくる。
そしてチャットも使えなくなっていた。
仲良くなったプレイヤーとはフレンド申請を送ることで、どこにいても文字や音でやり取りすることが出来るコミュニケーションツールであり、プレイヤーの間ではなくてはならないものだ。
普段はこれを使い待ち合わせなどを行うのだが、このような状況でそれが使えないのは致命的となりかねない。
この地球ではないどこか別の場所に転移させられたのは俺だけなのか、はたまたほかのプレイヤーも巻き込まれてしまったのか────。
ラスボスを倒した時のことを思い返すと、不可解なことばかりだったことを思い出せる。
あのおっさんと言い、その会話の内容と言い…。
もしほかのプレイヤーも転移させられているのならば、見つけ出すことが先決だろう。
元の世界に戻るためには協力が必要不可欠なのだから。
だがもしだ、もしも同じような異世界がほかにも多数存在するとしたら、この”デキラストリティア”に飛ばされた者は果たしてどれだけいるのか…。
昨日から考えていて、それでも考えないようにしていた不安要素が再び頭をよぎる。
嫌なこととは嬉しいことに比べて記憶に残りやすい。
頭から振り払おうとしても簡単に落ちすものではない。
まるで嵐の大海原に一人だけ船から投げ出されたような気分になる。
大荒れの海に曇天の空。
上からは押さえつけられるかのような大粒の雨。
もがいてももがいても深く深く沈んでいきそうになる。
陽の光が決して届かないであろう海の底は、手を伸ばすと先が見えなくなってしまうくらいに漆黒を模った闇だった。
しゃがみながら靴紐を握る手が無意識のうちに汗ばんでくる。
徐々に握る力も強くなっていくのか、手のひらが指圧のよって白くなっていた。
思考の渦にはまっている。
それからいくつの時が流れただろうか。
突然部屋がノックされて体が一瞬ビクッと跳ねる。
まるで金縛りにあっていたかのように動かなかった体が、呪縛から解き放たれたかのように制御を取り戻した。
「シギ様、お迎えに上がりました。起きていらっしゃいますでしょうか?」
どうやら考え事をしている間にずいぶん時間がたってしまったようだ。
ケルートが近づいてくるのにも気づかないほど飲まれてしまっていたらしい。
(ふぅ、だめだな。今はやるべきことをやらないと…)
そう喝を入れるものの、齢16,7の若者がそう簡単に切り替えられるものではないことも心のどこかで分かっていた。
「おはようございます、ケルートさん。今向かいますね!!」
しかし、今は目の前のことに集中しよう。
そう思い、再度靴紐を結ぶ手を忙しく動かし始める。
ただまぁブーツを結ぶのに慣れていなかったから結構時間かかっちゃったんだけど…。
ご読了いただきありがとうございます!
速くブラインドタッチが出来るようになりたいものですね…。
次回も読んでいただけると嬉しいです!!