第25曲
今日で終わり?
そんなまさかww
書くのが楽しくなってきたので行けるところまで行きますよ!!
『New Generation』には両手の指どころではなく、足の指を合わせても余りあるほどの〈職業〉が存在している。
これは多様性に富んでおり、人気の秘訣ともいえるだろう。
そしてこの〈職業〉には隠し要素が含まれており、これを発見していくことがプレイヤーの醍醐味と言っても過言ではない。
しかし、〈隠れ職業〉と呼ばれているこの隠し要素であるが、プレイヤー間で広まっているものはそう多くないのが実態だ。
それは決して一つも見つかっていないからではない。
〈隠れ職業〉とプレイヤー間で名前を付けられるくらいには有名な話だ。
一つも見つかっていなかった場合、まず第一に存在すら知られていないだろう。
ではなぜ、この話が広まるようになったのか。
それは、序盤中の序盤に登場するストーリーを進めるうえで必須ともいえるNPCとの会話でヒントが出てくる。
そのNPCが放つセリフはこうだ。
『はるか昔ではそなたたちのような者にこんなことを頼むなどどうかしていただろうが、今ではそれが最大戦力だ。申し訳ないが、わが娘を助けてほしい』
初めて会合する、ボスと戦う直前のこのセリフ。
初見だと明らかにこちらを煽っており、攫われた娘もろとも殺そうかとも思ってしまう。
実際、発売当初の初見が多くいた時代では『娘も一緒に屠ってみたww』というSNSにアップされた動画の視聴率がよかった。
しかしこのゲームでは、ストーリー上でゲーム内の昔話がたびたび出てくるため、ゲームオリジナルの歴史を知らない者はいない。
そして決まって昔話の出てくるストーリーはスキップできない。
ここまでくると様々な考察が立ち始め、色々と噂が出てくることも多くなった。
この言葉には何か意味がありそうだ、あそこで何か大切そうなことを言っているNPCがいた、このようなコメントを大量に見かける機会が徐々に増え始める。
しかし、まだ決定的ではない。
その意味を理解しているものはいない。
しかし今では〈隠れ職業〉は存在するのが一般的という。
その正体が明かされたのは一人のプレイヤーによるものだ。
そのプレイヤーはPKだった。
モンスターではなく、プレイヤーを優先して狩っていくプレイヤーである。
それもかなり変わった狩猟方法であり、闇属性の中でも必殺魔法と呼ばれる魔法を好んで使っていた。
当たれば必殺、されど当たらず。
このゲームでは必殺魔法とはこれが常識だ。
命中率が悪く、さらに対策をしていないプレイヤーなどいない。
初めのころはモンスターにもある程度効くが、中盤ほどからは抵抗され効かなくなっていくためPKでなくとも使わない死蔵魔法だ。
これをモンスターではなくプレイヤーへ使うという狂人が現れた。
このニュースはプレイヤーの間で瞬く間に広がっていった。
しかし、たとえそんな狂人が現れたところで返り討ちに出来たのならば仲間内での談笑程度で終わるだろう。
広まるからには、広まる理由というものがある。
そう、”当たらない魔法”が”当たる”のだ。
それも何発も放たれたわけではなく一発で。
殺されたプレイヤーがある日を境に大量に出たのだ。
そのプレイヤーたちが対策をしていないんじゃないか。
そのような声もその数日後にはフェードアウトする。
ランキング上位に名を連ねる有名なプレイヤーが殺されたことによって。
上位プレイヤーが必須ともいえる対策をしていないわけがない。
しかもこのプレイヤーは上位に名を連ねているだけあってレベルはゲーム内でも確実に上位であるだろう。
この『New Generation』では決してレベル差が覆らないようにできている。
それがモンスターを倒さず、PKだけを繰り返しているプレイヤーにレベルで劣るはずがない。
ゲーム内の掲示板は一時期この話でもちきりだった。
毎朝毎夜、連日目撃情報が相次ぐこととなる。
GMにはチートツールの使用疑惑を持ちかけようにも、連絡先は公開されていないため頼ることが出来ない。
今まで頑張って集めた装備品などがチーターに負けてしまうなんて……。
どのプレイヤーもPK禁止エリアである町から一歩も外に出れない状況が続いた。
しかし、この状況をよく思わなかった一人のプレイヤーが更なるビッグニュースを速達することとなる。
そして、このニュースにより〈隠れ職業〉というものの存在が広まっていく。
名乗りを上げたプレイヤーは斥候系の職業に特化したスキルやステータス構成をしていた。
斥候職には相手のステータスを盗み見るスキルがあり、レベルが高ければ高いほど成功率は上がり、詳細な情報を看破できるようになる。
この斥候職のプレイヤーは見事に標的と会合し、そして死んだ。
世界を震撼させるほどの情報と引き換えに。
そのプレイヤーが見たステータスは異常ではない。
しかし職業、およびスキルはその限りではなかった。
そのプレイヤーの職業は〈ハデス〉。
スキルはたった一つ、【冥府への落とし穴】。
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宿へ帰ってきた。
相も変わらず豪華絢爛な内装は、追い付かない頭の中とは違って調度品などが品よく整理されておかれている。
渋い色をした木のひじ掛けに、赤い布地でできたクッションが備え付けられている一人がけのソファに腰を掛けると、俺の体が深く深く沈み込む。
お尻を優しく、それでいてかすかな反発を与えてくれるソファは現実世界では決して座ることが出来ないものだ。
背もたれいっぱいに体重をかけつつ、顔を上に向けて何かの模様が描かれた天井へ視線を移す。
こうやって一人で思考の海へ潜っていくと本当に深海に到達したのではないかと錯覚してしまうほどに眩暈がしてきた。
なんとなくはわかっていた。
明らかにNPCとは思えないほど表情豊かな人々、この部屋もこの街にくるまでにいた森でも感じた匂い。
聞いたことのない魔法詠唱やユーザーからの批判間違いなしの差別盛りだくさんなイベント。
今日体験してきた以上の出来事は明らかに今までのゲームとは何かが違うことを頭の片隅で把握していたつもりだった。
しかし、実際に話を聞くと予想を大幅に超過しており一瞬にして思考回路がオーバーヒートを起こした。
もはや話の八割ほどは理解できていない。
色々質問をしたかったが何から質問すればいいかすらわからなかったため、一度一人きりにしてもらおうとケルートは現在部屋の扉の前で待機してもらっている。
「すーーっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
深呼吸とも大きなため息ともとれるような呼吸をし、いったん心の中を落ち着かせようと試みた。
だがしかし、一向に心に打たれた楔は緩みそうにない。
そんな風に思いながら、頭の片隅では人はでかい衝撃を受けると騒ぎ立てることすらしないのかなんて馬鹿なことも考えていた。
もう何も考えたくない。
このまま目をつぶって寝て起きたら家の天井をであることをついつい幻想してしまう。
しかしそうも言ってられない。
ここで考えることをやめてしまったらおそらく取り返しのつかないことになってしまいそうな予感を覚える。
「ふーっ。よしっ!がんばれ俺!!」
そう自分自身に声をかけ激を飛ばす。
グッとひじ掛けを手のひらで押し付け、体を持ち上げるようにしてソファから身を起こして扉のほうへ向かう。
ここからは一つも情報を聞き逃すことは許されない。
頭の中で質問内容を考えながら、厳しい目つきで扉へと向かっていった─────。
ご読了いただきありがとうございます!
毎度毎度ごめんなさい。
最近あとがきでこれを書いているからか、評価が上がっていてとてもうれしいのですが……。
知っていますか?
ブックマークしてくださっている人数と星を押してくださった人数が見れることを…。
まだいますねっ!星を押していない方々!!
もうどうか、どうか、よろしくお願いいたします…。
何でもしますから(何でもするとは言ってない)。