第22曲
本格的なバトルパートです!!
バトルの描写は書くのが難しいですねぇ。
正直言って苦手なのですが、ここで書かなければいつまでたっても苦手なままでしょう。
頑張りますっ!
俺の目には魔力の動き、そのすべてが見えている。
この目はモンスターからのドロップ品だ。
ゲームをしていた時にたまたま遭遇した裏ボス的な奴から入手したメモリアルアイテムである。
もともとはエルフ特有のエメラルドのような翡翠眼だったのだが、移植をしたことによって水晶に金箔をこれでもかと散りばめたような不思議な輝きをしている。
そして今この目が、レーブレの手に先ほどよりも爆発的に多く魔力が集まっていることを知らせてくれていた。
しかし魔力操作が下手なのか、時間をかけている割に魔力の集まりが悪い。
いくらNPCとはいえこれはプレイヤーをなめすぎではないか…。
俺も迎撃なり防御なりとしてやりたいが、この場で魔力と魔力がぶつかれば地獄絵図となることは決して避けられない。
となると、取れる手段は一つ--。
「『紅き法に則り我が命ず。魔力を対価とし現世へ顕現せよ。紅き宝玉は敵を打ち抜き、破壊する!コラルドッ!!』」
「っ!?」
(聞いたことのない詠唱だ!)
詠唱もそうだが魔法自体も聞いたことがなかった。
まず、プレイヤーでこっぱずかしい詠唱をする人はいない。
魔法系統の職業をとっている人は必ずと言っていいほど【無詠唱】のスキルを保有しているからだ。
しかし、例え久々に詠唱しているのを聞いたとしてもこんな長ったらしい詠唱があったらもっと有名になっているはずだ。
だがプレイヤー間でそのような情報が出回っているのは聞いたことがない。
どのような魔法が来るのかおっかなびっくりしているが、いまだに迎撃する姿勢は見せない。
そんな俺の態度を見てレーブレは嘲笑を浮かべる。
(クックックッ…。俺の強力な魔法を見て怖じ気づいたか。その見開いた眼を見ればわかるぞ、恐怖しているのだろう…。しかしもう遅い。魔法はすでにこの世に顕現してしまったのだからなっ!)
レーブレは自信ありげな顔のまま、その両の手のひらに灯る小さな太陽で目の前の相手を木っ端微塵にする姿を幻想する。
俺に逆らうからこうなるのだ、その気持ちの代弁者は手から放たれるのを今か今かと待っている気がした。
「くらえぇぇぇぇぇぇ!!!」
そういって前に突き出した両手から放たれたのはボウリング玉ほどの火を纏ったボールだった。
レーブレの魔力をもとにこの世へ生み出された魔球はすぐさま両手から離れ、突き出されたての直線状にいる俺の元へ走り出す。
スピードは速い。
プロ野球選手の剛腕から繰り出されるストレートくらいの速さだろうか。
俺は棒立ちで反応できない。
まっすぐに向かってくるこの火球になすすべがない。
周りの人間はそうとらえていることだろう。
ものすごいスピードで迫りくる火球。
もう駄目だろう、そう周りの人間は思い中にはこれから起こるであろう惨状に目を背ける者もいた。
もう火球は俺の真ん前。
あと数センチで当たってしまう--。
と思ったその瞬間、まるで元からこの世には火球など存在していなかったかのように一瞬でその姿が掻き消えた。
皆が等しく焦げ臭い臭いを嗅いだであろう。
人族をかばうかのような姿勢を見せてくれた、心優しき旅のエルフは、強大な魔法によって焼死体となってしまったのだから。
しかし実際には、それが幻臭であるということは嗅覚ではなく視覚が伝えている。
火球などもとよりここにはなかったのだと、そう言わんばかりの現象が起こったのだ。
普通、対象に当たったらドーム状に燃え広がり、小爆発を起こすはずのこの魔法。
それが煙一つ残さずに消えてしまった。
「なっ……。い、いったい、なにが…」
目の前で起こった現実を受け入れられないといった様子を燃せるレーブレ。
いや、それは少し違うかもしれない。
レーブレだけではないのだ。
周りにいたこの酒場の客たちでさえも、今起こったことへの処理が追い付いていない。
「な、なにをした?俺のま、魔法は発動したはず…」
「えぇ、発動しました。それに偽りはありません」
そう言って俺は歩き出す。
いまだ呆然と言った様子のレーブレに向かって--。
「き、貴様っ!何をしたっ!?魔法かっ!?」
口から胞子をまき散らしながら、ゆっくりと向かってくる俺に対して吠える。
しかし、情報というものはとても大切だ。
一つ隠し技があるだけで戦況というものはひっくり返ってしまうのだから。
微笑みながら向かってくる俺は恐怖なのだろう。
レーブレの顔は徐々にこわばっていき、先ほどの俺とは比べ物にならないほど目を見開いている。
口は半開きで、先ほど飛ばしきれなかった胞子が端にたまっているのがここからでも確認できるのは少々滑稽だ。
「種明かしはしないからマジックというものは面白いのです.私は今日、ここで食事をとります。お引き取りを」
そう、微笑みながら一メートルほど間隔をあけて伝える。
戦意は完全に失せただろう。
まぁ、あったところでこいつが何人来ようが蹴散らせる自信はあるが…。
「っ!?ググッ…グ…。許さん、許さんぞっ!!貴様、ただで済むとは思うなっ!必ずこの報いは受けてもらう。絶対にだっ!!!」
「はい、記憶力にはわりかし自信があるのでご心配には及びません。では、さようなら。レーブレ2等局員殿…」
「うっ!く…そ……。いくぞっ!マグリット!!急いで局庁へ報告だっ!同族だからと言って容赦はせん。急ぐぞ!!」
悔しそうに歯を食いしばっていたレーブレだが、こちらもお前のことは覚えておくぞと遠回しに伝えると一瞬臆した顔を見せ、さらにそのビビってしまった自分に腹を立てたのか親の仇を見るかのような形相で仲間を呼びに店を後にしてしまった。
唖然として事の成り行きを傍から見ていたマグリットは、名前を呼ばれたことで見事に再起動を果たし、すでに立ち去ろうとしていたレーブレの後を駆け足でついていく。
こうして三度静寂を取り戻した--。
そう思っていたのだが……。
ご読了いただきありがとうございます!
前説は本当は複線回収のために書いているのですが、今回のは長すぎて途中で諦めちゃったので多分回収出来ないですww
続きが気になる!面白かった!
そう思っていただけたら嬉しいです。
よろしければ下の星を……。
毎度毎度ごめんなさい。