間奏4
サイドストーリーはいったん終わり、また明日から詩織の話に戻ります!
続きが気になってくださったらブックマークしてくださるとうれしいです!!
では、お楽しみください。
あはははははは!!
そこかしこから機嫌のよさそうなざわめきが伝わってくる。
みんなお酒を飲んで気分がいいのだろう。
まあ、だからと言って本当に酔うわけではないのだが…。
バッドステータスとして酩酊状態というのは存在するが、体がうまく動かせなかったり、一部機能に制限が付くだけで思考回路が狂うことはない。
ということは、この喧噪自体はこの場の盛り上がり自体ということだ。
そんな中でため息をついているあたしは間違いなく異質である。
「ふぅ~。よし、和子、みんなに混ざろっか!」
あたしは気持ちを切り替えて、この場の雰囲気に身を預けることにした。
いつまでも引きずるわけにはいかない。
あたしはそんなメンヘラ女ではないのだ。
「うんうん!それでこそ朱音だよっ!いこいこ!!」
そう言って和子はあたしの手を握り、ひときわ盛り上がっている集団の中へ手を引っ張りながらいざなってくれた。
(あのバカには明日学校でしっかりと文句言ってやる…)
そんな恋慕による小さなかがり火を胸の奥にしまい込み、ほかの人たちと体育祭の思い出を語っていく。
楽しい会なのだから、来ない人のことを待ち続けるわけにはいかない。
それこそ”野暮”というものだろう…。
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パンパンっ!!
あれからどれだけ話し込んだだろうか。
アバターの視界の左上にある現実世界の時刻を表す時計は、この会がお開きになることを淡々と告げていた。
「みんなちゅうもーく!」
手を叩いてみんなの視線を独り占めにしたのはまたしても航平だ。
おそらく、言葉でもこの会の解散を告げるのだろう。
「今日は集まってくれてありがとなっ!すげぇ楽しかったけど、明日も学校あるしここまでにしよう。ということで…かいさーーん!!」
そう言ってこの会はお開きとなる……。
はずだった。
一瞬視界がブラックアウト。
その一瞬の間で何が起こったか把握できた人はいないだろう。
なにせ、次に視界がはっきりしたときにはどこかの広間のような空間にいたのだから。
柔らかな絨毯の上に、先ほどと同じメンツがへたり込んでいる。
しかし、周囲は違う。
周りは先ほどの粗野なつくりの酒場とは明らかに違う。
そこは、どこかの物語で出てきそうなお城の中だった。
床には先ほども言った通り細かな刺繍が施された赤い絨毯が敷かれており、絨毯からはみ出た床は花崗岩のような光沢のある石が継ぎ目なく伸びている。
横にはこれまた精巧な細工が施されている石の柱が伸びており、この広間が永遠に続くのではと思わせるほど縦にきれいに整列していた。
しかし、どれもあたしたちの目を引くことはないだろう。
なにせ、あたしたちの目線の先、直線上には背もたれが天井に届くのではないかと思われるほど高く、いたるところに金細工の施された赤いクッションがついている椅子に座った人物に目を奪われてしまっているのだから……。
ご読了いただきありがとうございます!
よければ下にある星をぽちっとしてくれても……。