間奏1
遅くなり申し訳ありません!!!
今日から一週間毎日投稿頑張ってみます!!
もし続けられそうだったら続けるので応援してくれると嬉しいです!!
ここは『ニュージェネ』内にある星の瞬き亭という酒場の中。
今日この日、この酒場ではプレイヤーの団体が貸し切りで食事をとっていた。
内装は海賊の映画のセットで登場しそうな、基本的に木でできたつくりをしている。
この日は立食形式のため椅子はないが普段は樽でできた椅子に、大木の丸太を大雑把にも机として使用しており、天井からはランタンの形をした明かりがイカの足のように所狭しとぶら下がっていて部屋全体を明るく照らしている。
オレンジ色に部屋を染めるその明かりは木でできた部屋と見事に調和しており、とても居心地の良い空間となっていた。
「えー、では!Koこと、吉本航平が乾杯の音頭をらせてもらいまーす。集まってくれてありがと!カンパーイッ!!」
『カンパーイ!!!!』
皆が航平の音頭にそろって木でできたジョッキを持ち上げ、これから始まる打ち上げへのボルテージを上げていく。
乾杯前から盛り上がっていた空気は加速度的に熱気をまとい、天井知らずとでもいうように騒ぎ始めた。
ちなみにKoは航平の『ニュージェネ』でのアバターの名前だ。
そんなことは置いといて、誰もかれもが好き好きにしゃべりつつも、この間の体育祭での思い出に浸っている人が大半であるのがうかがえる。
それもそのはず。
このクラスは同学年のみならず、上級生・下級生含めたすべてのクラスに大差をつけて一位に輝いたからだ。
種目自体は親世代、並びにその上の世代から大きく変わることはない。
リレーや玉入れ、綱引きなどの一般的な種目がほとんどであり、それぞれにポイントが割り振られていてそのポイントの総獲得数によって勝敗が決まる。
世間一般的な体育祭だが、一日を使って行われるためかなり大規模になり、在校生のほとんどが楽しみにしている数少ないイベントの一つになっている。
もちろんこのクラスもかなり盛り上がり、全員が一丸となって優勝を狙いに行った。
その結果がこれだ。
他クラス、他学年を圧倒しての優勝。
しかし、なにもこのクラスの生徒が全員そろって運動神経が抜群なわけじゃない。
中にはそれこそ運動が苦手としている生徒もいる。
ではなぜ他を圧倒できたのか。
それは、乾杯の音頭を取っていた航平の運動神経が馬鹿がつくほど優れているのだ。
航平は特に部活に所属しているわけではないのにもかかわらず、様々な部活で活躍している話をよく聞く。
これは、いろいろな部活が助っ人として航平に助力を頼んでいるからだ。
球技、武道どんとこい。
航平は少し練習しただけで並み以上の身のこなしができる。
サッカー、野球などよく聞く部活だけでなく、剣道や果てには体操までいい結果を残したと聞いたことがある。
この運動神経がイカれているこの男の子がいれば、そのあたりにいる有象無象などは相手にならないだろう。
ただ、一応水泳はできないらしいのだが…。
しかしである。
たった一人の力で大差をつけて勝てるほど航平も人を捨ててはいない。
そこまでいったらもはや人間として見れない。
そう、ほかにも大差をつけることが出来た要因があるのだ。
それは、功労者であるにもかかわらず、このクラスでただ一人顔を出していない人物である。
(あいつ…ホントに来なかった…)
「はぁ~」
「何ため息ついてんだ、朱音」
落ち込んでいるのか、あのとき無理に呼ばなかったことを後悔しているのか、どっちとも取れる顔をしていたあたしに声をかけてきたのは何であろう、半超人の航平だ。
現実世界でもそれなりに厳ついが、この世界の見た目はその比ではない。
燃えるような深紅の髪を後ろになでつけ、褐色肌で覆われた腕はスレンダーな女性の胴体くらいはありそうだ。
黒いレザーベストにパンツも真っ黒なレザーパンツをはき、背中には髪色に合わせたのか星をちりばめた輝きをしている赤い大剣を背負っている。
まぁこんな見た目だが中身は現実世界のままなので、さっきまでは人気者らしくいろんな人に囲まれていた。
あたしが誰とも話さずに暗い顔をしていたのに気づいて話しかけに来たんだろう。
「いや、べつになんでもないよ…」
「…あぁ、詩織かぁ。結局こなかったな、あの野郎」
つい素っ気なく返してしまったのだが、その態度ですぐ気づいたのだろう。
腹立つことに半笑いですぐに返事が返ってきた。
「何にも言ってないじゃん!別に気にしてないってっ!!」
「またまたぁ、そんなプリプリしててよく言うぜ。でもま、今回の主役がいないってのはなんかなぁとは思うよな」
そうなのだ。
今回の体育祭は航平ともう一人、詩織も一役買っていたのだ。
運動神経自体はさすがに公平に勝てないだろうが、それでも詩織も悪いわけではない。
悪いどころか、そもそも航平と比べることがおかしいだけだ。
しかもこの体育祭で提供したのは運動能力だけでなく、その柔軟な思考もクラスのために使ってくれた。
勉強面での成績は圧倒的に私のほうがいいが、それはあいつが本気になっていないだけで自頭は確実にあっちのほうがいいだろう。
そんな詩織が、運動が苦手な人のために種目やクラス対抗リレーの走順などの作戦を立ててくれた。
この二人のおかげで、今回の体育祭でみんながクラスに貢献できたといえる。
だが、この打ち上げの場に航平はいても詩織はいない。
「はぁ…」
ついつい、ため息が出るのは避けられなかった。
読了いただきありがとうございます!
気に入っていただけたらブックマークしてくれると嬉しいです!!
感想もよかったらしてくれても………。