第2曲
だいぶお待たせしました。
2投稿目です。
こんなクソ投稿にブックマークがついていて泣きそうでした。
読んでくれた方あざます!
夢というものを見たことない人はこの世には存在しないと思う。
その夢というものは実は、眠りが浅いときに見ることが多いということをご存知だろうか。
夢には色々な種類があると言われているが、人類が進歩し生み出した半覚醒時における意識没入型の機器は、数種類ある夢の中でも『明晰夢』を基にして作られている。
この『明晰夢』とは簡単に言ってしまえば、眠っている本人が夢だと自覚しながらコントロールすることのできる夢のことだ。
この『明晰夢』であるが、実は脳の半覚醒時に見るというのが理由だとされており、これに着目し開発されたのが上記の機器であった。
この機器は『スリパクター』と呼ばれていて、ヘルメットに首輪が繋がったような形をしていおり、それぞれに役目が与えられている。
まずヘルメットの部分には、シナプス伝導により発生する微弱な電流を読み取り脳の活動を把握する役割と、『明晰夢』を見るにあたって必要である前頭葉の覚醒促進の2つの役割がある。
そして首輪の部分の説明なのだがまず、『明晰夢』は自分自身でコントロールができるというのは先ほど述べたと思う。
このことで危険視されていたのが身体への影響であるが、意識的に夢をコントロールすることによって身体が動いて怪我をしてしまったり、ノーシーボ効果という思い込みや妄想による身体的悪影響を防ぐために付いているのが首輪の部分である。
これは脊椎を流れる電流を頚椎の部分でキャッチし、流れを塞き止める役割を果たしている。
これにより、シナプス伝導が起こらず身体が動くのを阻止したり、ノーシーボ効果を防ぐ効果があると言われているが医学的根拠は今のところ何一つとしてない。
-----------
やっと6限が終わり、俺たちのフリーダム(放課後)が訪れた。
ほとんどの授業は寝るか『ニュージェネ』について考えていた俺だが、放課後の帰宅時には100%『ニュージェネ』へと切り替わる。
「詩織、帰るでしょ?一緒に帰ろ!」
野生の隣人の『中冨 朱音』があらわれた。
(くそ、今日は帰って攻略練ろうと思ってたのに…)
「今日早く帰りたいんだけど…。それでもいいなら」
「ん?なんか用事でもあった?」
「いや、まぁ母さんにおつかいを……」
そう目を逸らしつつ答えたが、「どーせ『ニュージェネ』じゃん」と、1+1よりも簡単だという顔であっさりバレた。
別にバレても気にしないのでいいんだが。
「まぁそーなんだけどね、今いいところだから早く帰りたいんだよ」
「ほんっと『ニュージェネ』好きだよね、詩織は。でも誰とも一緒にやらないんでしょ?航平がこの間愚痴ってたよ」
あの野郎、顔が広いんだから愚痴とか言うのやめろよ…。
「詩織さ、今度のクラス会の話聞いた?『ニュージェネ』の星の瞬き亭でやるらしいよ。まさか…それも来ないの?」
「悩んでるんだよなぁ。まぁ行けたら行くよ」
「絶対来ないじゃん……」
今も昔も「行けたら行く」という返答はほぼ来ないと思われているらしい。
「でも詩織来ないと面白くないよぉ。ねぇ、ホントに来ないの?」
(なんでこんなにしつこいんだ、どいつもこいつも…)
「行けたら行くって。忙しくなかったら行くから。とりあえずもう帰るよ?」
「えーー、もー絶対来ないじゃーん!」
そう朱音にグチグチと突っ込まれながら俺は急ぎ足で帰宅した。
もちろん朱音も「早いよ歩くの…」とこれまたグチグチ言いながらついてきたが…。
「ただいま」
誰もいない二階建ての一軒家に到着すると、俺は階段を上り自分の部屋へ直行する。
階段を上ってすぐの部屋が俺の部屋だ。
隣には妹の部屋があり、下の階に父さんと母さんの部屋がある。
俺の部屋は勉強机にベッドと本棚といった殺風景でシンプルな家具しか置いていない。
しかし、今の時代はこれが主流だ。
なぜなら全ては神器と呼ばれる『スリパクター』があるから。
この『スリパクター』は、半覚醒状態で様々な活動を行え、例えば『HAS MMO RPG』であり他にも仕事や旅行など活動内容は多岐に渡るが、ほぼ娯楽目的で使われている。
この半覚醒状態というのは言ってしまえば睡眠と一緒だ。
一緒だと言っても俺もよくわかってないが、発売している会社によると使っている間も睡眠と同じ効果が得られると謳っているため、現代では持っていない人間はほとんど存在しないだろう。
ちなみに説明書には、【強制的に脳を半覚醒状態へ移行し、尚意識的に活動することができます。また、人工衛星による電波をキャッチすることができるため、無線によって世界中と繋がることができます。さぁ今こそ、人生の1/3を無駄のないように使いましょう。】と書いてある。
まぁこれは最初の方に載っている簡潔に書かれた説明だからこんなものだが、言ってることは何となくわかるだろう。
そして人生の1/3というのは、人生における睡眠時間の占める割合について言っているらしい。
昔の人はこんなにも無為な時間を過ごしていたんだと思うと恐怖で鳥肌が立つ。
まぁ昔の人は昔の人で、現代人の平均睡眠時間を聞いたら鳥肌が立つのかもしれないが…。
まぁそんなことは置いておいて、この説明を読んでわかる通り睡眠中にまで勉強や仕事をしたいと思う人は少ないと思う。
が、高いレベルの高校や大学を狙っていたり、会社が『スリパクター』による仕事を推奨しているところもあると聞くので、いないことはないのだろう。
ここで突然の豆知識だが、『スリパクター』というのはスリープとアクティブの造語らしい(作者がボキャ貧)。
少し前置きが長くなってしまったが、とりあえずはこの家具の少なさは今の時代では普通のことだ。
俺はベッドに入り『スリパクター』を装着し、電源を入れつつ横になった。
やっと『ニュージェネ』ができる。
俺は発売日に、長蛇の列に前々日から並ぶことによってほぼ先頭を確保したことでやっとこさ手に入れた最古参である。
そんな『ニュージェネ』愛を心の中で抱いていると、段々と意識が薄れていき………。
---------
【ゲームの起動に成功しました。『New Generation』をお楽しみください。】
そう画面表示があった次の瞬間、俺はホテルのスイートルームのような豪奢な部屋のベッドの中にいた。
真っ赤な絨毯が部屋全体に敷いてあり、白い下地の内装に金による装飾が施され、高そうなツボや絵画が所々に散りばめられている。
また部屋はとてつもなく広く、正直寝室だけでかくれんぼが成立する遊びに昇華するんじゃないかと思えるほど広いと言えば伝わるだろうか。
そしてベッド、この世のものとは思えないほどフカフカなマットレスに高級な羽をふんだんに使用した掛布団。
さらに頭の全てを優しく包み込むようなこれまたフカフカな枕。
おそらく現実世界で泊まろうと思ったらものすごく金がかかるであろうことは間違いない。
そんな全てが高級尽くめなベッドに後を引かれながら立ち上がり俺は歩き出すと、チラッと横目でベッドの近くに置いてある鏡を見た。
そこには、銀色の細い紡糸のような肩下あたりの綺麗な髪に金色の瞳を持った切れ長の目、高い鼻に薄くも印象的な口を持ち、さらにダイヤモンドダストのようにきめ細かい真っ白な肌をした男性。
しかし中でも一際目を引く長く尖った耳。
間違いなくイケメンである容姿を持った俺は、何を隠そう半妖精族の『エルフ』である。
このゲームでは豊富な職業の他にもそれに負けないくらいの種族が存在する。
初期職業の選択によって初期パラメータは変化するが、もちろんのこと種族でもパラメータは変化する。
そのため、種族とパラメータは上手く合致するものを選ばなければならなく、かなり長時間悩むというのは笑い話のタネとなることが多いほどだ。
俺は始め種族は『エルフ』を選び、職業は後衛の『魔術師』か『エルフ』だけがなれる初期職業の『森の民』という中衛にしようかと思っていた。
『エルフ』は初期ステータス的にMP、まぁ魔法を使うためのエネルギーが高く、HPが低い。また器用さと敏捷性、魔法攻撃力と魔法防御力が高く、物理攻撃力と物理防御力は低く設定されているため、絶対に使おうと思っていた。
なぜなら上にもある通りMPと魔法攻撃力が高いから。
やはりファンタジーといえば魔法であり、これを多く使うにはMPが必要となる。
だから『エルフ』は決定事項だったのだ。
そして『魔術師』は読んで字のごとく魔法が得意な職業であり、特殊職の『森の民』も精霊魔法というこれまた特殊な魔法を使うことができる。
俺はとてつもなく悩んだ。
それはもう頭がパンクするほど悩みに悩んだ。
正直これだけで朝が来るのではないかと思うほど悩んだ。
しかし結果的に選んだのは『旅芸人』。
説明書に目を通した時、1番派生し、成長する先が多い職業がコレであったため、ついつい好奇心に勝てなくなってしまったのだった。
ここで問題になるのが、このゲームには職業がたくさんあるくせに転職機能が存在しないことだ。
そのため他の職業を試したいのならサブ垢を作るか、はたまた初期からやり直すかなどちらかしかない。
え?俺は初期なんだからやり直せって?
ここでさらに大問題が発生するんだ。
このゲームはアバターがランダムで作られる。
そのため全く同じ容姿を持ったキャラは存在しない。
そして基本的に美男美女としてキャラ構成されるのだが、乱数的に稀にレアアバターをゲットできる。
例えば髪色、ゲーム内でも髪色を変更するアイテムは存在するが、中には手に入らない色なんかが存在する。
いい例が虹色で、これはアイテムでは変更することができず、ゲーム内では1人しか存在できない。
そして今現在このゲームには、超有名な虹色の髪を持つアバターがいるため、もうその髪色を持つアバターをゲットすることすら不可能となっている。
そして俺の銀髪もまた然り。
これもオンリーワンな髪色だ。
そしてこの整い過ぎたとしか言いようのない容姿。
さすがにこのゲーム内でもこれほど完璧な容姿を持ったアバターは他に2、3人しかいないだろう。
そう、このアバターをゲットしてしまったがために俺はゲームをやり直せなくなってしまった。
ただ、『旅芸人』という職業も魔法は使えるため「まぁいっか」程度に始めは考えていた。
全てのパラメータが平均的で、なにか突出したものがあるわけではない。
しかしオールマイティに物事をこなすことができる器用貧乏、これが『旅芸人』だ。
これには未知の可能性が秘められている。
『ニュージェネ』には説明書で書かれているものとはほかに、シークレット・ジョブと呼ばれる隠し職業が存在する。
職業によって種類はバラバラだが、少なくともかなり難易度の高い条件が設定されているのは間違いないだろう。
その未知の可能性を無限に秘めた『旅芸人』。
しかしその期待とは裏腹に、俺はソロでプレイすることを余儀なくされてしまったのだった。
そう、『吟遊詩人』という底辺職に就くことによって…。
感想くれるとやる気出ます。
まじで出ます。
1日1投稿できます、多分…。