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第15曲

すみません少し遅くなりました!


前回の話も途中で投稿されてしまったので、ぜひそちらを読んでからお越し下さい!

「陛下、お耳に入れたいことが…」


毅然とした偉丈夫のエルフが、高そうな食材がふんだんに使われた料理を馳走になっている、厳格な雰囲気を纏った若いエルフに話しかける。


「なんだ?食事中にもしなければならない話か?」


若いエルフとは言ったが、これには少々誤解を招く表現が混じっている。

“若く見える”と言うのが恐らく正しい表現だろう。


「はい、至急お知らせしたいことがございまして…」


偉丈夫のエルフは、陛下と呼んだエルフに依然話しかけ続ける。


食事中に話しかけられ少し不機嫌になったであろうエルフは、渋々と言った趣で話しかけてきた方へ顔を向ける。


「なんだキール、これでつまらないことだったら許さんぞ」


キールと呼ばれた偉丈夫のエルフは、そのような脅しにも顔色一つ変えない。


陛下と呼ばれるからには気を損ねた場合、それなりのことはされるはずなのだが。


「はっ、それはあり得ないと申し上げさせていただきます」


このキールというエルフの男性は、これから話すと内容についてかなりの自信があるようだ。


この言葉を聞いた陛下と呼ばれた若く見えるエルフの男性は、不思議そうに片眉を吊り上げ、相手が話し始めるのを待っている。


「お話というのが、“揺り籠”についてでございます」


先ほどの不思議そうな顔から一変、“揺り籠”というワードを聞いた瞬間に目が見開かれ、驚愕の顔へと移行した。


しかしそれは一瞬のことであり、すぐにまた澄ました顔をして顎をしゃくり、続きを話すように促す。


「揺り返しが起こったようで、また異界からこちらの世界へ落とされたとの報告がありました」


この話を聞いた陛下と呼ばれたエルフは、口が頬まで裂けるのではないかと思うほど深く嗤った。

歯をギラギラと瞬かせ、獲物を狙う肉食獣のような顔だ。


「やっと来たか…。あれから150年、また私はより高みに近づける。あぁ、今回はどんな鳴き声を上げてくれるんだ…」


暗い笑みで悦びを呟いていたエルフに、偉丈夫のエルフ、キールが水を差す。


「陛下、この話にはまだ続きがございまして…。どうやら、今回揺り落とされた“オーダー”たちは以前とは違うようでして…」


「それはどういう意味だ?」


「はっ。テドラの報告によりますと、『俺でも勝てない』とのことでした。テドラでも勝てないとなると、失礼ながら陛下と言えども返り討ちに遭う可能性を危惧致します」


「ほう、テドラが勝てないから俺にも勝てないと…。キール、お前覚悟があっての言葉だな?」


若く見えるエルフは、先ほどの残酷な笑みとは打って変わって、一切の表情が読めない、能面のような顔をしていた。


キールと呼ばれるエルフの言葉に憤慨しており、一人称も変わってしまっている。


しかし、偉丈夫のエルフも表情は読み取れない。

というより、最初からなにも表情に変化がないだけなんだが…。


「はい、この国には陛下が必要でございます。故に、僅かでも負ける可能性のある“狩り”は家臣の立場から止めさせていただきます」


「そんな口八丁でこの俺が納得するとでも?……まぁ良い。揺り籠が起こったこの時にお前を失うわけにはいかない。ふんっ、揺り籠に感謝するんだな…」


「はっ。ありがたき幸せにございます」


陛下と呼ばれたエルフは窓の外へと目を向ける。

どこを見て、何を考えているのか……。


それがわかるのはまだ先のお話。


--------


レファから鍵を受け取り、とりあえず部屋に入る。

レファは鍵を渡した後、ごゆっくりどうぞという文言を残し立ち去っていた。


この部屋を見た時、子供の頃に親父に絶滅危惧種のカブトムシを見せてもらったときのような感動を味わった。


それだけではなく、入ったらよくわかるがとても良い匂いがする。

ゲーム上でも確かに臭いが再現されている部分もあるが、それはあくまでも“臭い”であって“匂い”ではない。


こんな芳しい匂いなど、それも宿屋からすることなどまず今までなかった。

大事な何かを見落としてる気分は、あの強制転移後からずっとある。


心に重りがついているように、ずっと気分が浮かばない。


しかし、それを察してかわからないがケルートが後ろから声をかけてきた。


「シギ様、この後はお食事になさいますか?それとも湯浴みをなさいますか?」


な、なんだこの「それともワ・タ・シ♡」みたいな殺し文句は…。

そこまで言ってはいないにしても気色が悪すぎる。


心の重りがとれるどころかさらに加重されたようだ。


「え、ええと…それじゃあお風呂にでも入りましょうか」


今はとてもじゃないが食事を取る気分にはなれない。

とりあえず風呂でも入ってさっぱりしてきたいところだった。


「かしこまりました!それでは木桶と天幕、それと湯浴み用の魔導石をお持ちいたします!少々お待ち下さい!!」


そう言った直後、ものすごいスピードで扉から出て行き、あっという間に姿が見えなくなった。


「え…どういうこと……」


もはや唖然とするしかないこの状況。

何が起こったのか、一瞬過ぎてほとんど理解できない。


まずケルートの言っている意味がいまいちわからない。

普通の宿屋ならば部屋に備え付けの浴槽などがあるはずだ。


木桶とはなんだ、天幕とはなんだ、魔導石とはなんなんだ……。

ゲームではそんなもの存在していない。


木桶や天幕はまだなんとなく字面から想像がつく。

が、魔導石とはなんぞや…。


考えても考えても、その物自体が想像もつかない。


そうやって思案していた次の瞬間、勢いよくバタンッと音を立てながら扉が開いた。


俺は突然のことで体をビクッとさせながら扉の方に目をやると、ケルートが頭に片手で布の入った木桶を担ぎ、もう片手からはシャワーのようなものを持っていた。


「すみません、お待たせしました!今設置するのでもう少々お待ち下さいませ!」


そう言い残し、キャンプのテントを立てるかのように順々に何かが組み上がっていく。

そうしてものの1分ほど茫然としながら待っていると、小さい噴水のような、プールに設置してあるシャワーのような形容し難いものが出来上がった。


「ふーっと。お待たせいたしましたシギ様!お背中流させていただきます!!」


右手で額に付着した汗を拭き取りながら、キラキラな目をしてとんでもないことを言い出したぞ!?


なんだこいつ、マジでそっちなのか…。


「え、いや…。自分で洗えるので、その…」


「そんな!?これも奴隷の役目でございます!さらに申し上げますと、シギ様のようなエルフの方のお背中を流せるなど生涯自慢のタネになりますゆえ、どうかお願いいたします!!」


な、なんだこいつの目は……。

眩しすぎる、眩しすぎるぞ!!


気持ちは痛いほど伝わってくるのだが、生憎俺としてはそっちの気はさらさらない。

まさかゲームで貞操の危機を感じるとは思ってもみなかった。


「申し訳ありません。諸事情があるので、今日のところはやはりお断りさせていただきます」


「そんなぁ!?」


なぁんでそんなに背中を流したいのかなぁ!?

おかしいだろ!


俺は所詮エルフであり、別にマッチョってわけではない。

元々筋肉がつかない種族なのでしょうがないのだが、こんなやつに発情するなんてこいつ…レベル高いぞ。


--------


ケルートからの猛攻を交わし、無事1人で木桶の上に立っている。

外ではケルートが待機しており、何かあれば即座に助けに入るとのことだった。


(しかし…早速問題なのだが、どこから水が出るんだ?)


ただしさすがに断った手前、水の出し方がわからないなどと初歩的なことを聞くわけにはいくまい。


かなり大きめの木桶の中央には、噴水のようなものが設置してある。

ここから水が出るのはなんとなく想像がつくのは俺も一緒だ。


しかし、スイッチが見当たらない。

そういえば部屋の電気のスイッチも見てないな。


俺が入ったときには既に点いていたため気にも留めていなかったのだが、ふとそんなことも思う。


(まぁ電気は点いてるわけだし…今は水のほうが先なんだけどな)


魔法で水を出してもいいが、あれは歌わなければならないためかなり恥ずかしい。

1人ならばまだしも、すぐそこにはケルートが待機している。


そうしてなにも思いつかないまま幾分が過ぎただろうか。

ふと噴水のようなものの先を見ると、水晶のようなものが付いていた。


(なんだこれ…)


そう思いながら手を伸ばす。


ピタっと指先が触れた瞬間、握り拳ほどの石から水が溢れ出してきた。


「うぉっ!?」


「ど、どうなさいましたかっ!?」


水が出てきたことにびっくりしてしまいつい声が出てしまった。


「な、なんでもありません!お気になさらず!」


天幕の奥にいるケルートへ入ってこないように声をかける。


しかしなるほど、先ほど不思議だった魔導石というのは恐らくこれのことだろう。


触れるのがトリガーになるかはよくわからないが、まぁ無事水が出てくれて助かった。


そうして俺は、石から手を離して出なくなったら困るので、片手を上げ続けながら湯浴みをしたのだった…。


読んでくださってありがとうございます!


中途半端で終わってるな、と思った方!


申し訳ない!!


これからは、また間に合わなかったんだなって思ってください!

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