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第13曲

奴隷回の続きなのでまたまた前説はなしです!


今回は割と早くない…?


あと、12個目の話は途中で予約投稿されてしまっていて完結してませんでした!


急遽編集で追加しておいたのでそちらを読んでからこの話をご愛読ください!

ガチャっと木で出来た重厚感のある扉を開けて入ってきたのはレファではなく、眼鏡をかけたショートカットのスレンダーな女性だ。


ただ、ものすごく美人というわけではないのが引っかかる。


いや、確かにリアルに蔓延っている女性たちとは格が違う程には美人であるが、ゲーム内ではどんなNPCでもある程度可愛く作られている。


そりゃ可愛い方が顧客が増えるから当たり前なんだけどな。


それらからすると数段劣っているのが微妙に引っかかるのだが、もしかしてこのイベントのキーマンなのだろうか。


そうだとすると、あえてこういう風に作ってあるのかもしれないな。


「中級奴隷のリストをお持ちいたしました。こちらの中から複数人お選びいただいて構いません。どうぞーー」


そう言ってこれまた木で出来た高級そうなローテーブルに置いた。


「これはご丁寧に…。ありがとうございます」


人として感謝は当たり前の行為だ。

そのはずなのだが、スレンダーな女性はひどく驚いた表情を見せた。


感謝されて驚かれるとは思っていなかったため、こちらも無駄に驚いてしまう。


目を見開いてこちらを見つめる女性に対して、目を見開く俺のアバター…。


「えっと…なにか?」


「え、あ、いえっ!!大変申し訳ありません!ただ…エルフ様に感謝していただけるとは思いもしなかったので……」


そう言って頭を下げながら焦り混じりで説明してくれた。

が、エルフが感謝しただけでこのような反応をされると、この国のエルフは普段どれだけ傲慢な態度をとっているのだろうか。


気になるところではあるが、未だにNPCのエルフと会ったことは残念ながらないため、何もわからないのが現状だ。


とりあえずいつまでも頭を下げさせておくわけにはいかない。


「頭をお上げください。座って待っていただけの私が、わざわざリストを運んでくださったあなたに感謝を述べるのは当然のことでございます。ですから、あなたが謝ることは何もございません」


丁寧に、優しくを心がけて相手の怯えた心を解きほぐす。


すると上手くいったのか、頭を上げてくれたのは良かったものの、女性の目尻には大粒の涙が溜まっていた。


「え!?あ、いや、なにか失礼なことを申しましたでしょうか!?え…どうしよう…」


女性を泣かしたことなど妹しかない。


他所の女性を自分が初めて泣かしてしまい、大いに戸惑ってしまう。


「これ!これをお使いください!」


そう言って胸ポケットから取り出したように見せかけ、アイテムボックスからだいぶ前に遊びで作ったハンカチを取り出す。


このハンカチ、かなりいい素材を判断に使っており、敵の攻撃を2回までどんなものでも無効化する効果などが付いている。


ただハンカチの面積までしか防げないのでそこまで重宝できるものでもないんだけどな…。


ただ今はそんなこと関係ない。

これは今、装備品としてではなくハンカチ本来の業務をこなそうとしているのだから。


「い、いえ!そのような高そうな綺麗な布を受け取ることなどできません!お許しくださいっ!それに…それに、この涙は嬉し涙でございます故、お気になさらず…」


女性の前にハンカチを差し出したが、女性は受け取ろうとはしなかった。


確かに売ったら高いだろうが、持っていても宝の持ち腐れだ。

それに嬉し涙とはどういうことだろうか。


エルフに感謝されるのがそこまで嬉しいことなのだろうか。

やっぱりこの国について知る必要が出てきた気がする。


それに少しイラッとしてきた。

この国のやり方は根本から間違っている。


一度しっかりと調査に出向いた方がいいのは間違いないが、そんなことより今はこの女性への対処が先だろう。


「気にせず使ってください!ねっ!」


焦りに焦っているのでロープレすらままにならない状態で、女性の右手にハンカチを無理矢理握らせる。


「い、いえっ、でもーー」


またもう1問答ありそうな感じになったとき、この世界を壊すの救世主が再降臨した。


そう、老紳士のレファが戻ってきてくれたのだ。


しかし、この2人の微妙な空気を察したのか、少し訝しげな顔をする。


「おや、ナタリー。まだいたのか?エルフ様、うちのものが何か失礼を…?」


「い、いやいやっ!とんでもない。こちらの女性はご自身の業務をこなしていただいたまででございます!問題があるとしたら私の方かと……」


救世主かと思ったレファは、どうやら消し炭に燃料を投下しにきたようだ。


「そ、そんなっ!?はっーー」


俺の卑下に女性が反応したが、急に大きい声を出したからか、口を手で押さえて黙り込んでしまった。


突然声を出した女性にレファが厳しい目を送っている。

おそらくだが、客人の前では喋ってはいけないマニュアルなのだろう。


しっかし、やたら細かいところの設定に凝っているイベントだ…な……。



いや待て、おかしくないだろうか。



あまりにも精巧な作りをしているものだから本物として扱ってしまうことは多々ある。


だからこそ俺も女性を泣かしたと焦っていたのだから。

しかしだ、まずゲーム内で涙を流すエフェクトは存在しない。


まただ、何かがおかしい。


漠然と、なんとなくではあるが俺の中で捕まえられなかった煙が輪郭を表しつつある気がする。


もうすぐで煙が実体化しそうなときに限って横槍というものは得手して飛んでくるものなのだろう。


すると、そこでなんとなく状況を悟ったレファが再起動した。


「ナタリー、君はとりあえず戻りなさい。お待たせいたしましたエルフ様。部屋の確保は済みましたので、お次は奴隷の選定へと参りましょう」


俺の中のモヤモヤは、レファの言葉で霧散していってしまった。

この状況から立ち直るチャンスへと心がベクトルを変えてしまったのだ。


「はい、承知しました。リスト、ありがとうございました」


再度お礼を言いつつ、俺は革張りのソファに再度腰をかける。


何度座っても飽きねぇなぁと感慨深く思っていると、レファが話を進める。


「こちらにございますのが、当店で所有している中級奴隷のリストであります。他のお客様へ具している奴隷もいますが、エルフ様が御所望であれば即座に付け替えさせていただきますので、なんなりとお申し付けくださいませ」


「ははっ、ご配慮痛みいります。しかし、残っている方々から選ばせていただきますよ」


渇いた笑いしか沸かない。

エルフの優遇もそうだが、さっきから気になるのは奴隷を“所有”しているという言い方と、“具する”という言い方だ。


どちらも物に対する言葉であって、どんな失礼なやつでも人に使ったりする言葉ではない。


先ほどのレファの奴隷の説明では、カルスという位だけ人として扱われてはいないと言っていたが、結局奴隷というものに人権は存在していないも同然だろう。


苛立ちを覚えつつも、今夜のせっかくの寝床なのでリストへと目を流していく。


3枚ほどの紙には、名前・年齢・性別・その他身体的情報がつらつらと書き記されている。


しかし、こんな紙ペラを見たところでまだ見ないと何もわからない。


でもまぁ、まず元々は奴隷を付ける予定すらなかったのだから誰でもいいか。


そう思い、2枚目の紙の真ん中より少し上辺りの名前を指差す。


「こちらの方で…」


そう言ってレファの顔を伺うと、またもや意味深に目を細める。

なんだろう、この人には何か欠陥があるのだろうか。


しかし、そんな人間が中級奴隷なんかになれるはずがない。

俺がレファの行動に頭を悩ませていると、何事もなかったかのようにレファは話しかけてくる。


「かしこまりました。ただ今連れて参りますので、少々お待ちいただいてもよろしいですか?」


「えぇ、構いません。よろしくお願いします」


「はい、ありがとうございます。それでは少々お待ちを…」


そう言って再びレファは部屋を後にする。


暇な待ち時間を使って指差した人の情報を読んでおくか。

名前くらいは知っておいた方がいいだろう。


「えーっと何々…。名前は《ケルート・エルファ・カルベリット》ねぇ。長い名前だこと。性別は男か…男ねぇ…えぇ!?もしかしてレファは俺が男色家だと思ったんじゃ……!?」


これは酷い勘違いをさせてしまったかもしれない。


(まずい、まずいぞっ!)


大変不名誉な肩書がついてしまう。

街を歩くたびに、これから後ろ指を刺されるかもしれない。


いや、まだ奴隷がそういうエチエチな行為をするようなものかどうかわからないじゃないか。


(焦るな…焦るな俺……!)


しかしだ、ここで帰ってきたレファに、夜伽はできますか?なんて質問してみろ。


それこそまずい状況になるのは不可避なことになる。

どうすればいい…。



しかし、時は残酷だ。



こうやって頭を抱えて悩んでいる時ほど、嫌なこととは早く訪れるものなのだろうか。


ガチャっとドアノブが回される音がした。


金色の、おそらくメッキではない高そうなノブがゆっくりと回っていく。



それはそれは走馬灯のように、ゆっくりと……。



勉強って疲れますね…。


鬱になりそうです、本当に。

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