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第12曲

遅くなりました!


見ていただけると嬉しいです!

「それではそちらへおかけください」


そう老紳士兼支配人であるレファに勧められたのは、天然皮革で出来ているであろう黒い革張りの高級感あふれる2人がけのソファだった。


俺は失礼します、と言いながら勧められるままに腰をかける。


(うぉ、なんだこれ!?)


触った瞬間にわかる、普段座っているソファとの格の違いが…。

俺のお尻を包み込み、ほどよく沈むこの低反発感。


何の革で出来ているのかは定かじゃないが、恐ろしく高いのは見た目だけでなく、機能性の面でも感じることができる。


なるべく顔には出さないようにしたが、レファの顔を伺うとなんとなしに温かい目をしている気がして急に恥ずかしくなってきた。


いたたまれない気持ちになった俺は、こっちから口を開こうと決心する。


「えー、それで、ご宿泊の件なのですが…」


「あぁ、申し訳ございません。その前にもう一度自己紹介をさせていただきたく思います。妖の精霊亭の支配人を務めさせていただいてます、《レファンドル・スコールド》と申します。呼び方は先ほども申し上げました通り“レファ”で構いません。どうぞ、よろしくお願いいたします」


「は、はぁ…」


(なんで2度も自己紹介をしたんだ?名前はさっき聞いたぞ…)


2度目の自己紹介。

名前を覚えていないとでも思われたのだろうか。


たしかに新学期における人の顔と名前の暗記には全く自信はないが、1人くらいならその場で覚えられるつもりだ。


まぁここの宿屋が妖の精霊亭というのは初めて聞いたが、それを言いたいならくどい自己紹介をする必要がない。


しかし、俺が曖昧な返事をしたその瞬間、レファは本当に微細に目を細めた。


ただ、このアバターの身体能力あってこそ認識できたであろうその行為が何を示しているのか、この時の俺にはまだわからなかった。


「それでは本題に入りましょう。本日はこの宿屋にご宿泊を希望と伺いましたが、お間違いございませんでしょうか?」


「えぇ、間違いありません」


「恐らく外にいた私兵がお話ししたとは思いますが、ここを真っ直ぐ行っていただくと神聖区がございます。エルフ様は基本どの地区でもご宿泊可能ではございますが、基本的に皆様そちらの方をご利用されております。なぜ、当宿屋をご希望になられたのか伺っても…?」


「ここの雰囲気が気に入ったから、というのではダメでしょうか?」


実際、これは半分本当のことだ。

もう半分はこの国のやり方にイラッとしたからなんだけど、そっちは言わないでおこう。


「それはそれは、支配人として大変嬉しく思います。ただ、こちらにはエルフ様に対する適当なサービスを提供する準備がございません。故に、気に入っていただけたのは大変嬉しく思いますが、貴方様のためにも神聖区をご利用いただくのがよろしいかと…」


レファはさっきの私兵のように、あまりここでの宿泊を良く思っていないようだ。


そこまでエルフが差別化される意味がわからない。

たしかにアバターであってもNPCであっても皆等しくそれなりに美しい容姿を持っている。


しかし、別に能力値がバカ高く、めちゃくちゃ強いとかそう言うわけではない。

強さはそのアバターの使い手次第だろう。


この国は容姿だけで判断されるのだろうか。

その辺りはまだ全くわからないが、やっぱり気に入らないやり方だ。


「エルフに対する適当なサービスというのは、つまるところ具体的にはどのようなものか教えていただいてもよろしいですか?」


そう伺いを立てる。


「はい、例えば奴隷でございますね」


(はぁ…また“奴隷”か。聞くたびに嫌な気持ちになる…)


「奴隷…ですか…」


「はい、奴隷についてはあまりお詳しくないようにお見受けしましたが…。この国の奴隷制度について少しご説明いたしましょうか?」


「えぇ、是非に。私の国には奴隷という存在がいなかったものでして…」


「ほぉ、これは珍しいところからいらっしゃったようですな。まぁとりあえず奴隷の説明をさせていただきましょう。まずこの国には奴隷という最底辺の身分が存在しておりまして、その中でも『高級奴隷・中級奴隷・低級奴隷・カルス』という序列がございます。上から立場も上になっていくのですが、この『カルス』は一言で言ってしまえば、人として扱われません。つまり奴隷という身分もいただけないのですが…。ご説明するには少しご気分を害する可能性もあるので、割愛させていただこうかと思います。さて、高級奴隷とはつまり、エルフ様が“身落ち”した場合に行き着く先でございます。頻繁にエルフ様の身落ちというのが起こるわけではございませんが、稀に身落ちしてしまう場合には高級奴隷になる、と言うことでございますね。中級奴隷とは罪を冒したエルフ様や、人族の中でも高い階級の人族の身落ちなどでこの中級奴隷になってしまわれます。こちらもあまり数はおりませんが、当宿屋では幾人か確保しております。しかし、当宿屋では、この中級奴隷までしか扱えないという国法がございますゆえ、上級奴隷は神聖区にしかおりません。まぁ低級奴隷は先程説明させていただいた以外の者全てでありますので、かなり多く保有させてはいただいておりますが、それをエルフ様に付けたとなれば当宿屋は潰されてしまうでしょう。中級奴隷ならばまだなんとかなるとは思いますが、基本エルフ様に付けるのは高級奴隷というのが通則でございます。以上でございますが、何かご質問などはございますか?」


奴隷にも色々あるみたいだが、胸糞悪くなりそうなのは“カルス”と言う存在だ。

説明まではしてもらえなかったが、して欲しいとも思わない内容なのだろう。


人として扱われないとなると、人権が存在しないということなのだろうか。

正直、それだけ聞いても気分が下がる。


「い、いえ…特には…。ただ、一つあるとすれば、エルフでも中級であれば良いということでお間違いないでしょうか?」


「えぇ、良くはありませんが、前例がないわけではございませんね」


もうこの国にはうんざりしてきた。

1ミリも言うことを聞きたいと思わない。


今までこの国の人と接してきた感じ、“エルフ”というのを前面に出していけば無理矢理にでも泊まれそうな気はするが、そうではなく説き伏せて泊まらせてもらいたい。


「それではやはり、この妖の精霊亭に宿泊させていただきたいのですが…よろしいでしょうか?」


「そこまで仰っていただけるのでしたら。ただ今手続きをさせていただきます。それと、中級奴隷のリストをお待ちいたしますので、お待ちいただいている間に具する相手をお選びくださいませ」


「あ、いや、申し訳ありません。奴隷は付けていただかなくて結構です」


奴隷なんてまっぴらごめんだ。

ここの人たちと一緒にしないで欲しい。


「そういうわけにもいかないのです。エルフ様に奴隷を付けなかった、などという情報が外に漏れた暁には私は反逆罪で捕まってしまいます。大変申し訳ございませんが、お選びいただけないでしょうか?」


なんだと……。

周りを固められた。


この法律を作った奴は相当性格が悪そうだ。


「は、はぁ…。承知しました」


そう言うとレファは手続きを済ませると言って部屋から出て行った。



寝床は確保できたが……果たしてこれでいいのか、『ニュージェネ』…。








やっとリアルの方が落ち着いてきました。


更新頻度上げられたら上げます(上げるとは言ってない)

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