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#71 少年は思わぬ遭遇をする

 土産物屋に入って10分くらい。もうやだ。


「まっじで何やってんだろ俺……」


 周りにはカップルカップル家族カップル家族家族カップル。ときたま女子高生だろうグループやらはいるものの、男一人は見つかりそうにない。


 つまりアレだ。

 とんでもなく、場違い。


 しかしまあ、卓と約束してしまったわけだし、追跡をやめるわけにはいかない。


「まーじで何話してんだろ」


 店内は外よりもいっそう騒々しくて、余計に会話が聞き取れない。口が動いているのはわかるんだけど。


「やべっ、見つかる」


 くるっと二人が振り向いて、視線がこちらに。俺は慌てて物陰に隠れて……バレてないよな?

 しばらくその場にとどまっていると、レジで精算している二人が見えた。少し安堵した。


 見失わずに済んだ、ということと、それからやっとここから出られるんだ、という安心感に。




 やはり、お土産を買った後は帰るようだった。もうしばらく進めば出入り口にたどり着く。

 しかしまあ、色々びっくりしたことはあったけど。


「なんていうか、こう、何でもないようなデートだったな……」


 傍から見てる分には、なにかしら悪いところがあったようにも見えなかったし、普通にいいデートだったとは思う。

 けど、何かこれといったイベントがあったかと聞かれると……。


(特にこれと言ったものはないんだよなあ)


 ゲームだったら何かしら好感度アップイベントみたいな感じなのがありそうなものだけど、無かったように見えた。

 やはり現実とはそういうものなのだろうか。……それとも俺がゲームに毒されているだけなのだろうか。


 ついに、ゲートの外に出てしまった。俺は少しの間ゲートの手前で二人の様子を伺った。大丈夫だ、後ろを振り返りそうな気配はない。


「ありがとうございましたー」


 俺もゲートを通る。職員の男性がペコリと頭を下げていた。

 そういえば、今日はあんまりゲームできてないな。備考終わったら何しよう。


 ……恋愛ゲーでもやるか。参考になるかは知らないけど。






「さすがに駅まで送るよな。デートなわけだし、それに葵だし」


 最寄り駅で、どうやら別れるようだった。葵の家はここからは近くもないが、電車を使わなくても、まあ来れる距離だったはず。

 だから、電車を使うのは雨宮さんだけのはず。となると、送りに来たということだろう。


 実際、雨宮さんだけが改札に向かって歩きだしていた。

 ここなら、まだ静かだし、耳を澄ませばなんて言っているかわかりそうだ。


「……っ!」


 うーん、まだ聞きにくい。もう少し近づくか。

 改札まであと何歩か、というところまで来た雨宮さんは、そこで急に方向転換。タッタッタッと葵に近づいていった。


「ど……し……? あ……みや……」


 まだ、まだハッキリ聞こえない。もう少し、もう少し。


「……のくん! …………だ、まだ」


 ……まだ? まだって、どうしたんだ? もうちょっと近づいて、会話を――。


「どうしたんだ、隆俊。こんなところで」


「うおおおおあああ!? ……って、紀香?」


 振り返ると、それはそれは見慣れていて、見慣れすぎていて、むしろ見飽きた顔が、キョトンとしていた。

 思わず大きな声を出してしまった。ばっと葵たちの方向を見ると、うわあ、やらかした。


「おう、隆俊に灰原、どうしたんだここで」


「あわわ、あ、えと……、こんばんは」


 完ッ璧に気づかれてしまった。俺は少し困ったが、ここで変な反応するのも逆に怪しまれかねないので「こんばんは……」とだけ返した。


「遠野に雨宮さん! こんなところで会うなんて奇遇だね!」


「そうだな。あ、そうだ。今から雨宮と一緒に――」


「ああああああ! 今から俺と紀香はちょーっとやらなきないけないことがあるんだよ、な? な?」


「ふぇっ? え、あ、何急に言い出してんだよ」


「な?」


 俺は普段めったに使わないような顔と声色で、無理やり同意を強要する。しかし紀香には意図がうまく伝わっていないのか、まるで、「何いってんだこいつ」というような目をしながらこちらを向いている。


「ほーら、早く行くぞ」


「えっ、ちょっと!」


「早く!」


 ぐっと腕を掴んで、急いでその場から離れた。

 紀香は抵抗してきたけど、ガン無視。とにかく引っ張る。


 しばらく離れたところで、腕を振りほどかれた。


「ちょっと、何すんだよ隆俊!」


「うっせーバカ猿! テメエは気づかなかったのかよ!」


「何にだよ!」


「雨宮さんが若干泣きそうになってたの気づかなかったのかよ!」


 キョトンと。うわ、これマジで気づいてなかったやつだ。


「え、マジで?」


「マジで」


「マジで?」


「マジで」


 まあ、当然だろうなあと。やっとの思いで二人きりになれたというのに、それを邪魔されたらそれはまあ悲しいだろう。

 葵も葵にでアイツまじで何考えてんだよ。他人の気持ち考えてないのか。


「……とりあえず、だがな」


「ん? どうした隆俊」


「今から俺の言うとおりにするなら」


「うん」


「後でファミレスで何か奢ってやる」


「うん!」


 単純かよコイツ……。




「まさか、こんなことになるとはな」


「ねえねえ、これどういうことなの?」


「静かにしなさい」


「むー」


 何の偶然だろうか。まさか、葵たちを尾行していったら、行き先がファミレスだったとは。

 おかげさまで、現在絶賛奢り中。めちゃくちゃ食べられてる。


「でもさ、ほんとにどういうことなの?」


「……気になるか?」


「うん」


 どうしようか。……しかしまあ、見られてしまったものは、仕方ないし、ここから先下手に詮索されるのもまずいし。


「誰にも言わない?」


「うん」


「特に橘さんには言わない?」


「……うん?」


 ちょっと信用ならない返事だったが、まあ、もとより信用などならないので、いいことにしよう。


「前の手紙あったろ?」


「あー、見せてくれなかったやつ」


「あれに書かれてたんだよ」


「何が?」


「今日のことが」


 意味わからなさげにしているが、まあ、仕方ない。必要な情報言ってないから。


「あの手紙に書かれてたのは、端的にいうと今日、葵と雨宮さんがデートするって」


「えっ!?」


「静かに」


 きっと反射的にだったのだろう。ガタッと立ち上がりそう言った彼女に落ち着くように促す。


「そんで、さっきまで遊園地デートしてた」


「マジで?」


「マジで」


 きっと、顎が外れたのだろう。唖然としたまま動かない紀香がそこにいた。

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