とある男の書記より
僕はこれまで、数多くの戦いを経験してきた。その度、傷ついて、傷つけた。仲間の死にも直面した。彼らの最後の顔を、声を、僕は一生忘れられないだろう。
それでも、戦ったことに後悔はない。それぞれに戦う理由や考えがある。大切な何かを護るため、命を賭けるのは当然だと思っているし、そうでなければ僕たちがやっていたことはただの殺し合いだ。敬意を持てとまでは言わないが、快楽的になってはいけない。
この耳に焼き付いた戦いの音が消え去るのはいつになるのだろうか。もしかすると一生とれることがないのかもしれない。日常での僕としては早く消えてほしいと思うのだが、それは過去を忘れるような気がして僕の本心が嫌がっている。だからこのままそっとしておくことにする。
この海がこれから赤く黒く染まる日はやってきてしまうのだろうか。染めた張本人たる僕のような者が言うべきではないかもしれないが、もう二度と、この蒼い海が汚されないことを祈る。
さて、僕は語らなくてはならない。もう二度と、同じ過ちを繰り返さないために。この書記はその為だけに存在するものなのだから。誰の目にも止まらない拙い文字の羅列かもしれないが、願わくばそっと心に留められたいものだ。
――いつか平和なこの海で