隊長(仮)と狐と小学五年生。
「新入隊員っ!?待て準備できてないっ!!」
「ていうか音鳴ってなくない!?」
一歩踏み入れれば目に入ったのは、床に散らかったポテトチップスの袋数個、ペットボトルの空、その他もろもろが散らかっていた。そして焦る先輩と思われる二人組。その先輩も僕と月に気付いたのか、顔を見合わせて真っ青になった。
「ちょっとどーするの!?」
「しっ、知らないよっ?ていうかアンタ、隊長の側近だろうが!!」
小声で話していると思われるがまる聞こえだ。その後無言となり、気まずい空気が流れる。お互い目を逸らしたり、変ににやけながらして数秒後。靴音が聞こえてきた。
「おっ新入隊員アルカ?…何してるアル?」
空気を破る様な幼い声を出して、これまた可愛らしい顔をあきれ顔にさせながらその少女は紡いだ。その少女をまるで神を見るかのように瞳を輝かした先輩二人は、無理のある笑い声を発した。
「なんもしてないよー!!」
「そうだよー!じゃあ自己紹介でもしようかな!」
「俺は第一部隊隊員の白神十五。年齢は29歳だよー!いつも隊長いないから俺を隊長と慕ってね」
明るい茶髪を揺らして先輩が歯を見せて笑った。雰囲気的にも明るいし親しみやすそうな笑顔を広げている。だけど赤い瞳は怖いぐらいに濁っていた。一歩間違えば瞳の濁りに吸い込まれてしまいそうな。
「じゃあ次ねー!和田焔いいますー!狐のお面は気にしないでねっ!自慢じゃないけど帝都学園の首席でしたー!」
黒髪を腰まで伸ばした先輩は面白そうにからからと笑った。白神先輩と同じ雰囲気だけど…脳がこの人に対して危険信号を出している。顔が見えないのが逆に恐ろしい。
「次はアタシ?アタシは幻傷燐火アル。この隊では一番年下アル。でもっ、新入隊員よりも先輩アル、敬うことアルナ」
蛍光色のような濃さの桃色の髪に所々の黒いメッシュ、そして頬と首筋にあるハートの刺青。パンチが強い印象だけど容姿がどうしても少女だし、可愛らしいアクセサリーとなってしまう。先ほどカードを見せてもらい年齢を確認したが、どうしても小学五年生ぐらいの女の子にしか見えない。本人いわく、異能力の副作用というのみで、実際は分からなかった。
順番的に僕たちの番になった。月は照れ屋なので僕が話すことにする。
「僕が颯希京で、隣の子が榊原月っていいます!精一杯がんばるのでお願いします!!」
僕は満面の笑みを浮かべて、頭を下げた。