現状の確認と方針を決めましょう
そろそろ名物の書類の山が・・・?
1か月ほどでレイルの支配地域は一気に3倍に膨れ上がった。元ラングの居城に入り、領内の整備を行う。なし崩し的に軍師的な立場に収まったスカサハはレイルの横に座り、次々と意見具申を行う。
「まずは税率の統一を。支配範囲が広くなり、しかも後背に敵対勢力がいない地域が多くあります。その地域からの生産をもとに前線で兵を養いましょう」
「承知した」
「ラングの支配下で、住民に無体を働かなかった者がおります。優先的に雇用しましょう」
「わかった」
「悪行を働き、山賊になった者がおります。早急に討伐を」
「セタンタに任せよう」
「レイル殿、いつ私を妻に迎えてくださるのか?」
「検討しよう」
「検討してくださるのか?!」
「待てスカサハ殿、貴女は今何を口走った?」
「いや、私を妻に迎えてくださると?」
なにやら別方向でテンションが上がったスカサハがレイルに迫る。微妙な空気はノックの音でかき消された。レイルの安堵の息とスカサハの舌打ちが交差する。
「レイルー、新しい情報が届いたよーって、どうしたの、義姉上?」
「姉さん、今なんて?」
「だから新しい情報が届いたって」
「そうじゃない、スカサハ殿をなんて呼んだのか?」
「えー、ああそうか、義妹って呼ぶべきよねー。レイルの奥さんは私の義理の妹だし?」
「だっかっら、なんでそうなる!?」
「あれ?まだそうなってないの?」
「ああ、リン義姉上。レイル殿は奥ゆかしくてな。わたしはいつでもバッチ恋なのだが」
「あらま、レイル、あまり女性に恥をかかせるものじゃないわよ?」
「ちょっと待って、なんでそうなってるの?」
「えー、だって、綺麗だし頭は回るし腕は立つし。お似合い? それとも何? 誰かほかに好きな人でもいるの?」
「いや、いませんね」
「レイル殿、そこは即答ではなく、私にも立場というものがありおりはべり…」
あまりにどきっぱりと断言するレイルにスカサハがもじもじと愚痴をこぼす。
「じゃあさ、領主としてこの地の安定に寄与する人物として、賢者と名高いスカサハさんはふさわしくないの?」
「う・・むう・・一理ある気が…」
スカサハは恋する乙女のように目を潤ませ頬を赤らめる。
「レイル殿…」
微妙な上目遣いにレイルのほほが赤く染まりだす。
「レイル殿はわたしが嫌いか?」
目を潤ませ、かなり顔を近づけてレイルに迫るスカサハ。後ろでリンが行け、そこだ、一気に!とかあおりだす。スカサハの目がゆっくりと閉じられ用としていたあたりで再度ドアがノックされた。
「は、はい! どうぞ!」
正気に戻ったレイルが来客を呼び込む。リンとスカサハの舌打ちは聞かなかったことにした。
「リン、忘れ物だ。一座のみなが苦労して持ち帰ったんだぞ?」
「あ、アレス、ごめんね。ありがと」
花が咲いたような笑顔とはこういうのを指すのか。アレスが微妙に視線を逸らす。スカサハがつぶやく。
「むう、これがデレか…」
残り4つの村は、2つがレイルになびきつつあり、残り2つが外部の勢力を呼び込んで抵抗しようとしているらしい。エレス王の伝説が残るプロバンス地方は、3つの勢力が争っているが、一つの勢力が過半を占めている。そこから援軍を呼ぶつもりとのことだ。
「ひとまず、プロバンスの勢力の内情を調べましょう。で、こちらになびきつつある村には使者を」
「妥当だな。前線となりうる村に兵を回すとしましょう」
「姉上。アレスを副将として遊撃部隊を率いていただきたい」
「わかったわ。盗賊をつぶしつつ、領内の情報収集でいい?」
「ええ、頼みます」
「スカサハ殿、人材の当てはないですか?」
「ふむ、確かに今は何とかなっているけども、これからは家臣団を組織しないといろいろ苦しいね」
「おっしゃる通りです」
「ならばまずは跡取りを仕込もうではないか」
「仮にその子が生まれたとして、政務に携わるまで何年かかるんですか!?」
「ふむ、子供を作ることは拒否されていない…と、ふむふむ」
「妙な部分に反応しないでいただきたい!?」
「いやいや、重要なことだよ」
「で、どうなんですか?」
「とりあえず、村の顔役あたりを招集しよう。その息子とか次男坊当たりなら読み書きと簡単な計算はできるだろう」
「そうです、そういう意見が聞きたかったんです!」
「失敬な、まるで私が悪ふざけをしているみたいじゃないか」
「してなかったんですか?」
「私とレイル殿の将来が重要ではないというのか?」
「いや、だからそうじゃなくて・・・」
にこにことほほ笑むスカサハに毒気を抜かれレイルは突っ伏した。部屋に当番兵が現れ、レイルとスカサハは予定されていた次の仕事に向かうのだった。
プロバンス伯から不可侵条約の提示があった。条件がこちらに都合がよすぎる。新たな騒動の種が芽吹き始めていた。
次回 伝説の戦士(仮
お楽しみに!




