エピローグ
あれから、私達はタカヤを連れて帰り、きちんと荼毘に付したあと、小さな骨壺をタカヤのお気に入りの窓際に安置した。横には寂しくないよう、人形も一緒にしてあげた。
タカヤを見つけた日以来、夢をぴたりと見なくなった。
猫と同じ名前の不思議な男性と、彼を愛してしまった彼女。
彼女は、彼にきちんと会うことができたのか。それだけが気掛かりだ。
……きっと、仲直りしてまた二人と一匹で暮らしているのだろう。そんな気がしてならない。
夢が消えたと同時に、私は新しい命を授かった。
タカヤが最期に残していってくれた贈り物のようで、私は嬉しくもあり、一抹の悲しさも感じる。
一番大喜びしたのは夫だ。一人ではしゃいで、早くも名前をいろいろ考えているようで、毎日のように私に候補を書き連ねた紙を見せてくる。
中々孫の顔を見せられず申し訳ない思いだったが、電話で伝えると両家の二親とも手を取り合って飛び跳ねたらしい。気が早いことに、祖母になる母二人は連れ立ってベビー用品を物色し、あれこれ送りつけてくる。
あまりの周囲の喜びように私は一人引いてしまったが、それでも、日毎に大きくなってくるお腹を見れば、愛おしさが溢れて止まらない。
十月十日お腹の中で大切に慈しんだ我が子が、いよいよこの世に産まれる日。
陣痛に顔を歪めながらも、私は心が躍る。
夫はオロオロするばかりで、姑に情けないと叱られた。
とうとう、我が子が産まれようかという最後の瞬間、私は白昼夢を見た。
あの女性が、幸せそうに彼に寄り添って歩く姿を。
お互いを見つめる、優しい眼差し。
二人がゆっくりと私に振り返る。
女性の顔は、私と同じだった。
「……マナミ! マナミ! よく頑張ったね、産まれたよ!」
気が付くと、私は赤ん坊を胸に抱いていた。
「……産まれた……」
しわくちゃの顔で一生懸命泣く声が、猫のようでとても可愛い。
「……私のところへ来てくれて、ありがとう」
小さな手のひらに指を置くと、力いっぱい、ぎゅうっと握った。
了
初めての長期連載、無事に(?)終わらせることができました。
飽きっぽい自分と闘いながら、それでも最後まで書くことができたのは、いつも応援してくださる皆様のおかげです。
本当にありがとうございました。
結末はきっと、賛否両論あるとは思いますが、私としては初めから予定していたラストを迎えられました。
整合性に疑問をもたれる方もいらっしゃるでしょうが、私はこの作品をいじるつもりはありません。
初めて書いたから愛着があるし、拙いまま残しておくことで後々、最初はヘタクソだったなぁ……と思えるようになっていきたいからです。
これからも少しずつ上達して、より良い作品を皆様にお届けできるよう腕を磨いていきたいと思っております。
長くなりましたが、最後までご覧いただき誠にありがとうございました!
まつもと なつ




