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睡夢の人  作者: まつもと なつ
35/36

哀哭

「タカヤ!」


 声は風にかき消される。


「……タカヤぁっ!」


 この声が届くまで、何度だって叫び続ける。


「タカヤ! タカヤ! ……お願い、気付いて……!」


 目の前に居るのに。


「……タカヤ! 私よ!」


 ようやくあなたを見つけた。

 もうどこへも行かないで!


「ま……って……」


 喉が痛い。声を出そうとするとむせてしまう。

 ぜいぜいと荒い自分の呼吸ばかり、耳に響く。

 それでも、私は叫び続ける。


「タ……ヤっ……! タカ……ヤ……!」


 

 声にならない叫びは、やがて涙に変わった。

 頬を伝う涙を拭いもせず、ともすれば膝を突きそうになる足を無理矢理動かして、一歩ずつ前に進む。

 彼に、近付いていく。


 やっと。

 やっと、会えた。


「迎えに、来たよ……タカヤ」





 猫は、眠るように冷たくなっていた。

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