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睡夢の人  作者: まつもと なつ
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 私は相変わらず、猫を探している。

 あれからもう三ヶ月くらいになったろうか。

 どこからも連絡は無く、手がかりさえも掴めないでいる。

 あの子が居ない部屋はどこかひっそりとして、もの悲しい。

 やんちゃして叱ったことさえ、思い出しては泣けてくる。

 何とか普段通りに生活しようと、外では明るく振る舞うが、家に帰って玄関を開けてもあの子の姿が無いことに、毎日打ちのめされる。


 そんな私を見かねた夫に、ペットショップへ連れて行かれた。

 新しい猫など欲しくはない。そう言って帰ろうとしたのだが、夫は夫であの子が居なくなったことへの負い目や喪失感を、埋められないでいたらしい。

 気は乗らなかったが、それでも小さな可愛らしい子猫を見ると、心の痛みが少しだけ和らいだ。夫も、久しぶりに猫を抱き、その温かさに癒されたようだった。


 ペットショップの帰り道、自宅とはかなり離れた場所であるにも関わらず、私はあの子を探してみようと夫に言った。

 猫にはテリトリーがある。うちの猫は飼い猫とは言え元野良なので、テリトリーの外に出ることは無いだろうとこの辺は捜索範囲から外していた。

 だが心の奥底で、ここを探したらいるかもという考えが頭をもたげる。徒労に終わるかもしれない。しかし、どうしても探さなければとしか思えないのだ。

 夫はやはり、テリトリー外ということで期待は薄いと言った。しかし、心配なのは自分も一緒だと、この界隈を探すことに同意してくれた。


 時間はすでに午後を回っていたので、あまり長い時間は探せない。それに加えてやや霧がかかってきたので、捜索は難航した。

 ましてや歩き慣れない街だ。どこを探せばいいのかさえ分からない。それでもあの子を見つけたい。──会いたい。

 霧は徐々に濃くなり、数メートル先を見通すことさえ難しくなってきた。

 これ以上は無理かと諦めかけたその時、どこからともなく猫の鳴き声が。

 夫と顔を見合わすと、私達は声だけを頼りに霧の中を歩く。ほとんど視界はないのに、不思議と進むべき方向が分かる。

 私は確信した。あの子が呼んでいる。


 声に導かれ、かなり歩いたように思う。無我夢中だったので、実際はそれほど経っていないのかもしれない。

 突然、猫の鳴き声がぴたりと止んだ。

 すると、今まで目の前を遮っていた霧が吹き消されたようにさっと晴れ、私達は広い空き地の真ん中に立っていた。

 そして。

 草むらの中に、見覚えのある灰色の毛並みが見えた。


 私は思わず叫んだ。

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