インターバル・Ⅳ
私はまた夢を見ている。
私と同じ歳くらいの女性が、来る日も来る日もあの男性を待っている。このところ、全く彼は現れない。
この女性は男性の同居人だ。
夢の中で私はこの女性になっていて、あちらの生活を送っている。高級そうな住宅地のスーパーでレジをしていて、自宅には猫が一匹。家の子とは違って、まん丸に太っていておじさんっぽい。額に眉毛のような斑があるから「マロ」という名前らしい。何となく夫に似ているかも。
今見ている夢は、女性が、つまり私が一人で外出し駅に向かっているところだ。
わざと遠回りしたりして、近所をあちこち調べている。彼がどこかに居るのではという、ほんのひとかけらの希望に縋ってしまう。
やはり、というべきか、彼は居なかった。
起きると忘れてしまっているが、夢の中では過去のことも思い出せる。
だから、彼が去って行った夜のことも覚えている。なのにどうしても帰って来ると思わずにはいられない。あんな突き離し方をしておいて、虫の良い話だと分かってはいる。たとえ会えたとしても、許してくれるとは思えない。
それでも、彼に会いたかった。
この女性の悲痛な心の声が、私にも染み込んでくる。
たった十五分の距離なのに、だいぶぐるりと回り道をしてきたため、一時間も掛かって駅に到着した。
閑静な住宅地にある小さな駅は、学生が帰るまでほとんど人が居ない。歩き回ったせいで疲れた私は自動販売機で温かいお茶を買うと、誰も居ないホームのベンチに座り一息つく。
特に目的も無く只、街に行こうとしか決めていなかったので、何をしようかぼんやり考えていると、いきなりけたたましい発車ベルが私の意識に殴り込んできた。




