インターバル・Ⅱ
「主任、どうしたんですか? コーヒー持ったままもう三十分そうしてますけど」
ふいに声を掛けられて、私は持っていたマグカップを落としそうになった。
「……わ! びっくりした……いきなり話しかけないでよ。コーヒーこぼすところだったじゃない」
焦った私は思わず部下に声を荒げてしまった。
「あ、ごめんなさい……あなたのせいじゃないのに」
驚いていた部下は、私が謝ると笑って新しいコーヒーを渡してくれる。
「珍しいですね、主任がぼーっとするなんて。お疲れなんじゃないですか? 新しい企画の会議、このところしょっちゅうですし」
私は小さなイベント企画会社の企画部で主任を任されていて、新しく立ち上げた婚活イベントの担当責任者として会議の毎日だった。
そのせいで疲れが溜まっているのはもちろんだが、それに加えて最近夢見が悪い。
「会議もそうなんだけど……。ねえ、あなたって夢は見る?」
唐突な質問だったので、部下は目が点になった。
「え? 夢ですか? どうでしょう……見ても覚えてないですね」
「そうよね……普通はそんなものよね」
「主任はよく見るんですか?」
「ここ最近同じ夢を何度も見るの。内容は起きるとよく覚えていないんだけど、出てくる人は同じなのよ」
私の言葉に、部下は笑って言った。
「それ、本当に夢なんですかね?」
「え?」
部下の言葉に、私は何故かどきりとする。
誰かに呼ばれて部下は行ってしまったのでそれ以上の話はしなかったが、私の心にはその言葉がずっと引っかかっていた。
 




