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告白に無礼講

作者: C.コード

「俺と付き合ってください」

「イヤ」

今、俺は告白の真っ最中だ。人気のない道、同じ学校の同級生に告白を迫ったがあっさりと断られたところだ。

「その返事ももう何回目だろうな。」

「さあねー。」

実はこの告白、初めてではない。既に何度かリトライしているものの実らずにいる。

俺は確かに並々ならぬ興味を感じている。この女性に。

「だいたいあんたはどうして私なのよ? ほかにいないの?」

「うーん・・・他なんていないよ。ミユキじゃなきゃダメなんだ。」

「はー、どうしようもないわねー。」

恋愛に関する、以前どこかで立ち読みした本で色々と攻略法とやらを覗いてみたが実用的じゃないものばかり。

使えるものといえばマンガに出てくるセリフくらい。やや強引であればなんとか口にできるだろう。

しかし場が進展しないことにはせっかく乏しい知識からかき集めた秘策も無意味だ。

ここはなんとかしなくては。恋愛経験0でもなんとかするしかないのだ。


「そんなこといって、ミユキも彼氏いないんだろ?」

「私はね、『そういうところ』がイヤっていってるの。」

「『そういうところ』ってなんだよ?」

「なんていうか・・・全然本気じゃないっていうの。努力っていうか、そう、誠意!」

「せ、誠意? 俺が何かすればいいんだな!?」

「まったくもー! あんたほかに誰もいないから消去法で私しかいないんじゃないのってことを言ってんの!」

「ええー! いいじゃねーか、他の女なんて見てなかったんだからよ・・・」

「んで、友達は何人いんの?」

「えーとー・・・0です!」

「だめじゃん! 幼馴染の私しかいないってことじゃん!」

「いやーそれはー本当に、すまん」

一体俺はなぜ謝っているんだ。友達が少ないところを心配するのは余計なお世話というものだ。

「んー、数ある女性の中から、ミユキを選んで欲しかった、と?」

「・・・ッ!」

「いや違うな~ ミユキはそんなこときにする人じゃないし、体型がガリガリなのがダメなのか?」

「はぁー・・・あんたは私のことなんにもわかってないのよ わかろうともしないじゃない。」

「それをわかるようにするためには告白が通らなきゃ・・・だろ。」

「だいたい私、あんたの趣味もなんにもしらないわよ。付き合ってもなーなーで終わりそうじゃない?」

「確かに・・・俺はテレビもみないしモニターとにらめっこばかりの毎日だけどな、そんな俺にしかできないこともあるんだぜ。」

思いのほか会話が伸びてきたので早くも秘策を出してみることにする。早すぎるって?

出し惜しみして腐らせるよりはまだいいだろ!

「好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです。

好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」

「んなっ! あんた何言ってんのよ!」

「それはこっちのセリフだ。こう言われると世の女性は弱いんじゃなかったのか!?」

「どこぞのテレビの特集とか突然もって来なくていいのよ! 非現実的だわ!」

「うーむ、ん? よくテレビの特集でやってたやつだって知ってたね。」

「えっ、あ、いやっ、その・・・たまたまよ! そう、たまたま見ちゃって!」

「非現実的なネタを覚えてるなんて信じられんなー。」

「うーっ・・・それはそうとあんた、テレビ見てたなんて珍しいわね?」

「えっ、それはそのえーとなんといいますかそのえーと」

「なんで見てたの?」

俺としたことが柄にもないことをしていたのが露呈してしまった。

「ちょっと夜中に目が覚めちゃってね。ほら深夜番組でやってたじゃない。」

「ほら、何意味深なことしてたの。」

「深夜アニメ見てました」

「やっぱり・・・ そんなんだから友達いないのよ。」

「返す言葉もございません。」

「もっとマトモになりなさい。」

「善処いたします。」

「これはやらないパターンね。」

「『行けたら行く』よりはよっぽど信用のあるセリフだと思うけどなあ。」

深夜アニメ位見たっていいじゃないか。【ブレイドアーツオンライン】かっこよくて面白いんだぞ。


「モノは試しって感じでさあ。一回OKしちゃいなよ。」

「試しってなによ。私はイヤよ。」

「きっついなー。イヤっていうと悲しいんだぞ。」

「ならもう私に言わせないで。」

「なら言わなくていいぞ。俺と付き合ってください。」

「イヤ!」

「ああー。ガラスのハートに傷がー。」

「もっと傷ついていつか誰かと本気の恋でもすればいいじゃない。」

「何言ってんだよ。今ミユキと本気で向き合ってるじゃないか、俺は。」

「今までのがあんたの本気なの?」

「そうだ。恋愛経験は0だけどな。」

「じゃあ、ひとつだけ条件飲んでくてたら、付き合ってもいいよ。」

「ほ、本当か!?」

「今の根暗な生活やめて。」

「すまないそれはできない。」

おっと、つい口が進んでしまった。悩みに悩んだふりをして相手にも妥協してもらう場面だったんだが。

「それって本気じゃないってことでしょ?」

「いやー、これは本当に・・・」

本当に、何だ? 言葉は、ストレートな言い方はあるが言い出せない。

ただ言えばいいだけなのに出てこない。『これは譲れない』って。

確かにここを変えられないってことは本気じゃないってことのように思われても仕方ないかもしれない。


「・・・それは、厳しい。」

「やっぱりね、そういうと思ったわ。」

「君と付き合うことになったら、根暗生活も長くは続かないかな。」

「えっ」

「えっ」

「本当?」

「え、えああああ、うん」

「そ、それならちょっとくらい・・・」

「ちょっとくらいじゃ困るなー。俺が本気なんだから君も本気じゃないと。」

「図々しいわね!」

「そうか? なら、ちょっと付き合ってみて、それから答えを聞くよ。」

「あんたがどうしてもっていうから、ちょっとだけね。」

「ありがとうございます!」

「あーあとそういう童貞臭いこともやめなよ。ちょっと恥ずかしい。」

「失敬だな。俺だって一生懸命なんだぞ。」

「だってそうじゃない。臭いものは臭い。」

「またこころに刺さる言葉ばかり。良くないよ。」

「ごめん、つい癖で・・・って私のことはいいのよ!」

「良くない。直したほうがいいよ。」

「・・・そ、そんなにひどかった?」

「ほかの人にはもっと響くと思うぞ。」

「ごめん、ちょっと気をつける。」

「少し空気も悪くなったし、飯でも食べに行こうか。」

「今から? もう夕方だし・・・」

「またにはいいだろ。ほら、行くぞ。」

「う、うん。」


なんだろう、成功したのに失敗したみたいな、変な感じだったな。しかしようやく掴んだこのチャンス。

逃さないためにも頑張ろう。 ちょっとじゃなくてずっとになるまでこの道は終わらない。

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