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警告

 片方の耳を押さえてしゃがんでいる彼女のーーーまだ名前を思い出せない女性の直ぐ側の正面に、俺もしゃがみ込んで考えてしまった。何と無くだが、浄化委員会と対決してしまうような気がする。ヤーメーレーとの自分の声も聞こえた気がする。


 互いの膝が実際に触れ合っていて、彼女が俺の目を覗き込むように見ているのに気が付いた。これって何だか変だよな。周りに大勢の人が立っている中で、二人してしゃがみ込んでるのって可笑しくない?

 だが、どう言う訳か立ち上がろうとしない彼女。


 そうだ、そんなことより、アタルが言っていた名指しで俺の事を書いたメッセージが見たい。大体、アリスが何を俺に確認したいのか具体的に解らないままで、ノーズロで出向くのはちょっと無防備過ぎる。


「ねぇ、君って………悪い………名前なんだっけ?」


 名前が解らないのが不便過ぎた。怒るかな?


「え…………? ちょっとーーーーーーー!! すんごくショック!! 私ってそんなに影薄い? もう! 夕子だって、夕子!! 白の館で前に逢ったでしょ! シグマ君がアタルと何か喋ってた時、私と京華さんと金太郎とーーーーー!!」


 やっぱり、怒って怒鳴って立ち上がって、そんでもって蹴られた。


「あ〜あ〜あ〜、夕子ちゃんか。アハハハハハ、そうだよ、夕子ちゃんだよ、アハハハハハ」


 周りの人が驚いたように見下ろす中で、バランスを崩し、ひっくり返ってエヘラエヘラと笑うマヌケな俺に、夕子のストンピングが入った。

 とにかく思い出したぜ、参ったね。


 俺と夕子は巨大スクリーンに繋がる端末で空いているのを探したが、やはり夏休みのせいだろう、どこもここも順番待ちだ。


「そうだ! 遊戯施設の中にも端末あるんだよね。けっこう隅っこで案外知られてないから、夏休みでも空いてるかも」


 夕子が思い出してくれた。

 二人で、中央広場から一番近くの遊戯施設ーーーキャラゲーとは違ったゲームを提供している施設に飛び込んで行く。

 ここにも何度か足を踏み入れたことはあったが、バーチャルペットを育てるゲームらしく、性に合わない俺は直ぐに辞めてしまった。ーーーおっ、空いてる。


 数台の端末が設置されている施設の隅には誰も居ない。一つを選んで前に俺が座り、テーブル自体がディスプレイとなっているそれを覗き込むと、メッセージが上へ上へと流れ続けている。

 そう言えば、これを見るのって久々だ。大して興味がないから、すっかり忘れていた。

 画面の上の端っこに「裏」って表示があって、そこをクリックすると名前と番号だけがビッシリ表示された画面に変わった。


 どれだ? 俺のことかいてあるのって……。題も入れれるようにしてくれた方が見つけ易いのに。


 どれもが08から始まる番号ばかりだ。今は8月で夏休みだからメッセージを入れる人の数も膨大なのだろう。06とか07から始まる古い番号は見当たらない。

 暫く見ていると全部が0805何がしとか、0806何がしと言うように、今日に近い番号ばかりが並んでいるのが解った。凄いね、ここ2〜3日に書かれたのだけで埋まってるよ。夏休みって、こうなるんだ。


「あっ! これ!」


 そう叫んだ夕子の声が直ぐ隣で聞こえ、その声の方を思わず向いたら、夕子もこっちを向いた時だったようで、唇が唇に触れてしまった。互いに、瞼の筋肉がつってしまうほどに目を開いて固まった。キスしたまんまで、どう動いたらいいのか解らない。


「キス……した……シグマくんと」


 どちらとも無く離れたが、目の焦点が合わないほど傍にいる夕子がそう言ったので、黙っているのも変だと思い、俺も言った。


「舌は入れてない」


 そして変な間があってから、何事も無かったように視線をディスプレイに向け直した二人。


「こっ、これ……0801から……だ………わっ、若い番号……だ」


 夕子がディスプレイを指で示してくれている。


「なに吃ってんだ? 声も微妙に震えてるし……だ、だ……って変だろ」


 そう言って、0801の番号をクリックすると、現れましたよ、元凶のメッセージが。





 僕がキャラゲーと呼ばれるゲームで遊んでいたら、背が高くて何と無く怖い男の人が上から覗いてきて、何かを投げつけてきた。ビックリして振り返ったら、ちょっと来いって言われて、それから僕のことを変態だとかキモオタだとかいっぱい悪口言ってきて、凄く怖かった。もう、ここには来ません。楽しい所だって友達に聞いて来たのに、がっがりです。



「なにこれ? 背の高い怖い男の人って、シグマ君のこと?」

「……らしいな」


 呆れながら読んでいると、そのメッセージには異様なほど沢山の応援レスがついていた。勿論、俺への応援ではない。


「うわ……凄いレス……なに? 頑張れ? 負けるな? ちょっと次の見てよ。私が守ってあげるから心配しないで遊びにおいでって書いてある」

「……だな。…………俺はどうしようも無い苛めっ子らしい」

「あっ、このレス……あれはシグマって人だよって書いてる。あーーーーーーーー、その後から付けられたレス……もうメチャクチャ」


 その通りだった。俺の名前が解った途端、レスの勢いに拍車が掛って内容もエゲツない。


 猫組のシグマって成績がいいもんだから調子に乗ってるみたいだよ。とか、以前から全然喋んないし、めっちゃキモい奴。なんてのは比較的良い方で、しまいには変態だとか、変質者呼ばわりを延々にされていた。そんなレスが、これでもかって言うくらい続いて、くっだらない単語が目についた。早漏で短小で包茎だそうだ、俺は。

 夕子もそのレスで目が点となり、俺を横目でチラチラ見ている。


「言っておくけど、俺、剥けてるから」

「そっ、そんなの………どっ、どうだっていい………そんなことより変質者ってなに? いったいなにをしたら変質者呼ばわりされる訳?」


 こんなくだらない事で恥ずかしがってはダメだとでも思っているのか、ムキになって俺に睨みつけるような視線を向けてくる夕子。俺も腹が立っていた。


「路上でさ〜、ねぇ彼女って後ろから声掛けてね、振り向いたところでさ〜、ガバってコートの前をはだけちゃって、モロ出しのギンギン」


 と言ってやったら、マジな顔で後ずさりやがった。


「ーーーな〜んて事するか!!」

「……だよね………でもさっきキスして………舌は………って言ってたし」

「はぁぁあああ? あのね、俺が変質者だったら、もう、とっくの前にレロレロしてるわ。口の中だけじゃなくって、言葉にできない場所も全部レロレロだ!」


 そんなどうでもいい事を言いながらも、全部のレスにザーーっと目を通していると、最後のレスに行き着いた。

 それはいきなり「警告」と書かれたものだった。




 警告

 シグマさんへ。

 この魔法の街に出入りをする以上は法律を知っているのでしょうね。他人を傷つける行為、それが肉体的であろうが精神的であろうが、絶対に許されません。それを、あなたは知っててやったのですよね? 法律を知りませんでしたなんてのは通用しませんよ。

 私は浄化委員会の雲雀です。

 以前、メアリーと言う女性から忠告されたはずですよね。行動が目に余ると。

 あなたのことはずっと気にしていました。いつか問題を起すだろうと思っていました。酷い人ですね。

 最終的には追放処分となるでしょうが、その前に、みんなの前で謝罪をしてください。

 あなたが、一人の純粋な男の子を酷く傷つけ、この魔法の街全部に泥を塗ったのです。男なんだから当然責任を取るべきです。絶対に逃げないでください。

 先ず、問題が起きたキャラクターゲームの中で謝罪をするように。その上で、実際の謝罪が必要かどうかを検討します。あなたは猫組ですよね。私も、この問題を知って直ぐに猫組に入りましたので、先ずは猫組の中で謝罪してください。

 追伸:このメッセージにこれ以上のレスを付ける事を禁止とします。浄化委員会 雲雀


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