汚れ屋の京
連投です。誤字あったらすみません・・・。
「離してっ!」
若い女性が嫌がるように大声で叫ぶ。
「ま、待ってよ!久美ちゃん!俺のどこがいけないんだ!」
ここにもまた、若い男が1人。彼は若い女性の右手首を力強く掴み必死に問いかける。
「貴方って最低よ!もう顔も見たくないっ!」
その喧嘩につられるように周囲の人がざわつき始める。
「おいおい、痴話喧嘩か?」
「うっわぁ男の方マジ引くわー・・・。」
ヒソヒソと彼らを眺めながら男を罵る野次馬達。そんな中、人ごみの中から別の男が現れる。
「久美ちゃん、大丈夫か!?」
女はその声を聞くや否や、その男の方を振り向き嬉しそうな表情を浮かべる。
「悟さんっ!」
「なっ誰だアンタ!」
「お前か・・・久美ちゃんを泣かせた奴は!」
「お、お前かあああ!!久美ちゃんを誑かした奴はあああ!」
男は悟に殴りかかる。悟はその拳を紙一重で避け、男の腹をめがけて拳を精一杯振るう。ドッ・・・という鈍い音と同時に男は後方へ吹き飛ぶ。
「がっ・・・!」
「お前みたいなクズが、久美ちゃんを幸せにできないのさ。今度久美ちゃんに手を出したら絶対に許さんぞ・・・。さぁ、行こう久美ちゃん。」
「はいっ・・・!」
久美は嬉しそうに悟の腕を掴み、満面の笑みを浮かべ夕焼けにより赤く染まった商店街へ消えていく。
「あーあ。まぁ、仕方ないよなぁあんな男じゃ。」
「やっべもう帰らねぇと。」
野次馬達は散り散りになり、やがて鈴と道端で仰向けになった男だけが残った。
(なんなのだこの男・・・。)
(まるでわざと吹き飛んだように見えたが・・・。)
鈴は不思議そうな目で男を見る。暫くしてから男は鈴に話しかける。
「あのースミマセン。」
「な、なんだ。」
「あの2人、もういませんよね?」
おかしなことを聞く奴だ、と思ったが鈴は正直に答える。
「あぁ、2人の姿も周りの野次馬ももういないぞ。」
「お、そうですか。ありがとう御座います。」
そう言って男は何事もなかったように立ち上がる。すると彼のポケットから携帯の着信音が鳴る。
「お、電話だ。」
彼はポケットから携帯を取り出す。
「もしもし、どうですか?」
「助かりました!おかげで久美と結ばれました!えーと・・・先ほどけっこう力強く殴ってしまいましたが・・・大丈夫でしょうか?」
電話からは、先ほどまで彼と争っていたはずの悟という男の声が聞こえる。
「いえいえ、俺はお客様のために体を張っただけです!報酬さえ貰えれればいいのです!ウヘヘ!」
「いやー助かりました。また何かあったらお願いしてもよろしいでしょうか?」
「分かりました!ですが今の連絡先は変えてたほうがいいでしょう。また後日伝えますよ。汚れ屋のご利用、お待ちしております!でわ!」
「ありがとうございます!」
「・・・お前、わざとなのか・・・?」
「?・・・あぁ、さっきの見てたんですね。えぇ、わざとですよ。」
「・・・。」
「おぉっとそろそろ帰らないと・・・あ、俺はこれで失礼しますね。」
「あぁ・・・私もそろそろ帰らねば。」
あたりはすっかり暗くなり、2人は帰路を進んでいく・・・・そう、2人同じ道で。
「何故ついてくるんだお前は!」
「えぇっ!?いや帰り道ここなんですけどぉ!?」
「あ、そ、そうなのか・・・すまない。」
「いや大丈夫だよ・・・それにしても。」
男は鈴の隣に来て彼女をジィッっと見つめる。
「ふむ・・・どっかで見たような・・・?」
鈴は彼を訝しげに見る。
「どうした・・・?」
「あ、思い出した。君の道場着に書いてる道場の名前。俺の事務所の後ろの道場か。」
その言葉に鈴はハッとする。
「あ・・・あぁ、お前か。道場の後ろに引っ越してきた奴というのは。」
「おう!汚れ役や嫌われ役なら何でもおまかせ!汚れ屋の九打 京というぜ!君も何か困ったことがあったら相談しにきてくれ!」
「私は・・・私は花華 鈴。花華道場の娘だ。よろしく頼む。」
「鈴ちゃんかぁ!いやー美人さんだねぇ・・・あ、俺のことは京でいいからね。」
軽い男なのか。私は少々警戒するも京に1つ尋ねる。
「京、先ほどお前はわざと吹き飛んでいたが・・・あの拳を腹に受けてほぼダメージは受けてない様子だったが・・・。」
「あぁあれね。単に自分から吹き飛んだだけ。後はちょいと演技を加えればあたかも彼が全力で殴って俺は吹き飛んだように見えるだろうね。しかしよく見破ったねぇ。」
はー。と感心して鈴を見る。鈴はため息を使いなら答える。
「なら演技が甘いな。見る人によっては完璧に見破られるぞ。」
「ふむ・・・もう少し精進が必要か。」
京は無言で悩み続け、それを見ている鈴。改めて見ると京はそこそこ顔は整っているようにも見える。黒髪でメガネを掛けているがおそらく偽装だろう。髪の間から茶髪が見えるし、メガネも度が入っていないところを見ると伊達めがねか。
「おっともう着いたか。」
気づけば2人は道場の前に付いていた。京は道場前をそのまま右に周り、鈴はそのまま道場に入ろうとする。
「あ、鈴ちゃんまたねー。明日くらいにでも改めてご挨拶するよ。」
「分かった。歓迎しよう。」
その時、丁度街灯が付き、その周りを照らし始める。すると京は鈴をまた見つめだし、
「ふむ・・・道場着で少し大きく見えるが・・・Dか。」
その日京は天高く打ち上げられた。
こういうの書いてみたかったんですよねー。次から本編に入ります!