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有り得ない再会

 栄巣と綾瀬は再会する。これは本当に偶然なのか、偶然でないなら何故

 彼女の狙いは?そして物語はクライマックスへと、二人はまた新たな

 世界へと進んで行く

     2012年2月、それは突然やってきた。消えたはずの予感だった。栄巣

    の職場で卒業期に退職した学生パートスタッフの替わりに新規のバイトの採

    用が決まった。

    「きれいな女の子やで」

    と主任が言ったが、栄巣はさほど興味をもたなかった。しかし出勤してきた

    若い女性スタッフに会い栄巣はとまどった

     「綾瀬さんです」

     「よろしくお願いします」

    主任に紹介された彼女は初対面の様に挨拶した。

     「星野です。よろしく」

    栄巣も初対面の様に返した。

    ユニホームの帽子とマスクで目元しか見えないが綾瀬逸美に間違いなかった

    初対面を装う必要など何処にもなかった。しかしビデオ店の時同様気軽に声

    をかける事が出来なかった。

     綾瀬もまた栄巣を認識しているに違いない。これは偶然の再会などではな

    い。なぜなら彼女は栄巣との再会にまるで驚いてる様ではなかったからだ。

    綾瀬はいったい何を企んでいるのだろうか、しかし同じ部署といっても作業

    場は別で綾瀬と顔を合わせる事はほとんどなかった。たまに顔を合わせても

    職務上の会話以外しなかった。

     ビデオ店の時同様、こうして時間だけが過ぎいずれ彼女は姿を消すだろう

    綾瀬の事は嫌いではない、むしろまだ栄巣には彼女に対する気持が十分にあ

    るのだ。しかし自分達の時間はもう戻らない。いや戻ってはいけないのだ。

     栄巣は自分が何にこんなに頑なになっているのか分からなかった。彼が守

    ろうとしているのは綾瀬なのか、それとも家族なのか、とにかく綾瀬とは距

    離を置くのが最善であると栄巣は考えた。たとえそれが綾瀬を傷付けている

    としても、それが自分達の今のあるべき姿なのだと。


     何事も無く一ヶ月が過ぎた朝から妙に穏やか3月中旬のの午後、晴天の空

    が一転して黒雲に包まれドシャ降りの雨になった。

     「わー・・えらいこっちゃ」

    栄巣は6階のベランダに走った。セントラルキッチンでは全店で使用してい

    るタオルを洗濯しているのだ。タオルは6階のテニスコートほどのベランダ

    に干しててあるのだベランダに走り出た栄巣は20枚ずつタオルを掛けてあ

    る物干し台を持ち屋内に走った。物干し台は5台もある。物干し台を持って   

    走る栄巣を建物の中から綾瀬が手を出して待っていた。建物とベランダには

    50cmほどの段差があり出入りが大変なのだ。建物の中から物干し台を受

    け取ってもらえると助かる。

     差し出した物干し台を彼女は受け取り建物の奥に運んでくれる。

    「ありがとう」

    栄巣は言ったが綾瀬は無言でしかも無表情だった。不意に光った稲光がその

    無表情の綾瀬を照らす、いやな予感がした。

     最後の物干し台受け取った綾瀬が建物に上がりうとする栄巣に手を差し出

    した。

    「え・・・」

    この一ヶ月間、綾瀬はずっと無表情だった。栄巣だけでなく誰に対してもだ

    った。しかし今、栄巣に手を差し出している綾瀬は微笑んでた。

    バレンタインの夜最後に栄巣が見たその微笑に似ていた。微笑む綾瀬の前に

    栄巣は立ち尽くしてしまった5秒・6秒ドシャ降りの雨が栄巣に吹き付ける

    何時までもこうしては居られない栄巣は綾瀬の手をとった。

    小さくて美しく柔らかい。そして冷たい綾瀬の手。あの夜、彼女の手を握っ

    てから何年経つだろう。そう思った瞬間、綾瀬は栄巣を押し戻した。予想も

    しなかった彼女の行動に栄巣はバランスを崩してドシャ降りの雨の中に尻餅

    をついた。

     また稲光が綾瀬を照らした無表情いや彼女は栄巣を睨んでいた。ドシャ降

    りの雨の中に倒れた栄巣には綾瀬の頬を伝うものが雨なのかどうか分からな

    かった。


     ドシャ降りの雨から2ヶ月経った、その後も綾瀬は無表情のままだった。

    綾瀬はいったい何をしようとしているのか、この間の事もある。ビデオ店の

    時のように何事も無くという訳にはいかないだろう。   

     ゴールデンウイークも過ぎた金曜日、仕事もひと段落した栄巣は社員食堂

    で弁当を広げていた。休憩時間は部署によってさまざまで今は彼の他に数人

    の社員が食事をしている、そこに綾瀬がやって来たのだ。帽子とマスクを取

    って栄巣の向かい側に着く。勤務時間にずれがある綾瀬のマスクを取った顔   

    を社内で初めて栄巣は見た。

    {美しい・・これほどの美人だったのか}

    周りが微かにざわついた気がした綾瀬の美しさは社内で評判になっているの

    は知っている。

     内心の動揺を隠しつつ栄巣は弁当を食べ続けた。正面から覗き込むように

    微笑む綾瀬にに目を合わさぬようもくもくと食べ続ける栄巣に

    「マスター・・ですよね」

    綾瀬が栄巣の店でバイトしていた事は誰にも伝えていなかった。あくまでも

    初対面を通してきたのだ、それは綾瀬も同じだった。

    今度は周りがはっきりとさわつく「え・・」という声も聞こえた。

    栄巣は箸を止めたが視線を上げる事ができなかった。再び箸を進めようとし

    た時

    「答えて下さい」

    「僕はもうマスターではありません・・・アロームは4年も前に廃業しました

     今はそこに眼科ができてますよ」

    「アロームでバイトしてた綾瀬です」

    周りが大騒ぎになっているが、シリアスムードの二人に誰も話しかけはしなか

    った。

    「知ってます・・・きれいになった・・いくつにな・・」

    そこまで言って栄巣は綾瀬を見た彼女は満面の笑みを浮かべていた。箸を置き  

    壁に貼ったカレンダーを見た極度の老眼だが遠くのカレンダーは良く見える

    「誕生日おめでとう・・・なにもないけど」

    「いいんですよ覚えててくれたんや」

    栄巣は真っ赤に赤面して食事を続けた。周りの視線が気になる食事は喉を通ら

    ない。

    「ドルチェット家族って覚えてます?・・舞ちゃんって女の子連れてきてた」

    常連で毎度ドルチェット・ダスティーというイタリアワインを注文するお客さ

    んをスタッフの間でそう呼んでいたのだ。

    「中村さんていうねんけどな」

    「こないだ市内で会ったんですよ・舞ちゃんなんか・・」

    「綾瀬さん・・ここは株式会社クックベーカリーの社員食堂です」

    綾瀬の顔から笑みが消えていく

    「昔の僕らの職場の話に花を咲かせるのは・・他の社員を不愉快な気持にさせ

    ると思う。慎んだほうが」

    「ほんだら場所変えて話しましょ昔みたいに二人だけで酒飲みながら」

    {それ言うちゃいますか}赤面しすぎた栄巣はもうろうとなり始めていた

    「今はもうプライベートで女性とサシで飲むような事はしてないんです」

    「もてへんからなー」

    「ほっとけ!」

    綾瀬がニヤリとした  {いやな予感・・}

    「好きって言うてくれましたよね!」

    {な・なんて無慈悲な}「おお~~~」{周り盛り上がり過ぎー}

    「せ・・せやけど・・綾瀬ふったやん。頭おかしいんちゃうかロリコンエ

     ロじじいって言うて」

    「そんなん言うてない!!」

    「言いました!!」

    「うちもマスターの事・・」

    「ゲームですって言いましたよね」

    「なんて言いました?」

    「ゲーム・・・」

    バタンと椅子を倒して綾瀬は立ち上がった。うっくり食堂を出て行き階段を

    下りて行く足音だけが食堂に残った。 

    「星野君追いかけやんとあかんのんちゃう」

    同じ部署の朝倉さんが言う「韓流ドラマみたいやなー」誰かが言った

    ト・ト・ト・ト・階段を駆け上がる足音が聞こえてきて綾瀬が戻って来た

    栄巣の傍らに立ち椅子の足を引っ張り上げた。

    ドスンと栄巣はフロアーにひっくり返った、持っていたおかずのヒジキの煮物

    が彼に降りかかる、ひじきまみれの栄巣に綾瀬は馬乗りになり拳を振りかざし

    た。{ま・・マジで}しかし綾瀬の拳はとんでこなかった。

    綾瀬の頬を大量の雫が流れる

    「うちは・・うちは・・」

    綾瀬はそのまま意識を失った。栄巣は狼狽した。ひじきまみれの体で綾瀬を抱

    き寄せた

    「綾瀬・・綾瀬・・どうした?」

    「誰か・・誰か・・」

        














    











    

Again御購読の皆様にお知らせです。この物語は私、綾瀬逸美

がジャック致しました。既に第9部より進行は私の管理下にあります

8部までの著者、児島文夫はまもなく身柄を拘束し速やかなる手続きにより物語を引き渡して頂きます。誠に残念ではありますがAgainは9部をもって、ひとまず完結させて頂きます。しかし完結の手続きは今しばらくは致しません、なぜなら、Againには未だ本来描かれなければならない事が残っているからです。今後私、綾瀬逸美による「ジャック」に物語は移行させて頂きます。「ジャック」の進行に伴いAgainには物語が付け加えられます.尚、「ジャック」完結後、自動的にAgainはジャックに吸収されます。読者の皆様には大変な御迷惑をお掛けして申し訳ございません。何卒、御了承下さい

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