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皇帝に成りたくない男の不本意奴隷ハーレム  作者: サイリウム


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42:お出かけ!


「おぉ~! すごいぞご主人!」


「お城の窓から見えていたけど、平時でこの賑わいは凄いわよねぇ。」


「でしょう?」



そう言いながら、自身の頬が少し緩んでいることを自覚する。


ついさっきまで行われていた三男との会談は、非常に良い結果で終えることが出来た。


まぁザーン兄上が私へのヘイトをあまり持っていない、というのが成功の理由だとは思うのだが……。『鑑定』で適宜その思考を覗きながら対応を合わせていくことで、こちらの求める話に誘導していく。


そして相手の欲望の核を刺激し、同意の言葉を引き出す。


『鑑定』に頼り切ったものだが、上手く行ったと言っていいだろう。彼の為に今後動く必要が出てくるが、こちら優位での契約を結べたのだ。“頭の中”を覗き込んで確認したが、裏切られることはそうそうない。今はそれで満足することにしよう。



(でもなんかさっきから悪寒がするんだよな。……何かやらかしたか?)



そんな予感を軽く頭を振ることで払いながら、視界を賑やかな方へ。自身の生まれた場所であり、この伯爵領の中心、領都コンバリオン。その商業区画の大通りへと向ける。


実は今。会談終わりの気分転換って理由で、少しお出かけ中なんですよね。



(まぁ、それ以外の理由もあるんだけど……。ライカがちゃんと指示通り動いてくれたからね。そのご褒美を買いに行くって感じ。)



あらかじめお願いしていたことではあったが、三男との会談のさなか、ライカには『分身』でお手伝いをしてもらった。激昂し立ち上がろうとした彼を抑え、その首筋に剣を添えることで動きを封じたってやつね。


実はアレ、結構アドリブに近くて……。


そもそもの話、自身の鑑定は“視界に収まっている”ことを条件に発動出来る能力だ。つまり目の前に座る人と会話しながら適宜修正していくってことは出来るんだけど、あらかじめ全部覗いて計画を立てて、後は台本通り進めるってのは難しい。


つまりライカに『こういう事するかも』とは伝えていたが、実際に本番で出来るかは未知数だったワケ。



(それをしっかり成功してくれたのなら、頑張ってくれたお礼として何か送るのは必要でしょってことで。後はまぁ……、お詫び的な?)



この“コンバリオン”。城下町でもあるので、城からの移動時間は短く十数分程度。


奴隷である2人が一緒なので、あまり長時間の滞在は出来ないんだけど……。やはりすっごい解放感。ライカもリシエラさんも同様のようで、表情に明るさが戻っているのが見て取れる。


何せ今の城は継承戦のせいでずっとピリピリ。そんな息の詰まる場所にいれば参ってしまうし、2人は奴隷という身分から自由に歩き回ることは難しい。ライカが誰かにちょっかいをかけられたり、リシエラさんが面倒ごとを起こす可能性もあったため、基本的にずっと部屋に籠って貰っていたのだ。2人の責任を持つ“雇用者”としても、気分転換の場を整えるのは必須だった、というわけだね。


……まぁ、こっちに付いてくる『暗部』の眼が無ければもっと良かったんだけど。



(やっぱり、警戒されるよねぇ。)


「エド様?」


「っと、すいませんリシエラさん。何かありましたか?」


「ちょっと確認したいことがあったんだけど……。“目”もあるしやめておくわ。んで、今日は何処に連れて行ってくれるのかしら? 私としては例の本屋が気になる所なのだけど……!」


「ご主人、肉!」



はいはい、ライカはお肉屋さんでリシエラさんはR18の発禁本ですね。……落差ヤバ。


2人の要求に応えるため移動を開始しながら、更に思考を回す。


先程リシエラさんが指摘したように、現在私達には次男陣営の暗部が張り付いている。どうやら彼らにとっても『自身と三男が密談を行った』というのは注目に値するようで、普段よりも多くの人員がこちらの諜報に割かれているようだ。


さっき少しだけ“視界に入って”くれたから覗かせて貰ったんだけど……。案の定やる気が凄かった。



(まぁ、完全に“閉じてた”もんなぁ。)



我が母上である『ミトラ』が気を利かせてくれたおかげで、自身の元で働いてくれている護衛部隊の数はかなり増加している。


そんな彼女達によると、『部屋一つなら勿論、今回のような御行楽の際でも完全な防諜が可能です。』とのことだ。


まぁ流石に何でもありなスキル相手となると情報が抜かれる可能性があるそうだが、少なくともさっき行われていた三男との会談において、彼らが所属する“次男陣営”は何の情報も得られなかったことになる。


そんな監視対象の片方が、急にお外に遊びに行ったとなれば……



(調べるよなぁ、ってことで。……まぁそれが目的ではあるんだけど。)



情報が手に入らないとなると、相手が警戒度を引き上げこちらが対応不可能な程の人員補強や予算増額を行ってくる可能性が高い。


何せ隠すということは、敵に知られてほしくない情報がそこにあるということ。次男陣営からすれば我々と長男が手を組んだと錯覚し『早く対応策を講じなければ!』となってしまう可能性もあるのだ。あちらが急いて全面攻勢を仕掛けて来れば、長男陣営もこれを機に攻め込んできてもおかしくはない。



「そうなると、お兄様とのお話もご破算になっちゃうものねぇ。」


「えぇ、ですね。」


「せっかく『エド様とザーンお兄様との兄弟ラブラブ禁断えっち』を勝手に販売していた作者を見つけたのに、捕まえに行く作戦がパァに成っちゃうわ! もっと【自主規制】なもの書かせたいのに……!」


「……リシエラさん???」



あ、あの。確かに長兄が攻勢に出ればこちらに対処する方法が少なく敗北濃厚になるため、味方にしたザーン兄上も離反し元の状態に戻る、って話ですよね?


周囲に『暗部』が要るので話を誤魔化すのは解りますけど、なんでわざわざその話題チョイスするんですか!? え、今から本屋行くしちょうどいいかな、って? ……まぁそれはそう。



「……え!? ご主人のもあるのか!?!?!?」


「え、えぇ。正直父のように感想送り返すレベルの寛容さは無いですが、見えない所でやってくれるのなら別にいいので。」


「ご当主様が明確なセーフで、エド様がスルー。それ以外が絶許! って感じだったわよね? でも普通に全員の出てる当たり凄いと思うわ、この領地。」



そう言うリシエラさんに思わず頷いてしまう。


父が何を考えているのかは不明な為『本気で取り締まればすぐに消える』のが、このナマモノ文化だ。確かにこういったものが文化の発展に寄与し、お上が寛容であることがそれを後押しすることは理解しているのだが……。


逆に言うと、統治者が舐められてしまうというデメリットも抱えている。



(上が舐められれば、下は好き勝手し始める。この世界でも、前世でもそれは同じ。)



人望で治めるタイプならばまた話は別だが、この世界の貴族は基本的に恐怖と武力による統治だ。何せ魔法やスキルのような『使い方次第では銃よりも脅威』な存在をそこら辺の農民でも扱えてしまう世界なのだ。


バカなことをすればどうなるかを延々と見せつけることで『従う』以外の選択肢を排除するタイプ。奴隷の酷使や超えられない身分差みたいなのも、その一つだ。


父もそう言った苛烈さは持ってるけど、これに関しては放置。……飴と鞭みたいなもんなんですかね?



「ま! “知識奴隷”としては現状丸く収まっている以上、口出しする必要なしって感じかしら? ちゃんと『やり過ぎたら消す』ってのはやってるんでしょうし。」


「ですねぇ。性的な奴は無法地帯ですが、政治批判とかそういうのは一切見たことがありませんし。検閲や統治は正常に機能しているのかと。」


「はぇ~。」



気の抜けた声を出すライカを余所に、少しだけ『鑑定』を起動し周囲を探る。


そして即座に“対象者”を複数見つけ、その思考の中へ。ざっと中を覗いてみるが……、やはり本来の目的である『2人の息抜き』を表向きの理由と捉え、裏で何か企んでいると考えているようだ。どこかに移動し書置きを残すことで長男陣営と連絡を取ったり、別場所で会談があるかもしれないと警戒しているみたいだね。


……う~ん。ちょっとコレは引きはがしたり、諦めてもらうのは無理そうか。あちらの陣営に勘違いしてもらう材料を何処かに転がすのは確定として、出来るだけ気にしないようにしながら気分転換と行きますか。



「っと! せっかくの機会だから、色々と買い込んじゃいましょ! 個人的にご主人様がどんな風に書かれてるかとっても気になるわ! ねぇねぇエド様! 目の前で音読してもいいかしら!」


「やめてね? あとおそらくですが、かなり脚色されてると思いますよ? 私の母が元皇室だったのは公開されていたはずなので『皇帝の血を引いたプリンス』みたいな感じで書かれてる筈です。」



こう、クールなイケメン系美男子。みたいな。


昔見かけてしまったものにはなるが……。当時から猪武者と有名だった長兄がクールな私にほだされて何やら、というのが主流だった気がする。勿論長兄はブチ切れていたし、次兄三兄は触れずにスルー。母たちも総じて目を細め、何故か父だけいつものようにうんうん言いながら講評を送りつけるという結構な地獄が構築されていたので早々忘れられそうにない。


なのでまぁ、正直別人なのでそこまでダメージは無いというか。



「……そうなのか。」


「あら残念。ライカちゃんもご主人様のカッコいい所が書かれてたら是非読んでみたい、ってこの前言ってたしガックシよねぇ?」


「ち、違うぞ!!!」



はいはい、あんまり騒ぎ過ぎないでくださいね~。





更新が遅れ申し訳ございません。

明日、12時にまた投稿いたします。


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