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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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好きだから、嫌い

掲載日:2026/05/18

***BL*** 僕は兄弟が多い所為か、人より距離が近いと言われる。 ハッピーエンド



 その時、僕はもう、君を追い掛けてはいけないんだと分かった、、、



**********



 初めて藤田くんを見た時、格好良いなって思った。

 同じクラスで、たまたま同じ電車だった。

 朝が弱いのか、いつも寝ている。

 サラサラの髪が顔を隠していた。

 僕は声を掛けたかった。

 仲良くなりたいと思ったんだ。



 でも出来なかった。


 

 僕達は静かに仲良くなって行った。


 

 高校生になってから、初めての席替えは、中間テストの後。

 僕は真ん中の列の一番後ろ。彼は一つ前だった。彼の身体で前が見えない。

「先生!後ろと替わって良いですか?」

「ん?」

クラスの皆んなが振り返った。

「あー、、、そうだな。清水が見えないから、そこはチェンジだ」

僕が見えないって、、、。そこまで小さく無いと思うけど、、、。

 僕達は席を替わった。

 後ろからペンで突かれ

「ごめんな。俺、身体がデカいから、一番後ろの広い場所が良いんだ」

と笑った。


 それから僕達は急速に仲良くなった。



*****



「藤田くん!お早ようっ!」

そう言って、腕組みをしたら藤田くんはギョッとしていた。

「お、お早よう」

駄目とは言われなかった。

 だから、僕はそのまま腕を組み続けたんだ。


 僕は昔から、人との距離が近過ぎると言われていた。

 仲良くなるまでに時間が掛かるクセに、仲良くなると一気に距離が縮まる。

 小学生の頃も友達に

「近過ぎるっ!」

と怒られた。

 兄弟が多い所為なのか、末っ子だからか、僕はすぐに人に触りたくなるし、腕を組みたがる。


 藤田くんは、雰囲気が惠兄に似ていた。惠兄は、一番上の兄さんで、一番身体が大きくて、一番優しかった。

 小さい頃、兄弟が多かったから、僕の面倒を見るのは惠兄の役目だった。

 惠兄の下が、二つ下の和兄、更に三つ下に尚兄がいる。尚兄の五つ下が僕だった。僕と惠兄は十歳違う。


 体育の授業が始まる前、体育館で藤田くんの横に座った。身体の右側がピッタリくっつく位近い。

 藤田くんの反対側に天野くんがいた。天野くんに話し掛けようと顔を出すと、藤田くんは邪魔にならない様に身体を後ろに引く。

 僕は、思わず彼と腕を組んだ。

「清水は、相変わらず藤田と距離が近いな」

と言われて

「藤田くんは、僕の兄さんに雰囲気が似てるんだよ」

と答える。

「お兄さんがいるんだ」

「うん、三人。一番上の惠兄に似てる」

「へぇ。どんな所が似てるの?」

「身体が大きい所とか、優しい所」

天野くんはどんどん聞いて来る。

「歳、近いの?」

「惠兄は十歳離れてる。和兄は八歳。尚兄は五歳」

「だから、甘えん坊なんだ」

「えぇ、、、甘えん坊じゃ無いし」


 フッと笑う声が聞こえた。


 見上げると、藤田くんが横を向いて「笑って無いよ」って顔をしている。

 僕はちょっといじけて見せた。

「ごめん、ごめん」

と笑う藤田くんの顔は優しかった。



 昼休みに席を外していたら、僕の席はクラスの女子に奪われていた。むぅ、、、。

 仕方無いな、、、と思いながら、藤田くんの通路に飛び出た膝に座る。

「清水?」

「だって、僕の椅子取られたし、丁度良い所に椅子があったから」

「椅子なの?俺、、、」

と言いながら、座りやすい様に位置をずらしてくれる。こう言う所が好きなんだ。

「まぁ、良いけどね」

 藤田くんは僕が落ちない様に、お腹に腕を回して机に伏せて寝た。

「あ!清水くん。ごめんね、席借りちゃった」

と言って、僕の椅子を使っていた杜崎もりさきさんが身体を此方こちらに向ける。

 更に前の席に座っていた栗林さんが、杜崎もりさきさんの向こうから顔を出す。

「清水くんは、彼女いるの?」

「え?いないよ?」

「誰か好きな人は?」

「まだ、いないけど?」

「そっか、そっか、良い事聞いた」

とニコニコしている。何なの?一体。



**********



 清水は初めて見た時から、可愛かった。男子にしては、華奢な身体で、つい頭を撫でたくなる。

 もちろん、実際には触らない。

 でも、清水から腕を組んで来たり、身体をくっつけられてしまうと、俺も好かれていると勘違いしてしまう。

 俺は清水が好きだ。でも、清水は俺とは違う。

 クラスの女子からも中々人気があるし、彼の恋愛対象は女の子だろう。

 本人は気付いていない様だけど、あのふんわりした感じに、好感度が上がっているんだ。


 この間も清水がいない間に、彼の席に座っていた女子がいた。

 一つ前の席の栗林と友達らしく

「清水くんがいない間に座っちゃいなよ」

とか何とか言いながら、キャッキャしていた。

 きっと清水に気があるんだな、、、と、思いながら寝たフリをした。



「清水くんってさ、やんわりした感じが良いよね」

多分杜崎(もりさき)の声だ。

「顔も優しいし、好きだな」

「告白しないの?」

「うーん、まだまだ早いよ、、、」


 、、、全部聞こえちゃうんだけど、、、。

 清水はどんな女の子が好きなんだろう。



 誰かが俺の横に立ったと思ったら、いきなり通路側に出していた膝に座って来た。こんな事をするのは

「清水?」

「だって、、、」

だってじゃ無い、、、俺の気持ちも察して欲しい、、、。まあ、無理だけど。

 そう思いながら、清水の腹に腕を回した。いつも、俺と勝手に腕を組むんだ、これ位許せ。



*****



 休み時間、清水の近くに杜崎もりさきがいる。栗林の所に来たんだろうけど、清水にも話し掛けていた。

 

 あー、、、


と、思う。

 俺は何と無く、面白く無くて席を立った。

「藤田くん、どこ行くの?」

「自販機」

「僕も行く!」

「あ、私もジュース買いたい」


 はぁ、、、。清水は嬉しいけど、杜崎もりさきはちょっとな、、、。


杜崎もりさきが言い、栗林と清水が立ち上がる。

 廊下に出ると、俺の後ろを清水と杜崎もりさきが立ち、その後ろを栗林が歩く。

 階段を降り、一階の自動販売機の前で俺がジュースを選んでいると、後ろで

「清水くんはいつも、リンゴジュースだよね?好きなの?」


 、、、好きじゃ無ければ、買わないと思う、、、。


「うん、パックのジュースじゃ無いと飲み切れないしね」

「そっか、美味しい?」

「美味しいよ」

「じゃ、私もそれにしようかな」


 ゴトンッ!


と音を立てて、俺のジュースが出て来た。

 俺は、ジュースを取り出し口から拾うと、横にズレる。

 清水の後ろに杜崎もりさきが張り付く。

 並びながら清水に接近して、そっと背中に手を添える。顔を出し、彼が何を買うかチェックしている。

 栗林が俺の顔を見た。


 思わず視線を逸らす。


 清水は、いつもと同じリンゴジュースを買った。

 杜崎もりさきはリンゴジュースにするか、他のジュースにするか悩んでいる。


 早くして欲しかった。


「どうしようかなぁ、リンゴジュースにしよっかな、、、」


 栗林は隣の自動販売機で、さっさとジュースを買った。


「うん!リンゴジュースにする!」

そう言って自動販売機にスマートフォンを当てる。


 清水と杜崎もりさきが教室に向かう。俺と栗林は何と無く並んで後ろを歩いた。

 短い休み時間が終わる。



*****



 昼休み、杜崎もりさきが弁当を持って近付いて来た。

 面倒臭いな、、、と思って、俺は弁当を持って立ち上がる。

 清水に声を掛けたら、杜崎もりさきも着いて来そうだから、そっと教室を出た。

 弁当は、学校内の敷地なら何処で食べても良いので、俺はラウンジに行く。

 ラウンジで食事を取る生徒は結構多く、俺も空いてる場所を見つけて腰を据えた。


「藤田くん!」


 あ?


「教室出て行くの見たから」

そう言いながら腕を組む。

杜崎もりさきは?」

「知らない。一緒に食べて良い?」

わざわざ追い掛けて来たかと思うと、嬉しい。

「どうぞ」

「へへっ。お腹空いた〜!」


 ラウンジは、少し特殊な形で大きな正方形のテーブルがあり、周りを長椅子で囲ってあった。一片に四人位座れる。

 それが幾つか島の様にある。

 テーブルの真ん中には植え込みが有って、向かい側に誰か座っていても、見えない。


 清水は相変わらず、距離が近かった。


 弁当を食べ終わり、まだ時間があるのを確認すると、清水は椅子を座り直し、俺にくっ付いて来る。

「期末の勉強してる?」

「ぼちぼち」

「え、偉いなぁ」

「あ、、、」

階段を彼女達が降りて来る。

「何?」

杜崎もりさきと栗林」

清水は視線の先を見た。

 向かい側に座っている人は見えないけど、立っている人は見える。清水は、隠れる様に身体を小さくした。

「清水?」

「こっち来てる?」

まだ此方こちらには気付いていない。

「ああ」

清水は咄嗟にテーブルと椅子の間に隠れた。狭いだろうに、、、。

 俺も伏せって寝たフリをする。

 清水が俺の足にしがみ付いた。

 清水の弁当箱がテーブルに出ている。俺はそっと隠す。

 暫くして、顔を上げると二人はいなかった。

「清水、もう良いよ」

と声を掛けると、清水はゆっくりテーブルの下から出て来た。

「はあ、、、疲れた、、、」

清水は椅子に座り、テーブルに身体を預ける。

「最近、藤田くんと一緒にいられないからさぁ」

「、、、?、、、。一緒にいるよな?」

「うーん、、、。杜崎もりさきさんとか栗林さんもいるから」

「二人きりがいいの?」

「そうだなぁ、、、。そうなのかも、、、。あの二人がいると、ちょっと気を使うんだよね」


 嬉しかった。


「女子に人気が有って良いじゃないか」

と言うと、唇を尖らせる。

「好きな女の子なら嬉しいと思うけど、、、」

杜崎もりさきと栗林はダメなのか?」

「まだ、友達とも思えない感じ。クラスメイトだよね」


 いつか、清水にも彼女が出来るのか、、、。そう思うと、胸がチリリと痛む。



*****



 二人で教室に戻ると、杜崎もりさきはまた清水の席に座っていた。

「ごめんね、清水くん。席、借りちゃった」

「良いよ良いよ」

と返事をしながら弁当箱をしまい、俺の腕を引きながら窓際に行く。

 清水は窓を開けて、寄り掛かった。



*****



 ホームルームが終わり、清水が後ろを振り返って

「一緒に帰ろうよ」

と誘う。机の横の鞄を取り教室を出た。

 目の端に杜崎もりさきが入る。清水に声を掛けたそうだった。



 下駄箱で清水が

「あ、、、」

と言って固まっている。

「どうした?」

パタン、、、。下駄箱の蓋を閉めた。もう一度ゆっくり蓋を開ける。

「?」

清水は下駄箱に手を入れて、中に入っていた手紙を取り出すと、そっとポケットに入れてから靴を取り出した。

 女の子の可愛い文字が見えた。

 杜崎もりさきと言い、手紙の差出人と言い、清水はモテるんだな、、、と思った。


 二人で並んで歩くと肩が当たる。肩が当たると、それが合図みたいに、清水は腕を組んだ。

 

「清水は、どんな女の子が好きなの?」

「好きな女の子、、、?。話しやすい子は良いと思うけど」

「、、、」

「あんまり、好きとか意識したこと無いから、分からない。僕、自分から友達作るの下手だから」

「そうなんだ」

「どうして?」

肩越しに上目遣いで聞いて来る。

杜崎もりさきも清水が気になるみたいだし、さっき手紙を貰っていたから、モテるんだなぁって。清水はどんな子と付き合うのか興味が湧いた」

「ふぅ〜ん、、、」

「清水は初恋っていつだった?」

「初恋?」



**********



 初恋って何だろう。好きと違うのかな、、、。

僕の最初の好きは、惠兄だった。

 惠兄は、優しくて、大きくて、安心できて、母さんや父さんと違う好きだった。

 いつも僕は、惠兄の膝にいて、抱っこされていて、二人で一つだった。

 他の兄弟に取られる事も無かったし、惠兄に彼女が出来て、取られたく無いと思ったけど、それは恋では無いと分かっていた。


「恋って何?」

「え?」

「好きと違うの?」


視界に入る藤田くんの腕、、、。僕はそっと寄り掛かった。


「腕組むの好きだよね」

「ダメかな?」

「別に良いけどさ」

「藤田くんの初恋はいつ?」

「あー、、、」



**********



 自分から聞いておいて、辛かった事を思い出す。

「小学生。一番仲が良い友達だった」

俺はちゃんと好きだったけど、ソイツのは友達の好きだった。

 自覚してから上手くいかない様になって、彼が学区の違う中学に進学して、何と無くホッとした。


 清水はそれ以上聞いて来なかった。


 駅近くの商店街を歩いていると、俺達が腕を組んでいる事に気付いた人が、一瞬変な顔をする。

 すれ違い様に

「あ、兄弟か、、、」

とポツリと言われ、そっか、、、と思った。


 俺達、兄弟に見えるんだ。



*****



 最初は気にしていなかった腕組み、、、。最近はちょっと控えた方が良いかな?って考える。

 清水が誤解されるんじゃないかと心配なんだ。



 駅からの通学路で清水に会う。一緒に歩き出すと、何と無く腕に触って来た。

 しっかり組むと言うより、腕の下の方で絡める様な感じ。

「今日、手紙の返事をして来るよ」

「名前買いてあったんだ」

「中に買いてあった」

「知ってる人?」

「知らない人」

「断られるのって嫌だろうけどさ。断る方も嫌だよね」

「いつ?」

「昼休み。だから、お昼一緒に食べられないかも」

「そっか、、、。今日は俺の弁当、肉団子入ってたけど、残念だな」

「肉団子?!」

「でっかいのが、三つ入ってた」

「良いなぁ。出来るだけ早く戻って来るよ」

俺の弁当のおかずを食べる気だ。



*****



 昼休みになると、清水はすぐに教室を出た。

 告白の返事をしに行ったんだ。

 杜崎もりさきが清水の席に座る。栗林が机の向きを変えていた。

「清水くんってさ、女の子に興味無いのかな?」

杜崎もりさきの声が聞こえて来て、ギクリとした。

「だって、清水くんから何も無いんだもん。挨拶は私からだし、女の子と一緒にいる所、あんまり見た事無いよね?」


 うわっ、、、変な話題になっている。


「ねぇ、藤田くん」

 振り向かないで欲しかった。

「清水くん、女の子嫌いなの?」

俺は白飯を口に入れ、首を振った。咀嚼して飲み込んでから

「知らない」

と答える。

「、、、私の事、何か言って無かった?」

「何か?」

「んー、、、。杜崎もりさきの事気になるとか、そんな事」

「いや、特には」

「そっか、ありがとう」

そう言って、栗林の方を向いた。


 清水が戻って来た。


「はあ、、、やっぱり緊張したよ」

と言いながら、俺の隣の席を引き寄せる。

「山田くーん!机貸して!」

と叫ぶと、校庭側の一番前の方から

「良いよー!」

と返事があった。


 清水がガタガタ机を寄せる。

「肉団子食べちゃった?」

フッと笑いが出た。可愛いな。

「あるよ」

蓋を取り、残してあった肉団子を見せる。

清水は、自分の弁当箱を開けて

「シュウマイ一つ上げるよ」

と俺の弁当箱に入れた。


 前に座っていた、杜崎もりさきが振り返る。

「また仲が良い。清水くんはホント、藤田くんが好きだね」 

深い意味は無いと思いつつ、ギクッとする。

「うん、好きだよ。藤田くん格好良いから」

あっさり言う。

「私は、清水くんの方が好みだな」

と言うと、栗林が

「私は藤田くん、背が高いし」

と会話が重たくならない様に、フォローする。

 弁当を食べ終わった二人は、栗林が椅子を持ち寄り、自然とグループを作った。


 俺達は別に四人組でも無いんだけど、、、。


 清水は黙々と弁当を食べる。時間が無いから、慌てているんだ。

「清水くん、何処に行ってたの?」

彼は、少し視線を上げて

「ちょっとね」

と言った。



 流石に、告白されて断りに行ったとは言わない。

 


**********



 期末テストの後、席替えをして、そのまま夏休みが来た。

 清水は廊下側の一番前。俺は、校庭側の一番後ろになった。



*****



 文化祭の準備が始まった頃、俺と清水が付き合っていると言う噂があると聞いた。

 杜崎もりさきからだった。

「違うの?」

放課後呼び出された俺は

「違うよ。確かに清水は距離が近いし、すぐに腕を組んで来るけど、付き合ってはいない」

と返事をした。

「そっか、、、良かった」


 、、、チクリ。


 イヤだな、、、。


「私さ、、、清水くんの事、好きなんだ」

「何と無く、、、そうかなって思ってた」

「応援してくれる?」

「、、、」

「んー、、、。何をして欲しいとかじゃ無いの。ただ、何と無く、応援して欲しいなって」


 嘘でも、そんな事はしたく無い、、、


「頑張れば良い」

「うん、頑張る」


 杜崎もりさきが羨ましかった。

 自分の気持ちを言葉に出せる杜崎もりさきが、羨ましい。


 

 それから俺は、清水と少し距離を置く様になった。清水の隣りには、いつも杜崎もりさきがいるし、近寄り難く感じていた。



**********



 席替えをしてから、藤田くんと少しずつ疎遠になっている。朝も、タイミングが合わないのか会えない。

 

 その内、藤田くんは時間ギリギリに来る様になり、ちょっと疲れているみたいに見えた。



**********



 文化祭の準備が本格的に始まると、杜崎もりさきはいつも清水の側に行った。

 係も同じ物に立候補。

 俺は何も考えず、無難に受付になり、清水と杜崎もりさきは販売員になった。

 教室内の飾り付けは、手の空いている人が居残ってやる。

 あの二人が一緒にいるなら、噂も自然に消えるだろう。



**********



 いつも杜崎もりさきさんが側にいて、何でだろうと思う。

 藤田くんを探しても見つからないし、やっと見つけたと思うと、他の子のグループにいたりする。


 放課後、みんなで文化祭の準備をしている時、杜崎もりさきさんが僕から離れた。

 ため息をきながら、自動販売機にジュースを買いに行く。

 丁度、藤田くんが前を歩いていた。

「藤田くんっ!」

と腕を組もうとした時、けられてしまった。



 え?



 今までそんな反応無かったのに、、、?


「清水くーん!」

遠くで呼ばれて

「あ、はーいっ!」

と返事をした。その間に、藤田くんは先に歩いて行ってしまう。


 僕はこの感じを知っている。


 けられているんだ、、、。


 、、、どうしよう、、、。


 胸がザワザワする。



**********



 失敗したと思った。

 つい、けてしまった。

 すぐに誤魔化すとか謝れば良かったのに、清水が山田に呼ばれて、返事をしている間に歩き出してしまった。


 直感で、清水が腕を組んで来ると分かった。

 瞬間、あの噂が頭を掠める。俺と清水が付き合っている噂。

 折角、杜崎もりさきさんと良い雰囲気だったのに、俺と腕を組んでいるのを誰かに見られたら、噂が「やっぱり」になるんじゃ無いかと怖かった。



**********



 僕、藤田くんに避けられる様な事、したかな?

 自分でも気付かない内に、何かしちゃったのかも、、、。

 それとも、ずっと腕を組まれるのがイヤだったとか、、、。


 悶々としながらジュースを買いに行く。


 藤田くんが自動販売機の前にいた。


 彼がまた僕を避けるか、試してみたい。

「藤田くんっ!」

 僕は先刻さっきの事を無視して、後ろから抱き付く。

 藤田くんは驚いたのか、僕の顔を見ながら身体を引いた。


「えへっ、、、。ごめん、ごめん。びっくりした?」

笑いながら離れる。

「文化祭の準備、面倒だね」

と言いながら、視線を逸らし

「文化祭なんて無ければ良いのにね」

僕はスマートフォンを使ってジュースを買った。

「じゃあね」

とにっこり笑い、その場を後にする。



 、、、終わった、と思った。

 、、、もう、藤田くんに近寄るのは辞めよう。



 きっと、僕は嫌われている。



**********



 いつもニコニコしている清水が、泣きそうな顔をした。


 ごめん。でも、清水が変な噂を立てられて、傷付くのはイヤなんだ、、、。



*****



 清水が文化祭を楽しみにしていたのは知っていた。兄弟を招待するんだと嬉しそうに話していたし、他のクラスがどんな事をするのか、こっそり調べていた位だ。

 後夜祭だって楽しみにしていた筈なのに、、、。


「文化祭なんて無ければ良いのに」

そう言った清水の事が頭から離れなかった。



**********



 まぁね。面白く無いと思っても、文化祭の準備はちゃんとやるよ。


 床に座りながら、チョキチョキとハサミを動かす。


 でもさ、、、どうしても集中出来ないのか、作業中ため息ばかりが出るんだ。


「清水くん、大丈夫?」

杜崎もりさきさんに言われた。

「何が?」

「元気無いみたい」

「そうかな?」

笑う。

「最近、藤田くんと一緒にいないし」

「席が離れたからね」

ふと視線を上げると藤田くんがいた。

 あ〜あ、、、。どうして視界に入って来るんだよ、、、。

 天野くん達と楽しそうに笑っていた。

 なんで僕は彼処あそこに行けないんだろう。

 仲良くしてたと思うのにな、、、。


 僕はチラリと時計を見た。

 文化祭の準備は強制では無い。予定のある人は途中で帰っても良いし、部活に行っても良い。

 だから、僕は少し早いけど帰る事にした。


「ごめん、後、お願いして良いかな?」


杜崎もりさきさんと一緒に帰りたく無いから、そんな言い方をして立ち上がった。

 杜崎もりさきさんは、僕を見上げながら

「うん、お疲れ様」

と小さく言った。


 僕は自分の鞄を背負うと、藤田くんの隣りを静かに通る。挨拶もしない。


「お前達、喧嘩したの?」


最後に天野くんの声がチラリと聞こえた。



**********



「喧嘩はしていない。俺と清水が付き合ってるって噂があるらしくて」

「ああ、あれね。知ってる」

知ってるんだ。

「清水に振られた女だろ?」

「え?」

「自分が振られたから、嫌がらせに言ったのかもな」

「、、、俺さ、清水の事良いなって思ってたんだ」

「そっか」

「、、、恋愛対象が男だから、、、さ、、、」

「俺は駄目だぞ」

胸で手を交差させて、乙女の様に首を傾げる。巫山戯てくれて有り難かった。

 

 ふふ、、、と笑う。


「俺は噂を立てられても良いんだ。事実だから。でも、清水は可哀想だろ?」

「、、、」

「だから、ちょっと距離を置こうかなって、、、」

「、、、あのさ、清水の事、好きなんだろ?」

「なっ!、、、」

好きとは言ってないのにっ?!

 顔が赤くなる。

「清水が誰かのモノになっても良いの?」

「それは、、、仕方が無い、、、」

天野は納得いかない顔をした。

「天野はさ、俺の事、気持ち悪いとか思わない?」

「別に?小学校の時に、友達にそう言うヤツいたし、中学の時もいたよ?」

「そうなんだ。、、、俺の周りにはいなかったから」

「ま、自分の気持ちに正直になった方が良いよ。相手が女の子でも、男の子でもね」

「、、、」



**********



 一人で電車に乗ると、つらくなって来た。

 少しいた車内。窓の外の夕陽。オレンジ色の空。綺麗だな、、、と思いながら、藤田くんの事を考える。


 藤田くんが、僕に触れられたく無いとけた。

 僕が後ろから抱き付いたら、身体が強張るのが分かった。


 電車を降りてから家までの距離も。

 誰もいない家に帰っても。

 湯舟に浸かっている時も。

 一人でご飯を食べている時も。

 布団の中でも、ずっとずっとずっと、、、藤田くんの事ばかり考えていた。


 あの優しい笑顔も、あったかい体温も、心地良い声も、、、大好きだったな、、、。



 きっと、もう二度と僕には向けてくれない。


 

 ごめんね、藤田くん。

 明日から、嫌いになるよ、、、。

 馴れ馴れしくしてごめんなさい。



 いっぱい触って、、、ごめんなさい、、、。



 はあ、、、、、



 布団を頭から被って息をいた。

 知らない内に我慢してたのかな、、、涙が出た。

 一度溢れた涙は止める事が出来なくて、布団で涙を拭きながら、嗚咽を抑えた、、、。



 のに、僕の喉はキュッと締まり、涙を拭くたびに声が漏れ、我慢出来なくなった。

 嗚咽は泣き声に変わり、誰もいない家に、一人きりの部屋に、僕にだけ聞こえる様に、小さく響いた。


「藤田くんが好き、、、好きだよ、、、」


 もう、彼に近付かないと決めた。

 話し掛ける事も、触れる事も無いだろう。

 本当は、藤田くんに直接謝る方が良いんだろうけど、、、僕には会う勇気が無かった、、、。



**********



 文化祭の日、受付をしていると清水が歳上の男と腕を組んでいた。

 一緒に仕事をしていた友達と、観察してしまった、、、。

 似合い過ぎる、、、。

 私服の背の高い人は、清水が何かを言うと、少しかがんで彼の話しを聞く。


 すごく楽しそうだ。


 受付をしながら、杜崎もりさきを見つけた。清水を見ている。何とも言えない顔をしていた。

 多分一緒に回ろうと誘ったのに、断られたんだろう、、、。


 清水は丁寧に教室を回り、とうとう自分の教室まで彼を連れて来た。

「見て!惠兄!これ、僕が描いたの!」

廊下に張り出してある看板の縁取りを、クラスの皆んなで小さなイラストを描いて埋めた。

 後ろの扉に近い、左下の角を指していた。

「ん?猫?犬?」

「猫だよっ!酷いな!」

「分かった分かった。後で、お昼ご馳走するから」

楽しそうだった。

 清水は教室には入らず、外から覗いて次の教室に行く。


 その間も二人は腕を組んでいた。 

 

 清水は一度もこちらを見なかった。


 

 自分の所為なのに、やっぱり少し落ち込んだ。



**********



 後夜祭は自由参加だ。先生や生徒の有志で出し物をやる。

 参加者は勿論、見学するだけの人もいるし、興味の無い人は帰っても良い。

 俺は清水を探した。あんなに楽しみにしていたから、後夜祭に残ると思っていたから。

 でも、清水はお兄さんと帰って行った。簡単なホームルームが終わると、廊下で待っていたお兄さんと合流して、腕を組みながら階段を降りて行った。

「清水くん、後夜祭残らなかったね、、、」

杜崎もりさきが隣りでポツリと言う。

「私も帰ろうかな、、、」

「ダメだよ。杜崎もりさきさんは、私と一緒に後夜祭見に行くんだから」

栗林も来ていた。

「だって、清水くんと一緒に過ごしたかったのに、、、」

泣きそうな声だった。

 栗林は

「今日は最後までいよう!夜の9時まで学校にいられるなんて、楽しそうだよ?」

杜崎もりさきを慰める。


 

 俺はこんな時、涙も流せないし、慰めてくれる相手もいなかった、、、。



**********



 惠兄が来てくれたから、何とかなったけど、僕は帰りたくて帰りたくて仕方が無かった。


 すごく楽しみにしていた文化祭。藤田くんと一緒に回りたかったのに、あんな事になってしまった。

 せめてもの救いは、席替えして離れ離れになった事。


 今頃後夜祭、始まってるかな、、、。

 やっぱり残れば良かった、、、。本当は最後までいたかった。

 でも、一緒に行動する相手はいない。


「まこ?、、、まこと

惠兄が、指先でテーブルをトントンと叩いた。

「何?」 

「まこ、何か悩み事でもあるの?」

「惠兄、、、」

そう言われて、涙が滲んだ。



 文化祭の後、惠兄の車で晩御飯を食べに来た。

 僕の好きなカフェ。軽食なのに、ボリュームが半端無くて、コーヒーも美味しい。

 店員さんが二人分のコーヒーと、カツサンド、パスタを持って来てくれた。

「取り敢えず、食べな」

「うん、、、ありがとう」

惠兄の声はいつも優しい。

 カツサンドをパクッと一口食べる。カツが熱々で口の中を火傷した。からしが効いていて、本当に美味しい。


「惠兄、僕ね、仲の良い友達が出来たんだ。惠兄みたいに優しい人。僕は大好きだったんだけど、、、多分避けられてる、、、」

「避けられてる?」

「僕、好きな子と距離が近いからさ、、、。惠兄みたいに、すぐ腕とか組んじゃうんだ」

「嫌がられた?」

「多分、、、」

「急に?」

「急に」

「それから学校に行っても楽しく無いし、文化祭も出たく無かった」

「だから、後夜祭参加しなかったのか、、、」

僕は頷いた。

「友達に理由聞くのは、、、難しいか、、、」

「理由、聞いても良いのかな?」

「まこが辛く無いなら、聞いてみて良いと思う。分からないままだと、納得出来無いだろ?」

「うん、、、」

「でも、無理しなくて良い。距離が出来た相手に話し掛けるのは、勇気がいるからな」

「うん、、、」

後夜祭、みんな参加したのかな、、、。僕以外にも参加しないで帰った人、いたけど、、、そんなに沢山では無かった。



*****



 日曜日と月曜日の代休を挟んだ所為で、僕は更に学校に行きたく無かった。

 ギリギリまで布団に潜り、ため息をきながら家を出る。

 遅く出たから、電車もいつもより混んでいた。


 行きたく無い。


 学校の最寄駅、まだ、生徒が沢山いた。

 僕は、最後に降りてゆっくり歩く。

 ホームにある椅子が僕を呼んでいる。

 一番端の椅子に座り、背負っていたリュックを膝に置いて抱える。


 行きたく無い、、、。


「清水?」

 

 ホームには誰もいない筈なのに、、、。


「大丈夫?」


見上げたら藤田くんだった。


「気分悪いの?」

「、、、」

「ホームで見掛けたから、改札で待ってたんだけど、なかなか来ないから」

「ごめん、大丈夫」

足元を見て言う。

「学校に連絡するから待ってて」

そう言って、少し離れた場所で連絡してくれた。

 通話を切り、僕の横に座ると

「今日は午前中片付けだし、具合が良くなってから行けば良いって」

「ありがとう、、、。藤田くんは学校行って、、、一人で大丈夫だから」

「、、、うん」


 立ち上がる気配は無かった。


 8時半を過ぎると、人もあまりいない駅。

 学生が学校に行ってしまうと、こんなに寂しいんだ。


「学校、行きなよ」

「うん」

何で行かないんだろう、、、。イライラする。

「もう、遅刻だよ?」

「そうだね、、、」

「行ってよっ!僕の事は放っておいて良いからっ!」

「でも、具合悪そうだし」

「具合なんて悪く無いっ!君のいる学校に行きたく無いだけだよっ!」

「、、、」

「、、、、、、だから、さっさと学校に行ってよ、、、」

僕はリュックに寄り掛かり顔を隠す。

「、、、ごめん」

「謝らなくて良い、、、どうせ、僕が距離感を間違えたんでしょ?ごめんね、、、もう、絶対触らないから、、、近くにも行かないし、話し掛けもしない、、、。安心して良いよ」

「、、、違う、、、」


 違う?何が?


 僕はリュックに頭を預けて考える。


「噂があったんだ、、、清水と俺が付き合ってるって、、、」

「、、、ああ、それで恥ずかしくて嫌だったんだ」

「、、、違う、、、」


「、、、」


「、、、俺、清水が好きなんだ、、、」

「、、、僕は藤田くんの事なんて嫌い、、、」


 自分の心に嘘をく。


「そうだよね。俺、あの時清水の事すごく傷付けたって分かった。でも、清水がみんなに変に思われるのは、もっと嫌だったんだ」

「どっちも一緒だよ」

「?」

「藤田くんに傷付けられるか、他人に傷付けられるか、、、結局は同じだよ、、、。でも、藤田くんに避けられて、一緒にいられなくなる方が、僕は嫌だ」

「ごめん」

「良いんだ、、、もう、諦めたから。だから、学校行って?僕は後から行くよ」

「あのさ、、、俺と付き合ってるって噂、嫌じゃない?」

「嫌だよ。付き合って無いもん」

「えっ、、、と、そうじゃ無くて、男と付き合ってるって陰で言われるの、嫌かな?って、、、」

「嫌じゃ無いよ。そんなの、小学校でも中学でもあったもん。何なら、惠兄と付き合ってるって言われた事もあるし」

「、、、」

「だって、仕様が無いよ。僕の友達はいつも一人しかいないし、僕はすぐに腕を組んだりするから、揶揄いやすいんだ。それで友達が離れて行った事もあるし、、、別に平気」

「、、、」

「そんなの、慣れっこだよ」

「ごめん」

「、、、あのさ、、、。僕を避けたのは、噂があったからなの?」

杜崎もりさきから、俺と清水が付き合ってるのか聞かれたんだ、、、。理由を聞いたら、そんな噂があるって言ってた。、、、俺は、好きになるのはいつも男だったから、そんな噂平気だけど、清水は耐えられないと思った。いつも腕を組んで歩いていたのが原因なら、一緒にいない方が良いかな?とか、もう、腕を組んで歩かない様にしないと、って考えたり、、、。清水の近くには杜崎もりさきもいたし、アイツと一緒にいたら、清水はちゃんと女の子の事好きなんだ、って思われるだろうなって、、、」

「、、、それって、誰の得になったのかな、、、」

「誰の得?」

「だって、藤田くんは僕が好きなのに、離れて行くし。僕は藤田くんと一緒にいたいのに、いられない、、、。あ、杜崎もりさきさん?」

藤田くんは少し考えて

「本当だ、、、杜崎もりさきだけだ、、、」

と呟いた。



 電車を何本も身送って、僕達はようやくベンチから立ち上がった。

 誰もいないホームを二人で歩き、エスカレーターで降りて改札を抜ける。

 学校までバスを使わないで歩いた。


 僕達の間に、半人分距離がある。

 これが今の僕達だ。


「清水のお兄さん、格好良いね」

「うん、格好良くて、優しいんだ」

「お似合いだった」

「お似合いって、兄弟には使わない言葉だよね」

「お兄さんの事、好き?」

「好きだよ?」

「その、、、兄弟としてじゃ無くて」

「バカなの?惠兄は、惠兄だよ?何があっても兄弟だし、それ以上でもそれ以下でも無いよ」

「俺は、、、?」

「?」

「俺は、友達以上でも、友達以下でも無かった?」

「、、、今は、友達以下、、、」

「そっか、、、」



**********



 俺達は学校に着くと、そのまま職員室に行った。先生に声を掛け、教室に行く。

 文化祭の片付けは大体終わっていた。


 遅刻して教室に入ると、清水は女の子に

「ねぇねぇ、文化祭の時来ていたの誰?」

と聞かれていた。

「僕の兄さん」

「え?腕組んでたよね?」

「何で?兄弟で腕組まない?」

「うー、、、ん。あんまり?」

「僕は好きなら友達とも組むけど?」

「ああ、そう言えばそうだったね。でも、その好きってただ好きなの?」

清水は考えている。

「あのさ、、、ただ好きなのと、特別好きなのって

何が違うの?」

「え、、、」

横にいた俺を見上げながら

「ねぇ、どう違うの?」

と聞いて来た。、、、困るな。


 教室がシン、、、とした。


「いつも一緒にいたいと思うとか?」

「友達とだって一緒にいたいよ」

「手を繋ぎたくなる」

「僕は友達と手を繋ぎたいし、腕も組みたいよ?」

「幸せにしたいと思う」

「友達だってそうだよ。意地悪なんてしたく無いでしょ?」

「、、、キスも、その先もしたい」


 誰かが言った。

 教室がどよめいた。

 誰の声かは分からなかった。


 成程、、、。


「確かに、惠兄とキスしたいとは思わない、、、そっか、、、キスしたいかどうかなんだ」

「清水?」

「何と無く、友達の好きと特別の好きの違いが分かったよ」

「清水?」

クラス中が「清水は仕様が無いな」と、和んだ空気になった。

「アイツは初恋もまだか」

と誰かが言い

「だって、分からなかったんだもん」

とムクれた。



**********



 放課後、清水に腕を引かれる。

 空き教室に入り、清水は扉を閉めた。

「あの、、、清水?」

「うるさいなぁ、ちょっと黙っててよ」

そう言いながら、俺の頬を両手で支えて背伸びをする。

「キスしたいかどうか、確認したいんだから」

身長差で全然届かないのは分かってるんだけど、俺、今、貞操の危機だよね?

「清水、ストップ!」

彼の両手を掴み、頬から外す。「気を付け」の様に両手を身体に沿わせる。

「清水、俺が触っても良い?」

どうせなら、俺にリードさせて欲しい。

 身長の低い彼は上目遣いで俺を見る。

「良いよ?」

そっと抱き締めてみた。

「平気?」

「、、、うん、平気」

身体全部が触れる様に腕を回し、彼の頭をそっと俺に寄り掛からせる。


「藤田くんの心臓の音が聞こえる」


 うわっ!


 急にドキドキした。


「ふふ、すごい。急に音が早くなった、、、」

「清水、、、」

「ん?」

見上げている。

「キス、しても良い?」

「良いよ、、、」

身長差で額にしか出来なかった。

「こっち来て、、、」

彼の手を繋いで、移動すると椅子に座った。

「はい」

と両手を広げる。

「?」

清水は首をかしげた。

 俺は膝を叩いて

「座って」

と言う。

 ちょっと清水の顔が赤くなったみたいだ。遠慮がちに俺の脚を跨いで座る。彼の腰に手を添えて、そっとキスをした。触れるだけのキス。清水は、俺の目を見て頬を触る。ゆっくり近付いて来た。一度離れて、角度を変える。すぐに離れるクセに、すぐにまたキスをする。

 俺が背中に手を回すと

「ふっ、、、」

と息を漏らしてキスをした。そのまま俺の唇を噛む。俺は彼を抱き締めて、身体全体を押し当てる。

 離したく無い、、、。

「藤田くん、、、」

「な」に、、、?

 清水からの、、、頭の芯が蕩ける様なキス。口の中が甘くて、甘くてたまらない。だめだ、、、。これ以上はだめだ。そう思いながら、止める事が出来なかった。

 

 ようやく、清水の唇が離れたと思ったら、彼は俺を抱き締めた。



「藤田くん、、、好き、、、」



 その好きは、特別な好き、、、?



「キスも、それ以上もしたいのは、特別の好きなんでしょ?」

「それ以上もしたい?」



 清水がもう一度キスをした、、、。



「うん、、、したい、、、」



 清水は、顔を真っ赤にして笑った。



 そっか、、、したいんだ、、、。良かった、、、。



来年は、二人で文化祭、楽しんで!

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― 新着の感想 ―
やはり純愛は正義ですよね。 好きだから傷ついて、好きだから離れようとして、それでも最後はちゃんと好きに戻ってくる感じがとても良かったです。
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