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今、月日と出会う。そして始まる。

まただ…


ここ、前にも来たことがある道だ。

どのあたりにあるのか?どうやってきたのか?全く知らない道…


なぜか知らないけど…無意識のうちにいつの間にか、ここまで来ている


そして次の曲がり角でなぜか、毎回無意識に曲がってしまう。

そこは行き止まりになっていて、何もないはずなのに。


なぜか、その行き止まりの方に、見てはいけない者を見てしまった気がした。


見ないふりをしようとしたが、俺は運悪く、それと目が合ってしまった。

俺はその途端、身体が固まって、動けなくなってしまった。



こんなところでアラブの民族衣装のような服を着て、テーブルに黒い布をかけ、その上には大きな水晶玉。


そう風貌からしてまさに占い師。


マジで怪しげだ。


そして占い師は、にっこりと微笑む。

ベールをかぶり口元もうっすら隠されていて、顔はほとんど見えないが、おそらく相当な美女だということは分かる。


俺はその道に入らずに通り過ぎようとした時だった。


「お待ちなさい」


曲がり角の奥にいたはずの占い師がいつの間にか、俺の袖をつかんでいた。


ああ…捕まりたくないのに捕まってしまった…


「なんですか?生憎、手持ちの金はないので!」


そう言って断って、その場を去ろうとした。

それでも占い師は俺をしっかりつかんだまま、離そうとはしなかった。


「お代は取りません。」


「!?」


「そのかわり…」


何を言い出すかと思えば、この女はさらに恐ろしいことを口にしていた。


「私の言う通りに動きなさい。」



おまえの言う通りにしろってか?

それ金払うより、こわいじゃないか!?



そして俺はいつの間にか、客席に座らされていた。


いつの間にか俺の対面に座った占い師は


「あなた、結構お気に入りの中華料理店あるわよね?」


「え?」


俺のお気に入りの中華料理店といえば、黄来軒。

いったい何なんだろう?


次に出た言葉は…


「…そこには二度といってはダメ!ていうか近寄るな!」


という、今まで考えても見なかったことだった。


あの店に行くなって?

俺はあの店に行くのがすごく楽しみなのに…


「心配するな。またかわりに気に入る店は見つかる。」



そうじゃなくて…



「特にあの中華料理屋で働く娘。」


鈴々のことか?


黄鈴々。黄来軒で働くチャイナ娘だ。年は17歳らしい。


鈴々は俺の…



「あの娘とは二度と関わるな!別れろ!」


「えーーーーっ!?」


なんなんだよ?もう?

そしたらこの女はさらに恐ろしいことを口にした。



「あの娘はシモの病気を患っている。」



「はっ??」


マジかよ…

都市伝説だと思っていたわーw

シモの病気って…まさか…


「案ずるな。あの娘がもらったのはつい最近だ。」



まぁここ2か月、あの店には行っていない。

それがホントなら…まぁ…



「でも鈴々は、いきなり離れていったと知って逆上しないだろうか?」



それだ。


「そこは大丈夫。あの娘はあんただけじゃないんで。」


なーる



まぁそこは現場も見てしまったことがあるんで、何も驚かない。


「まぁなんにしてもいずれ分かる」


いずれ分かるね…


そういえば…



「ねぇねぇ。お姉さんっていったい何者なの?」


「!」


「そういえば、前もこんなふうに現れたことあったよね?」


そうだ。

考えてみたら、前にもこんなことがあった…。


「今はそんなくだらない問いにいちいち答えている暇はない!!」


「え?おい!」



「それから…週末指定通り絶対に塾に行け!でないと所により雷が落ちるどころか、そなたに直撃するであろう…。」



「なんだよそれ!?」



「ああ!こんなどーでもいいこと言っている時間なんてないのに!!お前が変なこと聞くから、時間が減った!」



占い師はいつになく慌てていた。

以前あった時にはこんなことなかったはず…



「ああそうだ。そなたはいずれ虹のすべてを手放すことになり、後にすべての日の色を持つ者を手に入れることになるであろう…。

そしてさらに後より現れる月の者と………二人を………るだろう…」



え?なんだ?



ちょ聞こえない!?



ってこれ、俺が悪いのか?

マジで謝るから、もっとはっきり聞かせてくれーーーー‼‼




と思ったとたん目が覚める…


やっぱり夢かよ



というか、以前もこんなような夢を見たことがある。



あーやっべ…今言われたこと全部メモらないと…忘れるではないか―――!?


実は前見た夢でも似たようなことがあり、さっぱり信じてなかったことと、メモをしておくのを忘れていたせいで、大失敗したことがある…まぁそのことに関してはまたのちに話そうとは思う。とにかく今は言われたことをメモすると…



まずあの中華料理の店には近寄らないこと。

理由は鈴々がシモの病気だということ。

このまま逃げても鈴々は怒らないとのこと。


で?


今週末に絶対に塾に行くこと。

行かないと雷が直撃するとのこと。


意味わかんねw

だいたい塾って、月曜と木曜だろ?なんで金曜に行かないといけないんだよ?


それで多分、最後のが一番重要な気がするのだが…

なんか思い出せない…




構内の一角にある花畑。園芸部の花園。


俺は本日…そこにおいてあるベンチで寝そべりながら、一限目から授業をサボることに決めて、昨日の夢の続きを見ることに決めた。


てか、ホントにマジでもう一回無理やり寝てでも同じ夢を見て、思い返すしかないんだよな…。前回の時は終わった時に思い出していて…大変なことになったから…



俺は今、ここでこうしていられるが…俺はそのせいで高校にも行けなかったかもしれないのだから。



だから今回のことだって、絶対に思い出さないといけない気がしていた。



まぁ一応、朝のホームルームの出席だけは返事しておいたから、遅刻扱いでもないし、大丈夫だろう。


んーんーんーーーーー。


てか日の光がまぶし過ぎのせいか全然眠れない。ここは一応、影になっているはずなのに…


「えーーっと…確かなんかを手放し…なんかを手に入れる…で…そのなんかとは何かで…。」


と気が付いたらぶつくさつぶやいていた…


とその時だった。


「美星くん。」


「わぁーーーーっ!!」



俺はいきなり名前を呼ばれて飛び起きた。


一応思い出してはいたのだが、途中で起こされたため、またふりだしだ。

こんな時に誰だよ?


と思って声の主を見ると…


「こんなところで、またサボりかな?」



日芽子だった。


思わずなれなれしく「日芽子」って呼び捨て呼びをするところだった。

いや、日芽子なんて呼び捨てで口に出して言ったら、多分ダメだろう。



それでも俺は、彼女のことを日芽子と呼びたい。ずっと日芽子と呼んでいたい。

その欲望は誰にも負けたくない…



「…日芽子……」


「!?」


「……・先生…。」



そう彼女は学園教師のうちのひとり。

とてもじゃないけど、日芽子なんて呼べない。


「もう、最初のうちはホントにすごい呼び方されていたけど、やっと先生って呼んでくれるようになったね。」




そうです。あれは2か月ほど前…

俺が初めて日芽子に出会ったのは、入学して3週間ぐらいのことだった。

体育の時間。その日はソフトボールだったのだが、当たり所が悪くて、保健室に運ばれて、気が付いた時、真っ先に視界に入っていたのが、学園の養護教諭である春風日芽子だった。


「あら、目が覚めたのね?大丈夫?」


その時、ふしぎと日当たりが丁度いい位置にある保健室で、程よい感じで日差しが日芽子にかかっていた。肩までの黒髪をハーフアップにまとめた典型的な清楚系美人で、服装は保健室の服装らしく白衣を身にまとっていた。


そんな日芽子が、俺にはものすごく輝いて見えた。


その姿に思わず俺は…


「俺と結婚してください。」


何を血迷ったのか、口にしていた。


さすがの日芽子もきょとんとして、


「…え、えっと……?もしかして…なにか夢でも見てた?」


夢?目の前に日の光が似合う美女。それが夢であってたまるか!



困っている…



とその時だった。



「日芽子先生!」


誰か入ってきた…

気まずい…

一応寝たふり…

って日芽子って名前か…

とその時、ようやく彼女の名前が日芽子だということを把握した。



「ナプキン忘れちゃったぁー。ちょっと分けてー。」


何かと思えば、品のない声のそれ聞いて、なんかいろいろだいなしだ。

俺は今、告白の最中だったんだぞ!


「あらあら…しかたないわねー。」


先生がどこかの引き出しを開ける音がした。


「はい。」


「先生ありがとう!」


声主の女生徒は用が済むとすぐに出て行った。


さっきから、先生だと?

当番の保健委員じゃないのかよ!?

いや、マジで信じられん…

先生にしては顔が幼すぎる。

それでいてかなりの美女要素を持っている。


こんな女は見たことがない。


見たこともない漆黒の瞳で俺から目を離さない…。

この目…まともにみたら…負け確定と思えるぐらい吸い込まれそうだ。

もうすでに声すら出ないほど来ている…


頼む。そっちから何か言ってくれ…。


しばらくの沈黙の後…


「ごめんね。私はここの教諭でね。君がここの生徒である限り、それは無理かな。」


ようやく、発した言葉はこれ…

一応、真面目に返答をしてはくれた。


「あ、もし寝ぼけていただけなら、その夢の中であった子にそれ伝えなおしてね。」


とまで言われてしまい、



「いや、俺は本気だから!じゃあその時が来たら奪いに行く。」



「え?あの…」



俺はそれだけ言って、保健室を後にした。



それが日芽子との出会いだった。


俺はあの日、帰宅してすぐにオヤジが持っていたPTAなどの学校資料を引っ張り出して、改めて学校のことをいろいろ調べた。この学校には今まで全く興味がなくて、何も知らなかったが、日芽子のことだけは詳しく知りたかった。



春風日芽子   笹ノ葉高等学校養護教諭担当   園芸部顧問



なるほど…

一応、部活の顧問は一つ請負っているみたいだな。


そして俺は、翌日園芸部に入部。


中学の時は運動部に入っていて、休日まで強制的に練習に出るのは当たり前だったため高校こそは部活に縛られまいと思って帰宅部を決め込んでいた。がまぁ文化部である園芸部なら、そこまで厳しくはないであろう思ったものの…


「あ、うちの部、一応総長当番と休日当番もたまにあるから。よろしくね。」


と部長の桜野先輩から、それを聞かされて。「えっ?」だった。

文化部なのに休日出勤もあるって…


とは思ったものの…すべては顧問の日芽子のため。

俺はこの三年間、日芽子のためにこの部活でがんばると決めた。


さすがの日芽子もあの日の翌日に俺が入部してきた事には、かなり驚いてはいたものの、とりあえず、他の一年新入部員とともに受け入れてくれた。



そんな、いきさつがあって俺は今、園芸部員。

周りからは「なんであいつが…?」「いや、元バスケ部とか聞いていたけど…」とものすごく意外に思われていた。







ってここまでが2か月前の4月、園芸部に入部したばかりの日芽子との出会い…



そう俺はあの当時、日芽子のことを…






「日芽子」


と呼んでいた。



「もう!春風先生でしょ?」



「あ…」



そうでした。俺はまた再度日芽子だなんて呼んでしまった。

本当は春風先生といわないといけないそうだ。

日芽子に何度も修正を促されて、最近はようやく「日芽子先生」と呼んでいるが、どうしてもたまに「日芽子」と呼んでしまう。



「もう、寝ぼけていたから仕方ないけど、きちんと先生と呼んでください。」


ホントに先生ってこういうところはお堅い。

まぁそれも職業柄仕方がないことかもだが…



「どうしたの?こんなところにいて、授業でなくていいの?」


「…」


「まさか、昨日また寝てないとか?」


「いや、しっかり寝たけど…」


日芽子は俺の顔を覗き込んできた。


「!!」


そんなに顔近づけるなって!理性飛ぶだろ!

またあの漆黒と思えるほどのあの真っ黒な瞳で、目を合わせてくる…

俺は思わずその目を見ていられなくなり、ぎゅっと目をつぶってしまった。



「まぁ確かに隈はないわね。顔色も悪くない。」



何かと思ったらそこかよ!

っとにびっくりするじゃないかよ!


「じゃあなんで、ここで寝ていたの?ここじゃなくても、一応教室で寝ながら授業受けていた方が単位取れるじゃない。」


おいおいおいおいおい…

先生が授業中の居眠りを認めてどうするんだよ?



「実は…」


「ん?」


「今朝、見た夢を思いだそうとして、もう一度寝ようとしていた。」


日芽子はあっけに取られている。

あ、やば。思っていたことをそのまま言ってしまった…


「ふふふふふ…なにそれ。またなの?美星くんらしいわね。」


大空美星…俺の名前な。美しい星と書いて「みほし」と読む。

この名前、誰が付けたかは謎。

小学生の時に自分の名前の由来についての宿題があったが、その時は親の仕事が忙しすぎて聞くに聞けない状態だった。

まぁ一応、この名字だからこそ、しっくりくる名前だとよく言われる。多分、そういうことなのだろうと俺は思いたい。



「で?どんな夢だったの?」


日芽子はものすごく無邪気に聞いてくるので、


「占い師に占われる夢…あ…」


誰にも話すまいとか堅く思っていても、やっぱり日芽子にはかなわない。

ホントにうっかり言ってしまう。


「ねぇ笑わないから詳しい夢のお話、聞いてみたいな。」


ああこれだ。この人は本当にこういう話が好きだ。


「夜も待てないほど、思い出したくなるような夢だったんでしょ?すごく楽しい夢だったんだろうな~と思えちゃうじゃない。」


「えーーー!?」


「いいじゃない。この間話してくれた。夢で見た西遊記の話。すっごいおもしろかったものーw確か、美星くんが孫悟空で、都築君が沙悟浄で、遠藤君が猪八戒で、なんでか三蔵法師が私でさ、あのキャスティングめちゃ面白かったじゃない。」


そう、俺といつメンと先生がパーティで、幼馴染の真理が誘拐された村娘役で、設定がめちゃくちゃだったけど、以前そんな夢を見て、すべて解決した夢のラストでそれが夢だと気づいて、俺が三蔵法師にムラムラしてきて。三蔵法師を襲ってしまおうとして…着物がはだけたら…法師が男だったことで…。目が覚めた夢…


当たり前だけど、さすがにラストのことは、日芽子には話せなかったな。そこでまぁ俺の夢の中のストーリーが日芽子にとってツボったらしくで、たまにこうして話を聞いてくれるようになっていた。それでも実は俺が部活に入ったばかりの時は、出会って即プロポーズしたせいもあってか、かなり敬遠している態度だった。


そんなことよりも…



「どうしてくれるんだよー。日芽子のせいで夢の内容思い出せなくなったじゃないかよー。責任取れー。」


「えぇー」


日芽子は思いっきり困った顔をしていた。


「…えー、そんなこと言われても…

って!また、日芽子って呼び捨てされた―!せめて日芽子先生って言いなさい!」


あーやっぱり気が付かれてしまった。

このむくれて怒った顔もまたかわいくて好きだ。


「わかったよ。ごめんって。」


「んもう。一緒に思い出してあげようかと、一瞬でも考えたことがバカだったわ。」


なんだかんだ言って、先生としての一線はしっかり引かれてるな。

でも、卒業したら俺のものだ。そこは強引にでも実行する。




「で?今度はどんな夢だったの?」




俺はそのまま占い師が出てくる夢のことを話した。



「なるほどね。占い師か…。それは占い師が言っていた内容は思い出したくもなるよね。」


内容を聞いて、ちょっとすまなさそうな表情をしている日芽子。


「んー全然わからないや…。どんなこと言われてたの?」


そりゃそうだよな。占い師に夢の中で言われた占い結果なんて、実際に聞いてないと分からない。その聞いていた俺本人でも、ところどころが途切れ途切れになっていて、聞き取りにくかったから、もう一度夢の中で聞きなおそうとしていたのだから。


それを一緒に考えるなんて無理がある。


「それが全部天気予報みたいな内容でさ。先週からも言われていたことで、今週末に塾から呼び出しがあってさ、そこで補習授業を受けることになってるから、正直いつも通りサボりたいんだけど、行かないと雷が直撃するって言われてて…。」



「さぼる?」



「…あ……。」



ヤバい喋っていた相手、先生だってことを忘れていた。


「…えーっとその…」


「サボるのはよくないわね。確かに。」


苦笑いされながらそう言われた。

やっぱり教師たるものは正しいことを言ってこそだ。



「あとは?」



「虹が消えるとか虹がなくすという感じなことを言っていたような…」



「虹かぁ。虹って、結局すぐ消えてしまうものだから…、消えても不思議はない存在ということかな?」



まぁそういうことなんだろうな…ただその虹とはどういう意味で構成されているものか、あまりピンとこない。


「でそのあとに、日と月が現れるとか…」


ホント何も覚えてない…。前のそうだった。

それが原因で、5年前に見た夢は失敗した。

そしてあとになって、答え合わせをするかのように思い出して、いろいろ悔いた。


「今度は日と月か…。

なんだか、相反するような存在が同時に現れるのって?かなり無理あるような…」


それ、なんだよな。

そもそも日と月が現れたところで、何の役に立とう…。


そこに纏わる何か栄光を手に入れるのであろうか?

それならそれで、謎を解いて人生イージーモードにしていきたいという欲はある。


「結構難しいのね。」


「そうなんだよなぁ。実は前にも同じ占い師が夢に出てきて、何か警告を発してくれたんだよね。それがまた、あとで答え合わせをしていたら大当たりでさー。」


「えーーー!?そうなの?」


「それで今回もこの言いつけを忘れてはまずいと思って、必死で思い返しているわけ。」


「なら、この夢を絶対に思い出さないといけないじゃない!?」


「だから、保健室のベッド一つ貸して…」



「それはだめ!そんなことのためには、さすがに使えない。」



やっぱりなー。

ホントこういった職務的なことだけは、真面目にこなすのもまた教師である。

だから、授業中でも起こされないはずのここで寝てたわけで。


「それはそうと、前の夢はどんな感じだったの?」


と問われた時、まずったと思った…。

さすがに前の占い師の夢関連に関してはさすがに日芽子には言えない…。

とてもじゃないけど言えるようなことじゃない。


すべてはオヤジがうまいこと対処してくれて、なんとか学校の内申をクリアにして、辛うじてこの学校に入れたものの、本当なら俺は高校すらまともに行けないほどひどい内申だったのだから…。


そんなことをここの教員である日芽子に話せるわけがない。


いや、日芽子は教員以前に俺にとって今では本命の思い人でもある。

というか、日芽子は真に初恋の相手だ。

これまでに彼女という存在はいたことはあろうとも、どれも自分から好きになった相手ではなかった。

初めて自分から好きになったのは、日芽子だけだから。



そんな相手に自分の黒歴史など言えるわけがない。



どうしよう?



いつもなら適当な話がさらっと思い浮かぶのだが、こんな時に限って何も思いつかない。



「先生ごめん。すっごい失敗談なのであまり…。」


「そうなのね。そこまで失敗したのだから、思い出したくもないか。」


「ハハハハハ…」



もはや、笑ってごまかすしかなかった。



確か、前の夢で言っていた占い師が言っていたことは



「信号機と関わるな。間とって紫を手放すな。安定志向で行け!」



まるで交通安全で表現している感じだった。

それがどういう意味かはあの時はさっぱり分からなかったが、今思えば大当たりなのである。



「ごめんね。結局何も思いつかなくて…。」



とは言ってくれたものの、それでもよく、こんなくだらないことにお付き合いしていただいたことには感謝している。

というか、好きな相手からここまで時間がいただけただけでも、ラッキーだ。


今、思い返せば返すほどなかなか思いだせなることに気付く…



「一応さ、覚えている限りのことで、まぁ週末には塾に行ってみようかと思う。」


「そうね。まずそこね。」



「ありがとう。先生」



「次の授業からはちゃんと出るのよ。

あなたにはまだ…、自由に選択できる未来があるのだから…。」



そういって日芽子とそこで今日は別れた。

さすがに鈴々のことも日芽子には言えなかった。

鈴々シモの病気だったか?

自分と関係があった女にそんなことが起きていたことなど、とてもじゃないけど言えない。

事情はどうであれ、そこばかりははっきり言ってくれた占い師の姉ちゃんには感謝だ。

真偽はどうであれ、多分あの夢の占いは当たる。



意外にも授業をさぼっていたことは、あまり目立たずにすんだこともまたラッキーだった。


そして昼休み…



俺はいつも通り、都築と遠藤と一緒に弁当を食べていた。

彼らとは各自違うクラスでもあるので、毎週交代で各教室を借りて違う場所で食べている。



「まさかさぁ、お前が園芸部なんかに入るなんて思わなかったわー。」


「そうそう、俺らと同じ文芸部に入ると言ってたよな。」


そこへ都築がこっそりと



「どーせ、春風先生狙いなんだろ?どこまで進めたんだよ?このイケメンめ。」



そう、園芸部を選んだ時点で都築にはすでに見破られていた。

都築とは小学生からの付き合いで、もう何もかも知られている。

そう、俺が中学の時に起こした黒歴史も何もかも知っている。

その黒歴史があった事さえもしっかりとうけ止めてくれて、こんな俺を絶対に裏切らないでいてくれたのは、ここにいる都築と遠藤ともう一人…。



「もう!いいかげんにしてよっ!」



やかましい声をあげて、いきなり教室に逃げてきた一人の少女。


「私、そんなんじゃないもん!」


彼女は俺の幼馴染の波地真理。

彼女とは保育園の時から一緒だ。真理とはクラスまで同じ。


俺が高校に入って、学校付近まで引っ越すまで、俺と真理は隣同士に住んでいた。


ちなみに真理の家は母子家庭。真理には年の離れた姉が二人いて、もうどちらも結婚するなり自立するなりして、数年前には出て行っていた。もう、俺はほとんど、このお姉さんたちにお世話になっていたようなものだった。もちろん、オヤジからも面倒を見てもらう代わりに真理の家には、それなりに報酬は与えていたから、そういう環境でいられたといえる。


「ちょっと!美星!あんたのせいでこうなってるのよっ!何とかしなさいよ!」


「は?なんとかって?」



て見れば、あの時のナプキン女!藍沢智恵美!

よくよく思えば、さっきから地響きもひどい気はしていた。



正直、あれは肥満体であり、そのせいもあって見目の印象はかなり悪い。それでいて我が強くて、めちゃくちゃ図々しい性格してるのな。いつも一緒にいるギャル仲間の間でも一度突っ走ったら、誰も手が付けられないらしい。



「あんたっ!私の美星くんにちょっかい出さないでよっ!」



とこれだ…


とりあえず、こいつとは押しに押されて、仕方なく三日だけ付き合ったことはある。

が俺はそれに関して最初にこいつに条件を出した。


「三日以内のうちに俺がお前のことを好きならなかったら、その時は別れるということで。」


という鬼畜な条件を出し、契約書まで書かせたのだが、藍沢はめげずに今に至るというわけだ。

無論その期間というものはとっくに過ぎたので無効だ。


まぁ親父からもよく言われていたことだが、


「気が進まない女には手を差し出すな。あいつらは面倒だ。」


それがまぁ大当たりで、あいつに少しでも手を貸した結果これ。

まぁ俺はおやじの言っている通り、めんどくさそうと思ったので、それなりの譲歩はしたものの、一応まともには向き合わなかったつもりだ。


それで何を勘違いしたのかと思えば、どうも藍沢は俺と真理が実はできていると思い込んでやまないらしい。

かといって、ここで止めるのもなんか違う気がするしで、



「愛されてますねー」


と都築に突っ込まれる。


「ああいうのなら、いつでもお前にやるよ」


「いや、他人のおさがりはイヤっすねーw」


ホントこいつは人事にしか思わないイヤな奴だ。

まぁそもそも中古じゃないものを手に入れること自体が難儀だ。


現実を見るといい。都築くん。



なーんて思いながら、騒がしい昼休みも終わり…

結局午後の授業はほぼ居眠りで、夢の収穫もゼロで、なーんも意味のない無駄な時間を過ごした…



そしてあっという間に週末の放課後が来る…

今日は、とりあえずは塾からくるように言われていたから、前もってバイトに休暇申請はしておいたものの、それを気に今日もサボる予定でいた。



それでも夢にまで出てきて、今日はサボるなっていったいどういうことだろう?


俺は本来、月曜日と木曜日の夜に塾に行くことになっている。


それもここ最近はほとんどサボりとなっている。

まぁ原因としては…塾でも顔のせいで、まぁそれなりに女子から目を付けられるわけで。

どちらの曜日にも一人ずつ担当がいるんですね。


まぁどちらもメリットがあるから、それなりに付き合ってるわけです。


浮気なんかしてて、バレないものなのかって?



まぁ事情を汲んだ上で考えてしてるようなものだから、今のところはバレていない。



一人は男女交際禁止な校則があるぐらい上級クラスのお嬢様学校に通うお嬢様。

もう一人は、超進学校に通う才媛で、実態は意外にも早熟な子だったりで。

どちらにしても、自分の表キャラを崩すわけにはいかないようなご身分な子ばかりをチョイスして、利用しているのでまずバレない。


まぁどちらも向こうから、言い寄ってきたので、これまた「好きなんか?」と問われると、好きといえば好きな方かもだけど、友達以上彼女未満な感情しかない。まぁ二人とも顔は人並みだ。そう、まさにまさかこんな子が?って感じの子。


こんな生活送っている俺もまぁクズはクズだな。これ。


正直、今の俺は大学に行く気が全くない。むしろ、どこかに就職できないかなとさえ思えているぐらいだ。だから塾も勉強も何もかもがどうでもよくなっていて、我ながら自堕落な生活送ってるなーとさえ思う。



今の俺の夢は高校を出て、日芽子と一緒に暮らすこと


それ以外は特に決まってはいないが、それまでには何とかして自分を変えないといけないことばかりだ。


補習に出たはいいものの。何一つ頭に入らない。

才媛の彼女である夕里にもたまに勉強教えてもらっているが、そこでもさっぱりな状態。


日芽子以外の目標がないゆえに成績もダダ滑り。


高校受験前にはすごい勢いで上がっていた偏差値も今では…



「大空美星」


先生から呼ばれる。


そして個人指導室に入るが…


「最近どうしたんだ?学校の方でも、あまりいい成績とれていないみたいだが…」



そうそう、新学期始まったばかりの時の実力試験ではなんと学年3位だったのだが…中間テストではギリギリ中の中にいる状態。

それも…


「今回の模擬試験の結果だが…」


その模擬試験の結果も、去年の年度末に行ったものよりもかなり下がっているとのこと。


「最近、顔出さないけど、いったいどうしたんだ?」


と先生は何か喋っていたようだが、それもほとんど頭の中に入ってこない。

そして、次に先生が喋った一言で



「もう、このままだとまずいから親御さんと要相談すると塾長からも通達があってな。」



「!!?」



この一言で、なぬっ?な状態だった。



まさか、この日に雷が直撃って…?オヤジのことだったんか!?


オヤジは普段はそこまで怒らないが、一度壊れると収拾がつかないほど、こわいというのは知っている。筋が通らないことは恐ろしいほど大嫌いなのだ。



「いやぁホントによかったよー。君がここまで素直に話を聞いてくれる子で。」



と先生は言っていたものの、俺は適当に「はぁ…」とか「そうですね…」とか相槌を打っていただけに過ぎなかった。というか先生の話なんて、最後の親父を呼び出すこと以外は何も覚えてないぞ。



どうするんだよっ!これっ!?



それはそれで恐ろしいことになっているではないか…?


夢の占い師が言っていた通り、どうやらただ単に週末塾に行くだけでは済まなかったかもしれない。

でもまぁ一応その場しのぎではあったが雷だけは逃れた。


俺は頭が真っ白なまま、家路についた。


マジどうしよ?



ボーっと歩いている時だった。



「ねぇねぇ」


振り返ってみると金髪ショートの少女がいた。

服装はデニムジャケットに中にタンクトップ?にショーパンといったこざっぱりとした感じ。頭にはボーイッシュスタイル特有な感じで帽子をかぶっている。


顔は…


それがまた、すこぶる美少女だった。


ただ…この子…


どこかで見たことある顔だ。

ホント誰に似てるのか、それが誰か思い出せない。


彼女は俺に近づいてくる。



じ――――っと俺の顔を見る。

その瞳の色は見事なぐらいの漆黒の瞳…。


そんな目で見られると俺は動けなくなるではないか…



「大空美星くんだよね?」


「え?」


名前まで知ってとは何者だ?


「そんな顔しないでよ。これ、君のだよね?」


よく見たら、俺が使っているクリアファイルを持っている。


「大空美星。英語24点…」



「…あ?……」



それ、今日返された模擬試験の結果やん。


「おい!こら返せ!!」


と俺はクリアファイルをつかんだと思ったら、いつの間にか、よけられていた。気が付いたら少女は俺の斜め後ろにいた。


「人にものを拾ってもらっておいて、なんかひどいな。」


「お前こそ、他人のプライバシー勝手に口にするなんて非常識だぞ。」


少女はポカーンとして、少し黙ったままだった。

何なんだ?こいつ?

なんか、少し考えている様子だった。


「ごめん。じゃあこれ返すね。」


「ああ…」



といって受け取ろうとした瞬間だった。

また、クリアファイルは手の中から、するっと抜けていった。



「なんだよ!?」



少女はクリアファイルと自分の背中の後ろにまわして、


「なんかいうことはないの?」


「はぁ?」



それってつまり…


「…ありがとう」


ってか?

まぁいいけど、というか言うのが普通だしな。

と思っていたら…



「よろしい。君のお父さんはちゃんとしてるね。」


と言って頭をなぜてきやがった。

こんなガキ扱いされたのって、いつぶりだよ!?


「なんなんだよ?お前?」


と俺は思いっきり調子狂わされていた。


「なんなんだろうねー」


少女はニコニコしながら答えていた。

女なのにここまで飄々とした態度が取れるのって、かなり珍しいタイプだ。


なんか…


こいつを…


無償に捕まえたくなってきた…



いつも通り、思いっきり抱き着いてまで捕まえようとしたら…



「どうしたの?いきなり?」



またいつの間にか少し後ろに下がるようにして避けたらしく、見事に空振りしていた。


「何?鬼ごっこ?」


鬼ごっこって?お前いくつだよ?

どう見ても俺と同じぐらいだろうが、


「お前、逃げるな!」


なんかよく分からないけど、おそらく彼女は簡単には捕まらないような気がしていた。

そしてそれに負けてはいけない気もしていた。

もし、負けてしまったら、おそらく永遠に後悔しそうで…


「逃げるなって、鬼ごっこなら逃げるでしょ?」


これ、彼女の言う通りまるっきり鬼ごっこではあるが、別に鬼ごっこすると宣言したわけではない。だから、逃げるないうのもありではある。


俺は必死で彼女を捕まえようとするが、素早すぎてさっぱり捕まらない。


やっぱり無理なのか?と思った瞬間だった。

俺は首の根っこ…じゃなくて襟の後ろをふいに掴まれて、そのまま少しだけ身体がふわっと浮いたと思った瞬間、いきなりしりもちをついてしまった。



「ごめんね。楽しかったけど、もう終わり。バイバーイ。」



謎の少女はそう言ってそのまま、夜の暗闇に向かって消えていった。


俺はしりもちをついたまま、彼女の姿が消えていくまで、まともに立つことさえできなかった。そこから、彼女を追いかけようにも、時すでに遅かった。


それが、俺のもう一つの出会いだった。


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