メモ帳で小説を書いていた情弱の物書きが、小説執筆ツールを試しながら手の平を高速ドリル回転させる話
道楽と趣味で小説を書いているわたし、はやぶさ8823は、ある日エッセイジャンルの創作論を見ていて、驚愕の一文に遭遇する。
「メモ帳で小説を書くのは論外です。絶対にやめましょう」
絶対に……やめましょう? 論外だと!
やっべ、もう最初からずーっとメモ帳で書いてるわ!!! ルビ振り? ベタ打ちだよ。書きながら入れてるわ!
メモ帳で小説を書いてはいけない理由として人々が挙げているのは、機能が貧弱すぎるという点だ。機能? 文字を書く以上のどんな機能をみんな求めているんだ?
とりあえず、メモ帳で小説は書くな! と断言する人が一定数いるならば、きっと世の中にはもっと便利なツールがいろいろあるんだろう? なにを隠そう、わたしは形から入るタイプ。すばらしい小説執筆ツールを探しに行こうじゃないか!
1. メモ帳での執筆はだめ?
メモ帳の長所:軽快で動作が速い(複数ファイルも問題なく開ける)Windows11以降では文字数カウント可能
疑問:文字を書く以外にどんな機能が必要?
2. 小説執筆ツールの探求
ツール選定理由:もっと便利な執筆ツールがあるはずだと感じたため
比較するツール:
Handy
NOVEWRITE
Nola
arei(+いろはエディタ)
比較項目:
◆縦書き執筆可能か
◆ダークモードにできるか
◆フォント、文字サイズの変更の自由度
◆各小説投稿サイトに合わせたルビふりが可能か
◆プロットの作成・保存までカバーしているか
◆資料の保存は可能か
◆スマホアプリはあるか?
◆その他独自機能
ダークモード搭載を比較項目に入れたのは、かつて私には、うちに遊びに来るたびに人んちのパソコンとタブレットをすべてダークモードに変えていくという蛮行を繰り返す友人がいた。マジで、人類の八つ目の大罪に加えてもいいほどの悪辣な行為の連続に、奴とは危うく戦争になりかけたが、よくよく話し合ってみると、そいつは通常モードの画面では目が疲れて耐えられないというのだ。
なるほど、わたしはダークモードへの変更を目にしても、「暗っ! 暗いなこれ……てか黒! ぜんぶ……ぜんぶ黒い!!」となるくらいで、せいぜいびっくりするくらいのもんだが、目が疲れるのはつらいだろうと思って、それ以来友人が帰ったあと、黙って設定を変更するようにした。でもやっぱり人んちのPCとタブレットぜんぶ設定変更するのはだいぶ人としてヤバいよ? と、この文章を書きながら思っている。
やはり小説を書くなら、長時間の画面注視は避けられないし、人によっては必須の機能となりうるだろうと思って、項目に入れました。
3. 各ツールのレビュー
Handy
◆縦書き執筆可能か
→不可のようです。
◆ダークモードにできるか
→可能です。画面左右どちらかのうえの人型アイコンをクリックすると、表示テーマを選択できます。
◆フォント、文字サイズの変更の自由度
→どうやら変更はできないようです。
◆各小説投稿サイトに合わせたルビふりが可能か
→可能。小説執筆画面の[ルビ]ボタンを使用すると、基本、小説家になろうの表記でルビが振られるが、エクスポート機能を利用すると、なんと各小説サイトに合わせた表記に修正して、クリップボードにテキストを保存してくれる! 天才か?
◆プロットの作成・保存までカバーしているか
→している。だがプロットを細かく階層に分けることはできない。
◆資料の保存は可能か
→可能。小説執筆画面で、資料を参照しながら執筆可能。
◆スマホアプリはあるか?
→いまのところPC版だけだそうです。
◆独自機能
メモ機能:執筆中に参照可能なメモ、エクスポート時には除外
Todo機能:書き忘れ防止、執筆の進行管理に役立つ
短所:
縦書き不可
プロットは階層構造にできない
スマホアプリなし
文字数カウント機能がない(?)
けっこう機能がたくさんあって、大丈夫か? 小説執筆ツール完全初心者なんだが? とビビりながら使用開始。
でも使ってみたらさあ、これいいね! さっそく華麗なる手のひら返しを披露する。
メモについては、おこしたメモを執筆した小説本文と紐づけることができる→本文には書かなかったけど、作者として覚えておいたほうがいい事柄など残しておける。
本文中にもメモを設置することができる→資料が不足の状態でとりあえず書き始めた時など、〇〇資料要確認など書いておけば、あとから見直せますね。この本文メモは、前述のエクスポート機能を使って本文をコピーした場合、ここだけはコピーされない! あとから消さなくていい! 頭よすぎんか……。
Todo機能も、書いている最中に思いついたやるべきことを書きとめられます。とりあえずパソコン開いたけど、書き始めるまでに時間がかかっちゃうと言う人も、この機能をうまく使えば、書き出しがスムーズに行くのでは。
プロット機能は子階層は作れません。ミステリーとか書く人は、もっと細かくプロット作りたくなるだろうなというシンプルさでした。あと、もしかすると文字数カウント機能がない? わたしの見落としかもしれませんが、もうちょっと探してみます。
しょっぱなからいいツールに出会ってしまった。もうこれでよくね? となる怠惰な自分を奮い立たせ、つぎ行くぞ次!
NOVEWRITE
◆縦書き執筆可能か
→不可のようです。
◆ダークモードにできるか
→できる。あと、テーマカラーの選択が豊富。
◆フォント、文字サイズの変更の自由度
→文字サイズ変更可。また行間の調節ができる。フォントは変更できない。
◆各小説投稿サイトに合わせたルビふりが可能か
→可能。最初に小説フォルダを作成するときに、投稿小説サイトを選ぶことになる。複数サイトにマルチポストする予定なら小説家になろう表記がいちばん互換性が高い→あとから変更可能でした
◆プロットの作成・保存までカバーしているか
→無料版でも可能。
◆資料の保存は可能か
→有料版なら可能
◆スマホアプリはあるか?
→有料版では、使用可能(月額250円)
長所:ルビ振り→ワンクリックで入力可能
表記補正:三点リーダーや一字下げの自動設定
資料保存(有料版)
スマホアプリ(有料版)
文字数カウント機能あり
短所:
縦書き不可
資料保存は有料版のみ
ルビがワンクリックで入力できる! というのを売りにしている小説執筆エディタです。
でも、ルビ表記なんて、いまどきどのツールでもできるのでは? と思ったけど!
ひとつ前のHandyではルビボタンを押すと、|《》があらわれました。
しかしNOVEWRITEでは、たとえば鹿嶋と入力して、それをドラッグしてルビボタンやショートカットを入力を使用すると、|鹿嶋《》の状態になる!
たしかにこれはワンクリックの名に恥じぬワンクリックぶり。無事はやぶさ8823の手の平はくるっと裏返った。
あと、小説を書きながらエディタ上にそれぞれの投稿サイトに沿った形式で画像を添付することができます。
小説家になろうで言えば、みてみんにアップロードした画像は、小説に挿入する段階でタグに加工することが必要ですが、NOVEWRITEを使えば、みてみんの画像URLを入力するだけで自動変換してくれます。
文字数カウントはあるが、表記が小さいです。でも気になるほどではない。テーマカラーでユーザーインターフェイスの印象はだいぶ変わる気がします。
Nola
◆縦書き執筆可能か
→横書きで入力している小説を、プレビューでは縦書きで確認することができる。一行の文字数を変更して、原稿用紙サイズを変更するなどは、有料プランのみ可能
◆ダークモードにできるか
→できる。カラーテーマ選択可能。ほかにもセピアなどがある。
◆フォント、文字サイズの変更の自由度
→PC版では文字サイズ・フォント変更できる場所がわからぬ。でもできるらしい。できると言っているXのポストがある。有識者諸兄たちよ、やり方をはやぶさに教えてくれ……。
◆各小説投稿サイトに合わせたルビふりが可能か
→基本のルビ振り(小説家になろう型)これならどこの小説サイトもルビと認識してくれるので、問題なさそう
◆プロットの作成・保存までカバーしているか
→している。有料版はカスタマイズ可能。
◆資料の保存は可能か
→可能。
◆スマホアプリはあるか?
→ある。
長所:
縦書きプレビュー可能
ルビ振り対応(小説家になろう準拠)
プロット作成機能と時系列管理ツール
資料保存可能
スマホアプリあり
文字数カウントあり
短所:
有料版での機能強化(プロット作成の数の増加、資料の参照)
Nolaも有料版があり、月額300円です。有料版に進化すると、資料やプロットを見ながら執筆可能。
良いと思ったのは、構成の項目に、プロットとは別に時系列を管理するツールがあることです。ある出来事について、登場人物の誰が、どこまで知っているのかという伏線の管理をするのに、非常に有用なツールだと思いました。
NOVEWRITEに搭載されていた表記の自動添削機能はNolaにもあります。こちらの方が細かく、より厳格です。
また三点リーダー等をワンクリックで挿入できるボタンも実装されています。
NOVEWRITEとNolaの違い→
NOVEWRITEは「」や三点リーダーをショートカット機能でキーボードから入力できる。マウスは使わない派、ショートカット命の人が文章作成するなら、NOVEWRITEのほうが操作性は良い。
あと個人的に、ルビを付けるときに別でボックスが立ち上がるのが気になります。文章作成中の没入感がこれで削がれると思う人は、書き終わって推敲の段階でルビを振る形がいいかもしれません。
またインポート機能に関しては、フォルダごと全部インポート可能! メモ帳小説をまとめてぶちこめる!
arei(+いろはエディタ)
◆縦書き執筆可能か
→可能。本文執筆画面から変更し、そのまま書き進められる。
◆ダークモードにできるか
→できる。背景と文字色に関しては、カラーチャートから好きな色を設定できるので、決められた色から選ぶ必要がない。
◆フォント、文字サイズの変更の自由度
→フォントはゴシック体と明朝体から選択可能。文字サイズは、12ptから20ptまで選択可能。
◆各小説投稿サイトに合わせたルビふりが可能か
→ルビ振り機能はない。後述するいろはエディタであれば可能。
◆プロットの作成・保存までカバーしているか
→していない。
◆資料の保存は可能か
→不可
◆スマホアプリはあるか?
→ない。ほかのツールと同様、基本クラウドにデータ保存してあるので、スマホからログインして執筆することは可能。
長所:
縦書き対応
いろはエディタでBGM、背景選択、執筆支援
シンプルなインターフェイス
いろはエディタは執筆の気分を高めるデザイン
短所:
ルビ機能なし
資料保存不可
プロット作成不可
スマホアプリなし
文字数カウント機能はありますが、正直これまで見てきた小説執筆ツールに比べると、搭載している機能は少ないと言わざるを得ません。
だがareiの良さは、ただいま試作版のみ利用可能となっている姉妹エディタ、いろはエディタにあると思う。
このいろはエディタを知った瞬間、わたしは今日一番の手のひら高速ドリル回転を披露することになる。
見てよ! いろはエディタのこの画面!
すごい! まるで文豪になったみたいだ! 文豪! なんていうかもう……文豪すぎる!
無料版ではarei上でいろはエディタを動かすことはできないので、いろはエディタで執筆が終わったら、テキストダウンロードして別の場所に保存するしかないですね。
ほう……それはつまり、月額有料支援プランに登録すれば、いろはをarei上で動かすことができるということだな。
課金、してやろうじゃないか。くらえ! 社畜の経済力! てい! 有料プラン月額300円!
安い! 安いな! 最大900円まで月額支援できるんだから、じゃあ900円してやれやと思うが、ボーナス支給まで二カ月切ってる。金がないんだ、すまない。ボーナス出たら、満額課金する!
課金して、支援コードを入力すると、広告が消え、areiで作成したファイルをいろはエディタで開けるようになります。
はあ~いいなぁ。BGM機能はわたしには不要ですが、人間ちょっとした音楽があるほうが集中できるらしいですよ。BGM選べるよ、戦闘シーン書く時だけロックにしようぜ。
いろはエディタにかかれば、ねこふんじゃったの歌詞ですら、なんだか文学のように思えてくるね!
かくして真夜中に嬉々として猫ふんじゃったの歌詞を打ち込みまくる奇人が誕生したのであった!!
しかしわたしはここで、いろはエディタの致命的弱点に気づく。とにかく執筆画面がおしゃれすぎて、この画面のままだと、冷静に自分の書いた文章を推敲することができない。
駄文がめちゃくちゃ名文に見えてくる。それはそれで気分よく書けるのでいいんですが。罠だな。
これは書き上げたものを投稿するなり人に見せるなりする前に、ただのメモ帳に貼り付けて、良く見直した方がいい。
…………けっきょくメモ帳かよ!!!
4. いろはエディタの衝撃
特徴:
BGM機能で執筆を演出
美しい背景で書きやすい雰囲気
しかし、執筆中は内容が美しく見えすぎ、推敲には注意が必要
教訓:最終的にはメモ帳で推敲
5. 結論と教訓
結論:arei+いろはエディタを有料プランで使い続けることに
メモ帳への回帰:
最終チェックはメモ帳が一番
シンプルで気づきやすい
追記:
プロットについて、小説本文だけは、いつでもしらふで書いているんですが、なぜかプロットだけは酒を飲んだ後に作ろーってなることが多い。酒が入っていて、小説は書けないからプロット作ろうかとなるらしい。らしいというのは、作ったことを覚えてないからだよ。
その状態でできあがったプロットは、プロットのくせに、「いろいろあって」とか「なんやかやあって」とかいう文言が飛び交うクソプロットだ!
わかるよ。いちばん盛り上がるいい場面について、まず書きたかったんだよな。だからってさあ! 「いろいろあって死にかけている」とかさあ! ひどくない? プロットに書いていい文言じゃねえわ。何があったんだよ! それを書けよ!
マジでインフルのとき見る夢みたいなプロットが大量生産される酒を飲んだ日の翌日。
酒を飲んだ状態でプロットを作ってはいけない。この教訓だけは、墓石にきざみこんで後世まで伝えるつもりである。
プロット作成の教訓:
酒を飲んでプロットを書くのはやめろ
「いろいろあって」では話は進まない
6. エッセイ全体のまとめ
小説執筆はメモ帳から始まり、各ツールを比較した結果、ツール選びは執筆スタイルに依存する
書きやすいツールを探すのも一つの楽しみ
しかし、最も信頼できるのは「シンプルで使い慣れた」メモ帳(あくまで個人的見解)
ここまでエッセイを読んでくれた心やさしいあなた。よければ小説も読んでいかないか! 読んでくれたら、うれしくて上ばっか見ちゃうよ! よろしくね!