Scene.2「S駅」
とりあえず、僕は聞かれたとおりS駅までの道を教えることにした。
S駅は現在位置である野川橋、上流に位置する僕が住む県営団地からも一番近い駅。3歳のときに引っ越してきてからずっと住んでいる町なので、スマホを使わずして簡単に答えられる。
ただ、どうしてもうまく言葉が出てこない。
「えっと……そうですね」
あまり道を尋ねられる経験が少ない上に、聞かれるパターンとしてはかなりレア。ありがちなものとすれば「S駅まで行くバス停」だろうか。
S駅は確かにここから一番の最寄り駅ではあるけれど、歩いて行くとなればかなり距離があり時間もかかる。道のりも複雑。
いざ言葉を紡いでゆこうとする中で、ひとつの疑問が浮かぶ。
どうしてS駅なんだろう……?
たとえば僕を含めた地元の人は基本的に自転車かバイクを使う。
あるいはバスを乗り継ぐ。そしてそのほとんどが乗り換えずに行ける隣のN駅、その次の終点K駅を選ぶ。K駅はJRや私鉄がいくつも重なる地域有数の大きな駅で、都心へ向かう起点になっている。
大通りに面していてほぼ直線的なそちらのほうが、徒歩で倍かかろうともむしろ道としてはわかりやすい。
ここからS駅まで、僕がふつうに歩いて約30分くらいだろうか。入り組んだ細い道をショートカットしなければもっとかかる。そんなややこしい道を本気で知りたいというのか。
社交辞令でテンポよく相槌したのはよかったけれど「一番近いコンビニはどこですか?」とはまったく違うと今さらながら困惑。
「あの……わかりますか?」
不自然な間ができてしまい、彼女はたまりかねた様子で疑問符を投げかける。表情は不安げな気持ちを一段と色濃く滲ませている。
僕は迷ったあげく……
A.聞かれたとおり、S駅までの道のりを教える
→Scene.3へ
B.S駅ではなく他の駅を提案してみる
→Scene.5へ




