Scene.13「疑問」
S駅に向かうことができるバス停へさしかかったときだった。
ある程度ひととなりがわかる会話ができたとはいえ、僕の頭の中ではやはりどうしても引っかかっていることがあった。
それに気づかせてくれた。
「ここで待ってれば、駅まで行くバスが来るけど……」
僕は腕時計と時刻表を交互に見ながら、彼女の意思を伺う。彼女、カオリは僕の横顔にしっかり目を向け「あとどれくらいでバス、来るんですか?」と、無邪気な質問。
僕もカオリにならい、今後の展開は考えずにありのまま事実を伝える。
「やっぱりS駅行きのバスだとだいぶ待たないといけない……今からだとあと20分くらい」
僕は何げに敬語を崩しながら、カオリの真意を探ろうとばかり、さらに、
「それまでここで待つか、それか、もうすぐ来るK駅行きのバスに乗って途中で乗り換えるか……じゃなかったら、かなり時間はかかるかもしれないけど、S駅まで歩くか。どうします?」
相手に選択肢を提示し、それを何より公平に選んでもらえるようにただ心配げな顔をして聞いてみる。
この問いには、ほんの短い時間ながら僕への信頼感がどれくらい築けたのか確認する狙いが密かにあった。
カオリは一瞬所在なげに辺りを見回してから、やはり裏表のない表情で、
「それならいっそのこと、最後まで歩いてみようかな。あと20分ここでじっとしてるよりはだいぶ近づけるだろうし……」
後半はひとりごとのように声を小さくさせてから、
「うん、歩こう……っていうか、まだ一緒に歩いてくれるんですか?」
最初に会ったときの不安げな顔を思い出す。うつむいていた姿勢から強い眼差しで見上げては僕に聞き返す。
“一緒に”という単語が明らかに答えを誘導。さらには、まるで僕の狙いまで見透かしたかのよう。
そう、カオリはどうしてここへひとりで来たのかという素朴な疑問が頭の中で膨らみ続けていたからだった。
それでも僕は何とか表情には出さず、笑って同意することができた。
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