Scene.12「ごめんなさい」
団地を出て、本線に戻る。
わずか数分足らず、実のある成果は何ひとつあげられなかったにもかかわらず、考えの奥行きが広げられたとしてひとまず安堵。
初めて訪れたところからただ帰るそれだけ、ある意味初めて目の前に広がる景色に思いの外達成感が込み上げてしまう。
問題の解決どころか何も変わっていないながら、妙な自信たっぷりな歩き出し。
弓なりの橋の後半にさしかかったところでまた陰鬱な気持ちがぶり返す。次なる行動はどうするべきかという考えがふいに舞い込み、突如心に迷いが生じる。
いったん家に戻って自転車を使うか、あるいはいっそ歩いて向かうか……そんなとき、横断歩道の先に例の彼女と目があう。
すると僕の頭の中を見透かしたわけではないだろうけど、彼女は渡った横断歩道をわざわざ渡り直してまっすぐこちらに向かってきた。
僕はもう二度と会うことはないとして、頭の中のいっさいの記憶データを消去側に投げ込んでいたのだけれど、慌ててガサガサと引っ張り上げる。
彼女はまるで僕と待ちあわせでもしていたように右手を軽くふりながら近づき、目の前で止まる。手には何も持っていなかった。
どんな顔をしたらよいかわからずにいる僕をよそに、
「もし時間があるなら途中まででいいので……道案内してもらうこと、できませんか?」
何だか試すような上目遣い。
返事に困る僕を見ては、思い出したように頭を下げる。
「さっきはごめんなさい。想像と違うから自分でもわけがわからなくなって、つい……」
しおらしい態度にすぐに僕も、
「いや、こっちこそ……説明がわかりづらくて」
何ともいえない感情で胸がいっぱいになる中、軽くうなずいた。
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