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第7話 午(うま) 逃げる

草原の柔らかな日差が暖かい日

おひさまも今日は機嫌がいいらしい

やさしいそよ風が吹いて草原の草を揺らす

風は甘く爽やかな香りをはこんでくる

空は青く澄み、ふわふわした白い雲がところどころに浮いている

どこかで鳥たちが歌ってる

足元では虫たちの声が賑やかだ


近くの森には木々がうっそうと茂り陽の光は届かない

森の中には何が潜むのか

森の中には小川が流れている

小川の中にはなにがいるのか


午が一頭のんびりと草をはんでいる

いつもと変わらぬ風景


チクッと小さな虫が馬の脚を刺す

午は臆病な動物だ

ビクッと驚いて歩き出す


また草をはみ始めると

小さな甲虫がブンブンと大きな羽音をさせながら目の前を飛ぶ

午は驚いて逃げ出す


足元のネズミが蹄をひっかいて午をからかう

痛くはないけどネズミは嫌いだ

ぼちぼち歩いて逃げるけれどネズミはしつこく絡んでくる

午は少し早足で遠ざかる


雀よりもすこし大きな鳥が午の耳を突く

耳を振ってもつつくのを止めない

午は駆け出して鳥から遠ざかるが

鳥は空を飛んで追いかけてくる

しかたなく森の中に逃げ込む

やれやれいなくなった


森の中は暗い

動物の唸り声が近くで聞こえる

午は恐怖で引きつった足で森の中を走る


唸り声は吠え声に変わる

数が増えたようだ

暗い森の中を木にぶつかりながら走る

生臭い風が吹いている


吠え声はますます大きくなる

いったい何が追いかけてくるのかわからない

わからないということが恐怖を倍増させる

午は森を抜けたいからむちゃくちゃに走る

道はなし、光もなし・・・


疲れた足が小川にはまる

そんなときの小川はやさしくない

底に溜まった泥に足を吸い込む

午は懸命に小川を渡り

追ってくる吠え声から逃げる


吠え声は大きくなる一方でだんだん近づいてくる

そしてかすかに前からも吠え声が聞こえてきた

走ると前からも近づいてくる


右に曲がって走り続ける

木々がからだにあたって、午のからだを傷つける

恐怖で痛みは感じないが

血を流しながら、足を引きずりながらも走る


またも前方から吠え声が聞こえてくる

すでに取り囲まれているようだ

四方から迫ってくる何者か

だんだん包囲は狭くなる

午は逃げ場を失って立ちすくむ


大きく見開いた眼には何も見えない

何者かの吠え声だけに取り囲まれる

引き裂かれて食われるのか

もうだめだ・・・・



気がつくと

いつもの青空

いつもの草原

いつもの風

平和な世界でいつのまにかまどろんでいた午がいる















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