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第2話 丑(うし)丑三つ時の怪

丑三つ時にくだんはやってくる


ぼ~ん、ぼ~ん・・・

古い柱時計が2時を打つ

漆黒の闇の中

重たく引きずるような足音が近づいてくる

空気が淀んでにごり、不快な臭気が漂ってくる

今日も件はやってきた


件は

何者なのか

どこから来るのか

なぜ来るのか


畳の部屋の真ん中に座る気配がする

しくしくとすすり泣きの声が聞こえる

件はいつも泣いている


昔 件を見たという人はいう

からだは牛

頭は人


別の人はいう

からだは人

頭は牛


どちらが本当なのか・・・

わかることは

丑三つ時にやってくること

いつも泣いていること

それだけだ


件の気配を感じつつ

私も泣く

過去のつらさ

今の苦しみ

未来への絶望


この世に生まれたこと

失敗や挫折

人の嘘や裏切り


思い通りにならないこのからだ

失ったものに対する後悔

温かさを得られぬ日々


自分の生きる価値への疑問

日々の変化や突然の不幸

老いてやがて死ぬ恐怖


涙を流すことで

絶望に耐え

明日も生きなければならない


そんな私の心の闇が

そして闇を感じる私自身が

件なのだろうか


光があるから闇がある

闇があるから光を感じる

闇と光はお互いを必要とする一つの存在


明日も件は来るだろう

私が生きている限り

そして涙を流すだろう


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